第2回 授業づくり
「あれも取り組んでみたい。」「これも子供たちと考えてみたい。」
集めた資料を読み続けていくと,いろいろな思いが生まれてきてしまった。
大きなテーマを持ってはいるものの,具体的な授業(単元)の方向性を持た
ないままで資料を集めたからだ。
しかし,今回の授業作りは,一つの教材(資料)をじっくり教材化するので
はなく,様々な資料にあたっていく中で,具体的な授業(単元)の方向性を持
つことができれば…と考えて,授業づくりを進めることにした。
教材研究を始める。
まずはノートを一冊用意し,資料を読んでいく中で,気になる言葉をメモし
ていった。
キーワードから生まれてくる思いや,キーワードとキーワードとの関連付け
も書き込んでいく。
「いのちの授業」と言っても,その内容は多岐にわたる。
用意したノートには,いろいろなキーワードが並べられた。
デスエデュケーション,死を学ぶ,ターミナルケア,ホスピス,HIV,誕
生,性,障害,老化,小児病棟,奇跡,つながり・・・。
さて,これらをどう整理して,授業を作っていくか。
まずは,子供たちの実態を考えることにした。
キーワードから子供たちの実態を考える。
本校では,去年から総合的な学習の時間で福祉のカリキュラムが取り入れら
れ,ある程度の障害全般に関する知識は持っている。
また,昨年度の4年生では,学習発表会で沖縄の歴史に取り組み,沖縄戦に
触れ,集団自決の映像を見て,その当時の人たちの気持ちについて考えた。
5年生になってからのクラスのスローガンは「ONLY ONE」である。
自分の「いのち・思い」がかけがえのないものであるように,まわりの「い
のち・思い」もかけがえのないもの。
「いのち・思い」を大切にしよう。と取り組んできた。
総合的な学習の時間以外でも,道徳の時間を使い,星野富弘さんの生き方を
学ぶ学習や相田みつおさんの詩を使ったいのちのバトンの授業などを行った。
そうした取り組みの中でも,「ようご!ようご!」と言って,「お前みたい
なヤツは養護学校の生徒みたいだ」という意図のバカにする事件が起きた。
つい言ってしまった発言ではあったが,重く受け止め,もう一度子供たちと「養護
学校に通っている子供たち」について話し合った。
以前私が受け持った亡くなった養護学校の児童の話をして,思わず子供たち
を前にして,涙ながらの話にもなった。
一方では,子供たちからこんな声も聞く。
「赤ちゃんって,おしりの穴から生まれてくるんだよね?」
「え?ちがうしょ?あれ?でも,どこからだろ?」
もちろん個人差があり,正確な情報を持っている児童もいる。
また,中学年の保健の学習から,ペニス,ヴァギナなどの言葉も知っている。
しかし,正確な情報とは言いがたく,言葉だけが先行している感じである。
セックスに関連する言葉も聞かれることがあり,高学年になり,性にも興味
を持ち出しているようだ。
次は自分の思いである。
授業づくりを進めていく中で,次の3つの思いが生まれてきた。
(1)保護者を巻き込むこと
「いのちの学習」は学校だけで完結するものではない。
家庭とできるだけ共通理解を持ち,すすめていくべきだと考えた。
(2)ゲストティーチャーを迎えたい
「いのちの学習」が机上の学習とならないよう,できるだけ実感のある学
びになるための一つの方法として,ゲストティーチャーを迎えたいと考えた。
(3)自分のいのちを見つめ直す
自分のまわりのいのちを学ぶだけではなく,自分自身のいのちを見つめ直
し, セルフ・エスティームを高めたいと考えた。
NHKスペシャルの金森学級を見た。
ドラマのある学級,授業にも憧れた。
しかし,ドラマが生まれる土壌は作れるが,ドラマは決して作れるものでは
ない。
今回の授業は,自分のいのちに対する思いを問い直したいとも考えている。
伝えたいこと,一緒に考えたいことをきちんと組み立てていくこと。
力まず,緩やかに,寄り添うように進めていくこと。
それらを大切にしていくことにした。
