近日発売予定の一般書。
サスキンド (Susskind) は超ひも理論の大御所中の大御所。主な貢献としては、超ひも理論のきっかけとなった公式の背後に「ひも」があることの発見や(南部陽一郎氏と独立に発見)、超ひも理論による「ブラックホール・エントロピー」の説明など。後者については、超ひも理論による近年一番の成果とされており、「エレガントな宇宙」でも説明されています。この仕事はストロミンジャーとヴァファによるものですが、シナリオの主な部分は実はサスキンドによるものです(彼の貢献については、たとえば私の解説をご覧下さい)。ほかにも「ブラックホール相補性」や「ホログラフィック原理」といったアイディアを提唱しており、超ひも理論研究者のなかでは、オピニオン・リーダー的存在。以前より超ひも理論の啓蒙活動にも力を入れており、サイエンティフィック・アメリカン(日経サイエンス)などに記事を書いています。
この本のキーワードは、おそらく「エレガントな宇宙」とはまっこうから対立して「反エレガント」になるものと思われます。ブライアン・グリーンのメッセージは「超ひも理論が宇宙をエレガントに説明する」といったものですが、この本はそういう立場をとらず「宇宙がエレガントに説明されるというのは幻想だ」という立場から書かれているものと思われます。同じ超ひも理論を扱っておきながら、なぜ全く逆のテーマになるかというと、最新の成果を取り入れているのが理由の一つです。
つい最近、彼の一般講演を聴く機会がありました。超ひも理論の国際会議が年に一度開催されており、"Strings 2005" はカナダのトロントでおこなわれました。そこで彼がこの本と同じタイトルの一般向け講演をしました。彼の講演を聴くのは初めてではありませんし、このテーマについての講演も何度か聴いているのですが、すごい迫力で正直いって圧倒されました。日本でも翻訳されればと思います。
(追記)サスキンドの本が邦訳されました。「宇宙のランドスケープ」