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よろいの日記
2008年版
基本的に見た映画の感想です。
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2008年12月?日 『REC/レック』(2007年スペイン)を見ました。
 監督はジャウマ・バラゲロという人とパコ・プラサという人。消防士の密着取材をしていた女性レポーターとビデオカメラマンが、向かった先のアパートで異常な事態に遭遇する。一緒に駆けつけた警官が、狂った老婆に噛み付かれて重傷を負ってしまったのだ! 早く病院に運ばないと! しかしアパートは、警察と軍隊によって封鎖されてしまい、彼らは住民たちと一緒に閉じ込められることになる。一体何が起こっているんだ!?
 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』みたいな実録風の演出で作られたゾンビ映画。古ぼけたアパートをオバケ屋敷に見立てて、コケオドシ演出を連発するだけの志の低い映画なんですが、これが割と面白い。もったいぶってるだけで全然面白くなかった『ダークネス』(本作と同じジャウマ・バラゲロ監督)とは大違いです。共同監督のパコ・プラサという人の個性が出たのかな? まあ実録風の映画って、下手に撮ってあっても、それも演出として許容されてしまうから、監督の下手さ加減が目立たないということはあるんですけど・・・。でも、それでも尚、違和感のある演出も目立ってた。カメラマンが登場人物たちを先回りして後向きに撮影しちゃダメでしょ。どんな危険が潜んでいるか分からない闇の中へ背中を向けて入って行くかよ! 実録を装うんだったら、きちんと演出も実録風にしてくれなきゃ! 極めつけは、「今の映像を見せて」って言われてビデオを巻き戻した時に、映像が巻き戻しされて、さっきの映像がリプレイされるところ。どうして巻き戻し中の映像やリプレイの映像までビデオに録画されてるんだよ! リプレイしようとしたら録画を止めなきゃならないから、その間は空白になって時間が飛ぶはずでしょ。『クローバーフィールド』に同じシチュエーションの場面があるけど、あっちではきちんと時間が飛ぶよ。どうしてこういう設定を無視した演出を入れるかなあ? 見ていて醒めちゃったよ。こうした致命的な欠点さえなければ、「傑作」と言えるぐらい面白い映画だったのに・・・(★★)

『ダークナイト』(2008年米)を見ました。
 クリストファー・ノーラン監督。アメリカでは記録的なヒットを飛ばした新生バットマン映画第2弾。撮影後に急逝したヒース・レジャーが演じた「ジョーカー」の凶悪ぶりが話題を呼んだ映画なんだけど、果たしてコレってどうなんだろ? オープニングの銀行強盗のシーンから、仲間を皆殺しにして大金を独り占めする悪党ぶりを披露してるんだけど、後になったら、「仲間が足りない」って仲間を募集したり、「金なんかいらない」って金を燃やしてるの。凶悪って言うより、ただのバカ? まあ行動に一貫性のない理解不能のところが「ジョーカー」らしいと言えばそうなんだろうけど、「犯罪に大切なのは“意外性”だ」と弁舌をふるっておきながら、実際には想定内のことしかやらないのにはシラケた。「トンネルを使うと(車で逃げると)危険だぞ〜」って脅迫してきたら、実は他の移動手段に罠を仕掛けていることぐらい予想できるじゃない。人質事件の現場に駆けつけたら、覆面した犯人が狙撃しやすいところに集まってたとなれば、実はそれが覆面をされた人質なんじゃないかって疑うでしょ。警察はまだしも、頭脳明晰なバットマンは当然見抜いているんだろうと思っていたら、彼もすっかり騙されてるし。ジョーカーがずる賢いと言うより、バットマンや警察がバカなように見えて仕方なかった。
