「子どもたちに「いのちの授業」を!」(3)
・・・第一部「いのちの輝き」授業報告 その1・・・
前回発信させていただいた単元の構想と保護者からの声を参考にして,具体
的な授業の流れを作った。
教材研究には,じっくり時間をかけたが,授業の準備自体には時間をかけず
に授業が行えるように心がけた。
そうした授業づくりも。
さて,子供たちはどんな反応をしてくれるのだろうか。
授業づくりをすると,いつものことながら本当に授業をするのが楽しみにな
ってくる。
第一部「いのちの輝き」の授業報告をする。
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「いのちの輝き」では,6時間の学習を行った。
(1)ウェビングによる「自分のいのちのマップ」づくり…1時間
(2)小児病棟のいのち…2時間
(3)障害のある子供たちのいのち…3時間
今回は,この6時間のうちの(1)と(2)の最初の1時間の授業記録を発
信する。
(1)ウェビングによる「自分のいのちのマップ」づくり
「いのちの学習」と銘打って学習するのは初めてである。
あらためて「いのち」という言葉について考えてもらうために,一人一人の
「いのち」のウェビングマップを作成することにした。
単元の終わりに,再びウェビングマップを作成する。
思いや願いが変化していることを期待している。
まず3つの発問をし,子供たちの発言を板書する。
「『いのち』という言葉からどんなことをイメージしますか?」
・心 ・バトン ・生きる ・一つだけ ・宝 ・自分にあるもの
「『いのち』って,どこにあるのかな?」
・心臓 ・左胸 ・体全体 ・生きている場所
「『いのち』を感じる時って,どんな時かな?」
・自分が危険な場面に出会った時 ・友達を傷つけてしまった時
次に,画用紙を一人一人に配る。
画用紙の左上に『私のいのちのウェビングマップ』という題,右下に名前を
書かせる。
「画用紙の真ん中に握りこぶしぐらいの円を描きましょう。そして,11年
間で一番上手な字で『いのち』と書いてください。」と指示を出す。
それから,ウェビングの方法を教える。
子供たちは,とまどいながらもマップづくりを進めていった。
時間がたったところで,小グループになり,お互いのウェビングマップを見
せ合う。
気になるところも質問し合う。
その後全体で,友達のウェビングマップを見て,感じたことを発表する。
最後に次の指示を出して,振り返りを書いてもらった。
「自分のウェビングマップを見て,ここの部分は大事にしたい。ここの部分
は自分らしさが出ていると思うところに赤鉛筆で印を付けてください。」
<子供たちの振り返りから>
| いのちの勉強をして,友だちのを見たけど,一人一人考え方があって,自分なりでいいと思った。自分では考えられない考え方もあったけどそういう考え方もあるとわかって,とても勉強になった。 いのちって気軽に言っているときもあるけど,いのちってどんなものって言われると,ちょっととまどうことがわかった。いのちのイメージ(?)みたいなのがすごいあってびっくりした。 |
| 今日思ったことは6こある。 1.いのちはだんだん広がること。(考えたことがなかったからビックリ!) 2.いのちはいろんなことにつながること。 3.初めてこういう勉強をしてみておもしろかったし,とっても勉強になった。 4.いのちにかんする勉強っぽいことは1回したけど,今回はすごくレベル アップしてて,ちょっとむずかしかった。 5.むずかしかったけど,だんだん案が出てきて,できてよかった。 6.いのちというのはとっても大切だから,守ろうという気持ちに前よりもっ となった。 |
<授業を振り返って>
最初の発問の3つ目はむずかしかったようだ。
2つだけでも充分だったかもしれない。
同僚の先生に授業を見てもらった。
感想を紹介する。
「ウェビングによって『いのち』についての考えを深めていく」という授業
を参観しました。『いのち』を『心臓』と考えたり,『バトン』と考える
など子供がそれぞれの価値観で捉えており,興味深い内容でした。小グル
ープでそれぞれ見せ合う時間に『なぜバトンを考えたか』など,深めてい
く話し合いがもっと見られたらよかったと思います。」
その通りの指摘であった。今後に生かしたい。
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(2)小児病棟のいのち その1
授業が始まる。
すぐに一篇の詩を配り,拡大したものを黒板に掲示する。
角川書店から発行されている『電池が切れるまで〜子ども病院からのメッセ
ージ』(すずらんの会編)の中の詩である。
* メルマガには転載の許可をいただいたが,著作権問題があるので,
ホームぺージ上には転載はしていない。
神経芽細胞腫という病気と戦った小学4年生の宮越由貴奈さんが書いた詩で
ある。
全員で声を出して読んだ後,子供たちに発問する。
┌───────────────────────────────┐
│何歳の人が書いた詩だと思いますか?
│
└───────────────────────────────┘
・40歳 ・90歳 ・11歳 ・20歳
いくつか出た後で,理由も発表してもらう。
そして,小学4年生の女の子が書いた詩だと紹介する。
同年代の子が書いた詩だということをわかってもらう。
すぐさま次の発問にうつる。
┌───────────────────────────────┐
│どうしてこんな詩を書いたと思いますか?
