★★★
とても良くできています。と、最初っから褒めてどうする、と自
分でツッコミますが、演出の一番大切なところはテンポだと思うの
です。映画って話の内容をつかむまでとても時間がかかるのですが、
この作品はアッという間にペースに乗せられてしまい、どんどん話
に吸い込まれてしまいました。
この映画は「痴漢冤罪」を題材にして「日本の裁判制度の問題点」
を問いかけた作品です。ですから話がとてもシンプルでわかりやす
いです。しかし反面展開が読めてしまったので、映画として楽しめ
なかったのが残念です。逆に言うと、特にオチはありませんので深
読みするとガッカリします。
ただ登場人物が順番に直接的に、あるいは間接的に裁判の矛盾点
を語って行きます。それが真実なのか、多少は膨らませているのか、
それはわかりませんが、日本人が裁判制度を考える上で良い叩き台
であると思います。
この映画には二人の裁判官が登場します。裁判官も人間で、その
裁判官によって裁判の進め方が全く異なります。ということは判決
もまた裁判官によって変わる可能性があります。つまり裁判所なん
てむやみに信じるなと、周防監督は強く語りたかったのではないで
しょうか。
ところで話は変わりますが「痴漢は犯罪」です。つまり冤罪を訴
えている人の全てが無実とは限りませんので、個々のケースを冷静
に考えることが大切です。この映画は冤罪を強調するあまり、痴漢
被害の深刻さが、どちらかというと視点からそらされています。
ついでに言わせてもらえれば、満員電車内で女性のそばに立って、
ゴソゴソ動いていればそれだけで充分痴漢です。冤罪も不幸ですが、
痴漢被害で苦しんでいる人も大勢いることを忘れてはいけません。
*07年01月16日、池袋テアトルダイヤ
(文:星泉)