 バットマンは“殺さず”の誓いを立てているから、ジョーカーのような悪人でも助けてしまうんだけど、コレもどうなんだろ? みんなが「バットマンは人を殺さない」って知ってるのに、犯罪者に対する抑止効果なんてあるのかな? 鉄砲持ってる警官の方がよっぽど怖いんじゃない? 実際ジョーカーにはそこんところをつけ込まれているんだし。こういう綺麗事の設定もコミックでは許されるけど、リアルをキドって大人向けを謳っているからオカシクなっちゃうんだよなー。この映画に多大な影響を与えているコミックの「ダークナイト・リターンズ」でも、バットマンは誓いを破って人を殺しちゃうんだよ。「大人向け」を謳ってるクセして、そういうところでは綺麗事を通すんだもんなー。
 強引なオチにもシラケた。ある人をかばうためにバットマンが罪を被って犯罪者として追われることになるんだけど、別にバットマンが罪を被らなくたって、適当に作り話をして誤魔化せそうな状況じゃない。悲劇的にするのは構わないけど、それならそれで、衆人監視の中、バットマンと当事者しかいない建物の中で人が死ぬとか、他の言い訳ができないような状況に追い込んでほしかった。これじゃあ本当にバットマンがただのバカにしか見えない。前作『バットマン ビギンズ』の欠点を補うような傑作になってることを期待してたんだけど、欠点はむしろ増えてた。行き当たりばったりで御都合主義的な脚本。人物の心理の流れを追わずに結論だけを並べ立てた駆け足の物語は、まるで連続ドラマのダイジェストみたいだった。映像のクオリティーが高いから、映画のクオリティーも高いように誤解させるけど、実際のところは子供向け・・・いや、子供騙しの映画だよ。(★★)

『いのちの食べかた』(2005年独/オーストリア)を見ました。
 監督はニコラウス・ゲイハルターという人。原題を直訳すると、『私たちの毎日の食事』。日々の食事がどのように作られているのかを追ったドキュメンタリー。結構話題になった映画なんだけど、出来は微妙。内容的には、ディスカバリー・チャンネルでやってるドキュメンタリーと大差なくて、目新しさはない。撮影が凝っていて、映像のクオリティーはそれなりに高いんだけど、シンメトリーにこだわっていたりして、なんだかキューブリックのパロディーみたい。整った映像を羅列するだけで、果たして優れた映画と言えるのかどうか・・・。一番気になったのは、農場や牧場、屠畜場の労働者たちに、明らかに演技を付けているところ。「カメラを見るな! カメラを意識するな! 私語を慎め! 表情を出すな!」って言ってるのがミエミエの不自然な態度。労働者たちが、みんながみんな、こんなに暗いわけないだろ。まるでアキ・カウリスマキの映画のワン・ショットみたい。これでドキュメンタリーと言えるのか? 監督の安っぽい美意識が、全編に渡って貫き通されています。こんなことだったら、優れた劇映画を見た方がいいよ。同じようなテーマの映画をもっと上手く作ってる人が、劇映画の世界にはいっぱいいます。牛の屠殺シーンは印象に残ったけど・・・。前の牛が倒れ伏せるのを見た途端、後の牛がおののき始めるの。死の恐怖に囚われたその表情! これは、演技指導されていない、真実の瞬間です。(★☆)

『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(2007年英/仏)を見ました。
 エドガー・ライト監督。『ショーン・オブ・ザ・デッド』の主演コンビと監督が再結集したポリス・アクション・コメディー。今回も評判は上々で、否が応にも期待が高まったのですが、なんかしっくりこない・・・。前作の時、監督が「よくあるコメディー映画みたいに、ジャンル映画をチャカしているわけではない」みたいなことを言ってて、実際、『ショーン・オブ・ザ・デッド』は、いちゾンビ映画として優れた作品に仕上がってたけど、今回は、基本の世界観からしてコメディー調だったので、あまり引き込まれなかった。ギャグもパロディーに頼り過ぎだし。サイモン・ペッグの役どころがエリート警官というところからしてパロディーでしょ。