│
└───────────────────────────────┘
・自分が死にそうな状態だったから。
・いのちを粗末にしている人が知り合いにいたから。
・家族や友達が重い病気にかかっているから。
宮越さんの名前だけ紹介し,次の説明をする。
┌───────────────────────────────┐
│答えはまだ言いません。その答えにつながるビデオを見ます。
|
└───────────────────────────────┘
ビデオを見てもらう。
NHKスペシャル「こども・輝けいのち」の第4集「小さな勇士たち〜小児
病棟 ふれあい日記〜」をまとめたものだ。
次の3つに留意して放送を編集した。
・15分前後の時間で見終わること。
・小児ガンと戦っている5歳の男の子のことを中心にまとめること。
・15分であるが,起承転結がわかる内容にすること。
途中,理解が難しい場面が出てくると,ビデオを止め,説明をした。
「抗がん剤の副作用」「治療方針の決定」などの場面である。
5歳の男の子が亡くなってしまい,それを知った同室の5歳の男の子が会い
たいと泣く場面では,子供たちの表情がぐっと深くなる。
終始子供たちは物音一つ立てずに真剣にビデオを見ていた。
ビデオを見終わると,説明に入る。
┌───────────────────────────────┐
│この詩を書いた宮越さんも,このような病院にいて,病気と戦って,
|
|詩を作りました。だけど・・・。
│
└───────────────────────────────┘
「だけど・・・」と言いかけて,プリントを配り,読み上げる。
前掲の『電池が切れるまで〜子ども病院からのメッセージ』の巻末にある宮
越さんのお母さんの手記をプリントしたものである。
残念ながら亡くなってしまったこと。
こんなにも「いのち」の大切さを知り,それを訴えていたのに亡くなってし
まったこと。
6年間も闘病生活を送っていたこと。
子供たちは,お母さんの手記からいろんなことを読み取っていった。
ここまで来ると,涙ぐんでいる子供たちが数人いて,プリントを読み上げる
私自身も感極まってくる。
最後に,もう一度宮越さんの詩を全員で声を出して読み,振り返りを書いて
もらった。
<子供たちの振り返りから>
| ゆきなさんは,11才で亡くなったけれど,この「命」という詩の中で生 きつづけてほしいと思います。私は,ゆきなさんの命という詩をわす れず,ゆきなさんのかわりにせいいっぱいこの先の人生も今の時間 も生きたいとあらためて考えました。今日先生に見せてもらったビデ オを見ながらいのちの大切さ,いのちの勉強について深く考えました。 本当は一生けんめい生きたかったけれど,生きられなくて,でも少し の人生をせいいっぱい生きようとしていた。まだまだいのちの勉強が つづくけれど,もっともっといのちの大切さなどを勉強していきたいと 思いました。 |
| 私は生まれてから11年間大きなケガや病気にかかっていないし,身 内の人や友達で重い病気にかかった人はいなく,「いのち」というもの は,人間にとって一体どういうものなのか,っていうことをまじめに考え たこと,考える機会があまりなった。こんなに命の大切さ,重さを身近 に,そして,重たく感じたのは11年間の中ではじめてだと思う。それな のに,そへい君や由貴奈ちゃんは,私より何才もあとに生まれて,何 才か先に死んでいってしまった。そんな小さな年で,病気とたたかうこ とや自分の命を大切にすることをおぼえ,つかさくんや詩に思い出を 残して亡くなった。私より短い一生だけど,精一杯生きていたのは,す ごいって一言で言えないけど,すごいと思った。 |
<授業を振り返って>
亡くなってしまったお子さんの話が続いた。
次の時間では,病気を克服したお子さんの話にも触れたいと考えている。
時間を過ぎてまで振り返りを書く子供たちの様子から,伝わったものは大き
かったのではと思う。
今回の授業も同僚の先生方に見てもらった。
感想を紹介する。
「授業を通して感じたクラスの印象は,一緒に泣いたり共感したりできる温
かい雰囲気ということです。自分の感情を素直に表現できる学級作りがで
きていると感じました。また,教材(ビデオの内容)選びがとても上手だと
思いました。ビデオを時々とめて内容,言葉(転移・白血球など)を解説す
ることで,深まりをもった理解につながったと思います。ビデオを見た後,
大野先生がすぐ言葉を発しない(発せない)でいた間が印象的でした。
その間があることで,ビデオの内容がより鮮明に子どもの心に刻まれたと
思います。その後,児童みんなで読んだ詩「命」は,声で読んでいるとい
うよりは,心で読んでいるようでした。」
次回も,実際の授業の流れと記録について発信します。
札幌は,最高気温が氷点下という「真冬日」も観測され,冬到来です。
冬休みまでもう少し。
次回は,一段と寒さが厳しくなっている頃でしょう。
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■メッセージ■
□名瀬市の書店で二つの気になる本を立ち読みした。一冊は、インドの貧しい
子どもが学びたいという気持ちを持って必死に生きている様子を文と写真でま
とめたもの。徳之島の大江さんが前にこういう資料を使って授業をしてたこと
を思い出した。日本の子どもたちに、学びたくても学べない環境にある子ども
の事実を伝えることで、当たり前と思っているものが実は当たり前ではないこ
とに気づくという授業だ。客観的に自分や自分のいる環境を見ることは、生き
ていく上で重要なものの考え方なのだと思う。
□もう一冊は、顔面にやけどのあとがあったり、髪の毛がなかったりする方々
の写真と生活が紹介されている本だ。これは衝撃的な本だ。見た目に、多くの
人とは異なる条件があるとき、人々はどういう視線を彼らに向けるのか。小学
生に授業をしたいという気持ちと、もう少し成長したからでもいいのではない
かという思いが交錯して考えがまとまらなかった。
□生きることは決してたやすいことではないが、生きていくことは価値のある
ことだ。子どもたちに言葉ではなく、この思いを実感させることによって伝え
たいと思う。大野さんの真剣な取り組みに初心を思い出しました。ビデオの効
果的な活用、ちゃんと出版社の許可をとる丁寧な授業作り、学ばせていただき
ました。
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