子どもの実態と自分の思いを整理していくことで少しずつ方向性が見えきた。
より方向性を明確にするために,さらに2つの視点を加えた。
(1)理科の単元「人のたん生」と保健
5年生には,理科の選択単元で「人のたん生」がある。
また,4年生の保健の指導内容に,もう少し性教育の部分を伝える必要が
あるのではないかと考えた。
(2)6年生も見据えて
順当に行けば,今のクラスを継続して受け持ち,6年生の担任なることが
予想される。
そうなると,6年生を見据えた授業づくりも必要だと考えた。
「いのちの学習」の今回のテーマを決める。
「生と性」というテーマにした。
「生」の喜び,輝き,重さ,尊さを学び,そして,その「生」を生み出し,
「生」をより輝かせる「性」を学ぶ。
一番興味を持っていた「死を考える」は,ぜひ6年生になったら取り組みた
いと考えた。
5年生で「生と性」を学び,そして,6年生になり,「死」を学ぶことによ
って,またあらためて自分の「生」を見つめ直す。
生→死→生というサイクルを考えてみた。
また,正直に言うと,子供たちに「死」という視点を与えるには,自分自身
に不安があった。
もう少し勉強や整理が必要だと感じた。
そして,「死を考える」の授業の時は,種村エイ子さんのようなゲストティ
チャーをお招きできるように,今から準備もしたいと思った。
もし機会があれば,来年度の実践も報告できればと思う。
さて,いよいよ授業(単元)の構想である。
具体的な授業の流れとその記録については次回から発信するが,大まかに次
のような計画を立てた。
(1)「いのちの輝き」
↓ 病気や障害と戦いながらも,精一杯生きているいのちに触れる。
↓ いのちの輝きの一方で,いのちの重さにも触れてほしいと考えた。
↓
↓ 『種まく子供たち』や『電池が切れるまで』,自分が赴任してい
↓ た養護学校のVTRなどを参考にする。
↓
(2)「いのちの奇跡」
↓ その輝く,重いいのちは,みんなにもあり,そして,それは奇跡
↓ 的な誕生であることや性の知識も正確に理解してほしいと考えた。
↓
↓ 『驚異の小宇宙 人体 生命誕生』や『シリーズいのちの授業1』
↓ などを参考にし,妊婦さんか,出産直後のお母さんをゲストティ
↓ チャーとしてお招きしたい。
↓
(3)「いのちをたどる」
↓ 自分のいのちをたどってもらう。4年生の時も「2分の1成人式」
↓ で,少したどっているが,出産にまつわる部分を中心にたどって
↓ ほしいと考えた。保護者への聞き取り調査を中心に行いたい。
↓
(4)「いのちを自分の言葉で」
↓ 単元のまとめとして,いのちについて自分の言葉で語る(まとめ
↓ る)作業を取り入れたいと考えた。
↓ 一人一人の「今まで」と「これから」を見つめてほしいと思う。
この計画に合わせて,各家庭にアンケートも出した。
家庭の意識,今回の授業に関する学校への要望なども授業の中で取り入れて
いきたいと考えたからだ。
保護者の方も巻きこむという思いの第一歩の具現化でもある。
また,授業や指導内容に偏りなどがないように,本校の養護教諭のアドバイ
スもうけながら授業を進めていこうと思っている。
読者の方々にもご指導をいただければと思う。
次回は,実際の授業の流れと記録について発信します。
札幌は,初冠雪,初氷のニュースが聞かれ始めています。
次回の頃は,すっかり街並みが一面銀世界になっているのではと思います。
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■メッセージ■
□長期的な見通しを持った実践になるんですね。授業をつくるという意識を持
つ教師は実はごく少数なのではないかと最近思うことがありました。いろいろ
な先行実践に学びながら、長期的な展望を持って実践を続ける大野睦仁さんの
報告を毎回楽しみにしたいと思います。来年度も継続しての連載の予定でいま
すね。
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