『ショーン・オブ・ザ・デッド』と同じシチュエーションを用意して笑いを獲ろうとするシーンまであった。ちょっとセンスがいいだけで、なんだか普通のアメリカンなコメディー映画という感じ。まあ、タイトルからして『ホット・ショット』を意識してるぐらいだから、ハナからそういうのを目指してたんでしょうが。あと、アクションがメインじゃなかった前作の時には気にならなかったことだけど、この監督、アクションの演出があまり上手くないかも。あまり上手く撮れてない画を、テンポの早いカット割で誤魔化している感じだった(←それもまた、意図してやってる、アメリカ映画のパロディーかも知れないけど)。なんだか手厳しいコメントばかりになってしまいましたが、まあ普通に面白い映画ではあるので、過剰な期待を捨てた上で再見すると、普通に楽しめちゃうんですけどね。(★★)
 ところで、この映画のDVDはとんだ不良品です! 所々で字幕がズレちゃうの。リコール対応されてしかるべき劣悪商品。再発売の「プレミアム・ベスト・コレクション」でもこの問題は修正されてないみたい。多くの人は吹き替え版を見るから、これでも問題ないってわけ? ほんと酷いね。日本の映画ファンを取り巻く環境は日に日に悪くなっているようだ。今のところ発売予定はないけど、ブルーレイになったら修正されるのかなあ? WOWOWで放送されたバージョンは、幸いズレなしだったので、私はこれをブルーレイに焼いて見てるけど・・・。ファンの方は放送予定をチェックしておいて下さい。

『タイム・オブ・ザ・ウルフ』(2003年仏/オーストリア/独)を見ました。
 ミヒャエル・ハネケ監督がディストピアな未来を描いたSF風の作品。資源が枯渇し、社会の秩序が崩壊しつつある世界で、なんとかして生き延びようとする母子の物語。
 社会の秩序が崩壊しても、いきなり『マッドマックス2』みたいな無法地帯になるんじゃなくて、人々が過去の地位や秩序にすがって生きようとしているところがリアルで良い。文明が後退したことで、まるで中世の逆戻りしたかのように、人々が“神話”にすがり出すのも面白い。静かに、しかし着実に進行する崩壊。社会の、理性の・・・。将来現実に起こり得る危機を描いている映画なので、身に迫る恐怖があります。終盤、この監督にしては珍しい力強いショットが出てきて、いい意味でビックリさせられるのですが、その後のラストショットは微妙。ハネケは「結論を示すのではなく、観客に投げかける」みたいなことをよく口にしているけど、それを意識し過ぎたみたいな感じ。この映画の場合は、あの力強いショットで終わってた方が良かった気がする。まー面白い映画ではあるんだけど、正直、ハネケには、こういうフィクショナルな世界より、普通の現代劇の方が合ってる気がするね。なんかいつもより、描写が浮ついているように感じられた。(★★☆)

2008年11月?日 『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年米)を見ました。
 スティーヴン・スピルバーグ監督。宇宙人が出てくるということで公開前から不評だったシリーズ第4弾。まあ、一作目の「悪霊大量出現」にしても、三作目の「不老不死の男」にしても充分突拍子がなかったから、べつだん宇宙人が出てきたっていいじゃないのと思って見始めたのですが、宇宙人うんぬん以前につまらなかった・・・。車で崖っぷちギリギリを走ったり、崩れてくる道をギリギリで駆け抜けたりすれば、それだけで観客がハラハラするとでも思っているのか? 工夫の全然ない、他人事感たっぷりな映像。大袈裟なCGが、尚更に空しさを強調してます。映像技術の進歩に伴って、スピルバーグの演出の技量はどんどん落ちているようだ。製作・原案のジョージ・ルーカスがゴリ押ししたという宇宙人ネタには、スピルバーグは(ハリソン・フォードも)乗り気じゃなかったらしいけど、まさかやっつけ仕事をしたんじゃないだろうな? キャラクターにも魅力を感じられない。ソ連の特殊部隊の女隊長スパルコを演じるケイト・ブランシェットは頑張っていたけど・・・。機関銃を撃ちまくったり、チャンバラをしたり、人喰いアリをフトモモで挟んで潰したり・・・。インディ・ジョーンズはもういいけど、彼女を主役にしたスピンオフなら見てみたいかも?(★☆)

