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■2002/6/17

東京銃騎隊:

Scene 08 神州27番クレーター北西外縁部 伊豆谷 康平(いずや こうへい)

俺が産まれる前に、俺の両親は死んだ。
この戦争の最初の犠牲者。

戦争が始まったとき、オレはまだ受精卵の状態。選別済みのラベルつきで凍結、出生の待ち行列をゆっくりと進んでいる最中だった。

戦争のきっかけは、火星の石を地球に持ち帰ったこと。
火星は死んだ星のはずだった。
赤茶けた岩石だけのちっぽけな惑星が、統一した意思を持つ邪悪な存在だったなんて誰も分からなかった。
火星は人間の知らないメカニズムで、自分の一部が別の惑星(地球)にもたらされたことを知り、進撃を開始した。
蘇った火星の火山は一斉に噴火し、火星の中身を宇宙に撒き散らす。
膨大な量の火山弾は火星の重力を振り切って軌道にまで到達、火星を周回していた軌道基地を叩き潰した。
そして、俺の両親はそこに居たんだ。

火山弾は果てしない時間をかけて、ゆっくり、ゆっくりと小さくて華奢なガラス細工の火星軌道基地を押しつぶす。スローモーションで引き裂かれ、散らばり、真空で破裂して、断片がフリーズドライされ、砕けていく俺の両親。
見ていたわけじゃない。
つくりものの記憶。
戦うための理由。
復讐心は簡単に劣化する。
だから、シンプルで分かりやすいシーンに密閉して、持ち続けなくてはならない。

地球は火星がはき出したゴミと俺の両親の破片がミックスされた雲の中を通ることになり、流星雨にのって、火星兵器群がやってきた。
火星兵器群は原油とプラスチックを分解する微生物をバラ蒔き、世界は変わった。
巨大な流星は地表にクレーターを作り、火星兵器群を作り出す工場になった。
火星兵器群の目的は、地球を火星に改造すること。マーズ・フォーミング。

そして、今、俺は地上で火星と戦っている。

第3小隊に記録を見せる。
みんな黙っていた。
「質問は?」
「そうね」市邨が口を開く。
「鴛原が正しい、私でもそうするわ」
賛同の声があがる。市邨は完全に第3小隊を飼いならしている。俺たち第1小隊は「チーム」だが、第3小隊は「ファミリー」、第2小隊は「ちびっこギャング」だ。

指示を伝達し、市邨と戦車のデチューンを行う。初期状態から設定をやり直す時間は無い。トビグモの過去の夢のスナップショットから設定を抜き出す。光学兵器(索敵と照準のためのデバイス、非レーザー兵器)を主体としたチューニング。精密射撃モード。
こうして、俺たちの戦車は突撃兵から、狙撃手となる。
「クモたちのトラウマを引き出すのは気が引けるわね」右半身をオニグモのコクピットに埋めた市邨が言う。
「ここで使ってやらなきゃ悪夢のまま終わっちまうだけだ。クモたちにはチャンスだ。クモはここで乗り越えるんだ。トラウマやら何やらを」
「君がそういうこと言うなんて意外だな」
暖かい視線。おだやかな口調。俺は市邨のこういうところが嫌いだ。市邨のやさしさは隙を誘うためのやさしさだ。コイツはまわりの人間の隙につけいり、絡めとろうとする。最強の銃騎であるオニグモが一番似合う女。
「喋りすぎた」
「不安なの?」
「嬉しいんだよ」
劣等生をたしなめる優等生の顔をする市邨。俺は続ける。
「先輩たちの仇が討てるんだぜ?」
「少しも悲しくない癖に」
そのとおりだ。3個中隊の壊滅は、俺にとってはむしろ望むところだ。俺を復讐へと駆り立てる力になるから。
「ムカつく女だ」
「お互い様よ」

前倒しで完了し、鴛原へ報告に向かう。
「完了だ。お前のクモのOKはもらってる」
「了解だ。お疲れ…スケジュールは予定通り。全機に通達」
トビグモが鴛原のコマンドを中継する。青いLEDの点滅。
コクピットの流線型のカウルに、鴛原と並んでもたれる。直射日光を吸収して熱い。

俺がムカつくのは市邨だけじゃない。大抵のヤツは俺をムカつかせる。
そうでないのは鴛原くらいのものだ。筋金入りの戦車マニア、最強の戦車兵。無敗の小隊指揮官。こいつは人間よりも機械を愛している。だから、必要以上に人に絡もうとしない。
「伊豆原、話がある」
「何だ?」
「音楽を使いたい気分だ。セージの83番」
「本気か?」