『シューテム・アップ』(2007年米)を見ました。
 監督はマイケル・デイヴィスという人。悪者に追われていた妊婦を助けた謎のヒーローが、彼女が産んだ赤ちゃんを守るために悪者たちと戦うというお話。『敵を撃ちまくれ!』っていうタイトルが示す通り、ストーリーは二の次で、様々なガン・アクションのアイディアを見せることに執心した映画。スカイダイビングしながらの銃撃戦とか、セックスしながらの銃撃戦とか・・・。こういう中身のない映画でも、面白くなる可能性を秘めているとは思うんだけど、監督の演出力が月並な場合には、やっぱり月並な映画しか出来上がらないんだよね。こんな風に、映像の色調や俳優の演技、安直な設定でもってマンガ的な世界観を強調してみせる映画って最近よくあるけど、最低限のリアリティーを確保してないと、見ていてハラハラドキドキできないんだよね。実際、眼目の銃撃戦のアイディアだって、既視感に溢れたものだったし、その軽さと相まって、単なるパロディーにしか見えなった。(★★)

『片腕マシンガール』(2007年米/日)を見ました。
 監督は井口昇という人。弟をヤクザの親分の息子に殺された女子校生が、自らもリンチの末に左手を失うが、その左手の代わりにマシンガンを装着して、忍者軍団を率いるヤクザと戦う!
 アメリカのビデオメーカーの出資で作られたスプラッター・アクション・ムービー。ネットで予告編が公開されるやアメリカ(のギークの間)では話題沸騰とのことだったので見てみたのですが・・・。確かに予告編だけ見ると、なんだか面白そうなんだよね。マシンガン女子高生にドリル・ブラジャー極妻・・・、個性的な主人公が個性的な敵たちと壮絶な戦いを繰り広げるみたいな・・・。でも、実際には、アクションはユルユルで編集のテンポも悪いし、売りにしているスプラッター描写もホームメイド・ムービーのレベルだった。それにしても、日本のスプラッター映画って、なんでみんな噴水みたいにヤタラメッタラ血を噴き出すの? 美意識が感じられない(残酷になり過ぎないよう配慮して、ワザと作り物っぽくしているのかも知れないけど)。脚本もダメダメ。おとなしかった主人公(←でもケンカは強い)の変貌が唐突過ぎ。「キャー!」って言って逃げて行ったのが、戻ってきた時にはジェイソンみたいな殺人鬼になってるの。ホラー映画っぽい見せ方をしたかったんだろうけど、復讐劇としては押さえるべきポイントを押さえてないでしょ。包丁持って夜の町を走りながら、「私は鬼だ! あはははは!」って、なんだよそれ。これが狂気の表現なの?? 脚本がダメダメだから、アクションも盛り上がらない。忍者相手に苦戦していた主人公が初めてマシンガンを装着して「マシンガール」になった後も意外とてこずって戦ってるのはオカシイ。ここは主人公のパワーアップを強調して一気にやっつけて見せるべき場面でしょ。ヒーロー映画の定石を分かっているのか? ロボコップだってアイアンマンだって、最初の敵は簡単にやっつけてたじゃない。『キャプテン・スーパーマーケット』の演出をパクって爽快に見せようとしているにもかかわらず、マシンガンを装着してから撃ち始めるまでの間に結構長めのカットを挿入してテンポを台無しにしちゃってるし、ホント演出が支離滅裂なんだよなー。「足にマシンガン」だったら『プラネット・テラー』の「チェリー」、「手にチェーンソー」だったら『死霊のはらわた』シリーズの「アッシュ」になっちゃうので、「手にマシンガン」ということで、多少の区別化を図ってきたのに(←マンガにはよくある一番平凡なヤツだけど)、最後はマシンガンをチェーンソーと取り替えて、臆面もなく「アッシュ」になっちゃった(・o・) こんなもん見せられてもサム・ライミは喜ばないぞ。『死霊のはらわたU』を後1000回見て、映画のテクニックについて勉強して下さい。(★☆)

2008年10月?日 『裸足のクンフー・ファイター』(1993年香港)を見ました。
 ジョニー・トー監督。『ヒーロー・オブ・クンフー 裸足の洪家拳』(75年チャン・チェ監督)のリメイク。学がなくて字も読めないが、クンフーの腕は達人級の青年クワンが、田舎から出てきて女社長の経営する染布工場に世話になるが、その工場は、チンピラたちを従えた町の実力者に狙われていて・・・
 ドラマ重視のカンフー映画なんだけど、脚本が・・・。映画には登場しない主人公の父親(隠遁した偉い軍人)のことを、みんなは「素晴らしい人だった」って言うけど、息子にカンフーだけ教えて、自分の名前の書き方も教えてないってどうなのよ? そんな彼に字を教えるヒロインの行動もムチャクチャ。「これがあなたの名前よ」って言いながら「マヌケ」って書かせて面白がってるし・・・。一生懸命練習してやっと名前を書けるようになったと思った主人公はガックシ。こういうイジワルって物語にはよくあるけど、それをヒロインにやらせちゃダメでしょ。学があるとかないとかいう話ではなく、主人公は人間的にもバカで、周囲の人間に迷惑かけまくり。中年の恋を演じるマギー・チャンとティ・ロンはさすがの貫禄を示しているけど、キャラクターの掘り下げは足りない。話が進めば進むほど、登場人物の誰にも共感しにくくなっていくから、激しい戦いや悲劇的な結末が用意されていても、あんまり感動を呼ばないのです。靴も買えない貧しい主人公は、憧れの綺麗な靴でもって悪者に買収されてしまうのですが、死に際になってもその靴を履きたがってるのはワケ分からん。全然反省してないのかよ。悪者にたぶらかされて堕落してしまった自分じゃなくて、昔のままの裸足の自分で死にたいってなるのが普通でしょ? 悲劇性を強調するように思わせぶりな映像がたくさん出てくるけど、どれも「記号」に過ぎない感じ。悲劇と言うより、悲劇のパロディーです。オリジナル版はまだ見てないけど、それもこんな感じのいい加減な脚本なのかなあ?(★☆)

『予言』(2004年日)を見ました。
 鶴田法男監督。つのだじろうのマンガ「恐怖新聞」を元にしたホラー映画。大学教授の里見は、妻と娘を伴った休暇からの帰り道に立ち寄った電話ボックスの中で、娘の死亡記事を載せた新聞を見付けて愕然とする。一体これはどういうことだ!? その直後、居眠り運転のトラックが駐車していた車に突っ込み、彼の娘は死んでしまった・・・。数年後、妻とも別れ、失意の中で暮らしていた里見のところへ、再び奇妙な新聞が届き始め・・・
 実際に新聞が届くのではなく、霊能者が未来の新聞を幻視しているという設定がモットモ(?)らしくて良い。未来永劫の宇宙の出来事が全て書かれているという神の書物「アカシックレコード」の話を持ち出して、無駄に大判風呂敷を広げているところも面白い。ただ、映像的にはちゃっちくて、ガッカリするところも少なくないです。冒頭の事故のシーンからしてシラケた。わざわざ見せるほどでもない安っぽいCGで、飛び散るガラスを映したりしてるから。アカシックレコードを覗き見ることで被る呪いみたいのも、体が黒くなるだけでパッとしない。最後は主人公が無間地獄に堕ちて過去の悲劇を繰り返すんだけど、自分を犠牲にしたら娘が助かっちゃうの。こんなことで過去を変えられるんだとしたら、アカシックレコードも大したことねえな。感動するというよりシラケた。(★★)

2008年9月19日 『ミスト』(2007年米)を見ました。
 スティーブン・キングの最高傑作とも言われる中篇小説「霧」を原作とするホラー映画。監督は、『ショーシャンクの空に』、『グリーンマイル』でもキング原作を映画化したフランク・ダラボン。嵐の過ぎ去った翌日、突如として発生した霧がのどかな田舎町を覆い、幼い息子を連れて買物に来ていたデヴィッドは、その他大勢の客と共にスーパーの中に閉じ込められてしまう。血を流してスーパーに駆け込んできた男は、訳の分からないことを口にする。「霧の中に何かいる!」。覚めることのない悪夢が幕を開ける・・・