今じゃ考えられないが、戦前の音楽はなんていうか、全くの無害だった。レクリエーション、表現手段、芸術、そのあたりの毒にも薬にもならないもの。
音楽はこの半世紀で徹底的に磨き、鍛え上げられ、凄まじく破壊的なシステム、精密な科学となった。
向精神薬的音楽。
脳内物質の分泌は、全て音楽で制御できる。脳の状態を変化させる音。人の心を制御するための仕組み。
理論的には本物の音楽は人に全てを与えることができる。脳の中だけで。
本物の音楽の発見は多くのモノをこの世界から消し去った。
人によっては、生きる意味とか目的とか。

「どうしたんだ?鴛原?」
鴛原はおかしい。この程度の事でビビるタマじゃないと思っていたんだが。
「楽しそうだな、伊豆原は」
「俺はいつでも楽しくて仕方ないぜ」
「本当か?」
「火星野郎をツブせるからな」
「怖い、伊豆原、俺は怖いんだ」
 あいつは吐き出すようにそう言った。いつでも自信満々のあいつがだ。
「この程度で怖い?…どうしたんだ?今更?」
「なんていうか…今回はものすごくイリーガルなんだ。これまでの戦いとは全然違う。
これまでの戦いは絶対負けない自信があった」
「そして事実、そうだった」
鴛原の目がまっすぐに俺を見る。
「今までの戦いはゲームだったからだ。でも、この戦いは実戦なんだ」
「何を言ってるんだ?」
「お前だってとっくに気づいてるんだろう?俺たちは今まで本物の戦いなんか一度もしたことがない。これはゲームだ、用意された戦場で、配置された敵を倒しているだけだ。少しの事故に気をつけてれば、ヤバいことなんてない、クリアできるように作られてるからだ」
「妄想だ。これが終わったら休もう、それこそ音楽が必要だ」
「バランスが適正すぎる。できすぎてるんだ」
「現実を見ろ、鴛原」
「現実を見るのはお前だ」
「じゃぁ、俺たちは…何と戦ってるんだ?」
「戦ってなんかいなかったんだ」

クモが瞬き、鴛原につなぐ。緊急回線。
算術艦隊の瀬野史菜だ。
「鴛原君!? よく聞いて、ストロボ(空中空母)は既に撤退してる、ホロゥ(精密誘導弾)が揃えられないよ!」

絶対絶命の状況。だが俺の心は別の事で埋め尽くされていた。
「じゃぁ、俺は今まで何のために、何と戦ってきたんだ? 俺は何と戦えばいいんだ!」鴛原を睨む。俺の復讐はどうなるんだ。


(続く)


■2002/6/14

Steam Drift:

「今日だけは特別に仕事中に、ワールドカップの中継を見てもイイヨ!」
という粋な計らいの通達が出たのですが、ほとんど見に行く人はいませんでした。
居心地がよい会社です。


■2002/6/11

Steam Drift:

これが噂の台風ですか!
ってことで雨の匂いに包まれた一日。強風と断続的な雨の隙間をぬって帰宅。なんか小走りで無事に家に帰り着いたときは、マリオ系のアクションゲームの難所をクリアしたキモチになりました。


■2002/6/10

Stove Squad:

山本七式根岸裕幸とのジェットストリームアタックにより、第1回MASCコンテストで佳作に入賞!(しかもあのNEON HEARTSだ!)
表彰式では、審査員の方に「あなた方の作品を必要としている人たちが必ずいる」と言われたのが嬉しかった。繰り返し思い出すかも。
他にも業界の尊敬する人と話をしてときめいたり。(ミーハー)

なんか以前のオレは、乙女の白馬の王子妄想と同じく、常に「ここから連れ出してくれる誰か」っていうのを待ち続けてて、それらしいものには何でも飛びついてはガッカリしてた気がする。
今回のコンテストも、権威が無い代わりに実効性が高いのが売りなんだけど、具体的な話は無し。にも関わらず、なんかもうオレたちなら、自力でなんとかできるんじゃないかって高揚してきていい気分だった。
これまでの想像力の源泉は、逃避としての妄想だったんだけど、そこから、カタチを変えつつあることを実感する。


■2002/6/9

Solitary wave:

オタク特有のメーンカルチャーへのやっかみにより、サッカーへの関心が極めて希薄であったオレですが、ワールドカップの特番でコンパクトにまとめられた試合の解説を干したての布団にくるまりながら、なんとなく視聴。

選手交代シーン。
入れ替わりに駆け出す浅黒い肌の選手。テロップで表示される帰化名。
グラウンドに厳しい視線を走らせ、十字を切る。何度も。

 こみあげた。

 オレはこの選手のバックグラウンドを全く知らないし、興味も無いんだけど、この大会の重要性や、この選手が背負っているものの大きさが直感的に伝わってきた。
オレはこういった出撃シーン(そう呼ぶしかない)がたまらなく好きだ。
その先の全てが暗示されているから。


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