 世間での評価は高い映画だけど、こりゃあ酷いよ。ストーリーが完全に破綻している。命からがら脱出した人たちが、ああも簡単にああいう決断に至るかよ! とりわけ生に執着しているはずなのに・・・。そもそも燃料切れで立ち往生って、なんだそれ! 誰もガソリンを補給しようと言わなかったの? 原作では、町から脱出する前に、きちんとガソリン・スタンドに立ち寄っているんだよ。乗り捨てられた車だって道中にたくさんあったんだから、いくらでも補給するチャンスはあったのに! 強引なハッピーエンドも不快だけど、強引なアンハッピーエンドはもっと不快だよ! 皮肉なオチを強調するために、みんなが止めたのに霧の中を出て行っちゃった女性が子供を助けて無事生き残っている姿が映されるけど、どう考えても不自然だろ! 他の人はみんな霧の中へ入ったら、すぐに襲われてたでしょ! 悲劇ということで誤魔化しているけど、こんなのは単なる御都合主義! 物語を語ることを放棄してるに等しいです!
 『ショーシャンクの空に』のダラボンの作品だから「いい映画」に違いないと、みんな思い込んじゃってるんじゃありません? ホラー映画の演出家としても、際立ったところは一つもない。怪物が全然怖くないんです。怪物それ自体では恐怖を演出できないからって、怪物を銃で撃とうとした時に、その射線上に子供が重なってしまうとか、安易なサスペンスを挿入してお茶を濁してるし。「いやいや、これは人間の怖さを描こうとしている映画なんだよ」と言う人がいるかも知れないけど、怪物よりも人間が怖いというのは、だんだんと表出してくる隠れテーマであって、その前提として、怪物の怖さもきちんと出しといてもらわないと!
 蛇足的な描写も多過ぎる。主人公が奥さんの死を悟る場面なんて、原作ではあえてはっきり描かなかったんでしょ。それを映画では、はっきり死体を見せちゃうし。変人おばさんが、自分が神に選ばれていると思い込むキッカケのシーンも意味不明。この監督は、映画とは「見せるもの」だという原則に固執していて、原作にはないシーンを創作しては、「これが映画だ」とばかりにいい気になってるんだろうけど、あえて「見せない」ということも学んだ方がいいよ。他の映画ならともかく、この「霧」の映画化には、ホント向いてない人材だったと思う。(原作とは違って最後に霧が晴れたところにも呆れた。とにかく原作と違う風にすれば面白くなるとでも思っていたのか? これじゃあスティーブン・キングじゃなくてフランク・ダラボン原作の「霧」だよ・・・)(★☆)
2008年9月11日 『ボーン・アイデンティティー』(2002年米)を見ました。
 監督はダグ・リーマンという人。海を漂流中に漁船に助けられた記憶喪失の男は、殺しの技術を叩き込まれた特殊工作員ジェイソン・ボーンだった! 人気スパイ小説「ジェイソン・ボーン」シリーズの映画化。
 新時代のスパイ映画と絶賛されていたので期待していたのですが、ストーリーにも演出にも特に新味はありませんでした。ただ、とても手堅く作られていたので、素直に楽しむことができました。硬派というほど硬派ではないんだけど、無駄に派手にしてないところがイイですね。マット・デイモンが地味な学生にしか見えないと文句を言ってる人がいましたが、これは、ある意味、リアリズムでしょ。スパイは目立っちゃいけませんから。(★★)

『ボーン・スプレマシー』(2004年米)を見ました。
 監督はポール・グリーングラスという人。「ジェイソン・ボーン」シリーズ第2弾。姿をくらまし、恋人と一緒にインドで幸せな生活を送っていたボーンだったが、謎の組織の送り込んだ暗殺者の出現によって、再び戦いの渦中へ引き戻される。その頃、ベルリンではCIA職員暗殺事件が発生! 濡れ衣を着せられて犯人にされたボーンは、謎の組織とCIAの両方から追われることになる!
 今回は主人公が復讐に燃えて主体的に行動するので、アクション映画としてのカタルシスはUP。それでいて最後は、殺し屋だった主人公の贖罪というテーマに持っていくあたり、なかなか野心的な映画だと言えます。前作の成功を受けて予算もUPしているので、スケールもUP。インド、ベルリン、ナポリ、モスクワと世界を股にかけての冒険は、なんだか往年のスパイ映画みたいで懐かしかったりもする。登場人物も多くなって、なんだかゴチャゴチャ詰め込み過ぎみたいな気もするけど、これをキレイにまとめてあるんだから大したものだ。3部作の中で一番クオリティーの高い作品でしょう。(★★)

『ボーン・アルティメイタム』(2007年米)を見ました。
 監督はポール・グリーングラスという人。「ジェイソン・ボーン」シリーズ第3弾。未だ記憶を取り戻せず、過去の悪夢に苦しむボーン。そんなある日、CIAの秘密計画「トレッドストーン」を追跡していた新聞記者が重要な事実を掴んで新聞に「ジェイソン・ボーン」の記事を載せた。自らの過去を知るため、ボーンは記者と接触しようとするが、記者を確保しようとするCIAと、事実を隠蔽しようとする謎の組織が動き出していた!
 3部作完結! ついにジェイソン・ボーン誕生の秘密が明かされる!ってなわけで、大いに盛り上がれるはずだったのですが・・・。回を重ねるごとに派手になってきたアクションですが、ここまで行ってしまうと、もうほとんどマンガで、当初売りにしていたリアルなアクションというものから離れ過ぎでしょ。その他大勢のアクション映画との区別化が図れていない。元々そんなに新味のなかったストーリーの方も、安っぽい盛り上げを狙ったせいか、もう完全に予定調和のステレオタイプになっちゃった。ツッコミどころもいっぱい。厳しい訓練の末に、感情を無くした完璧な殺人マシーンになったはずなのに、子供を見ただけで人間性を取り戻すなよ。ボーンの過去に何かがあって、そのせいで子供を見た時に我を取り戻したとか、なんらかの理由付けがほしかった。ボーンを狙う暗殺者も簡単に改心し過ぎ。血で血を洗うスパイの世界がいい人ばかりでシラケるなー。新時代のスパイ映画を標榜してきたシリーズが、完結編にして一番凡庸になっちゃった。だんだん大作になって、ヒットさせなきゃいけないというプレッシャーもあったんだろうけど、これにはガッカリだなあ。まあ、ごくごく普通のアクション映画としては及第点だけど。(★★)
2008年9月7日 『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年米)を見ました。
 監督はマット・リーヴスという人。大都市マンハッタンが何者かの襲撃を受ける! なんだ!? またテロか!? 軍隊が出動する中、市民たちは逃げ惑うが・・・
 公開からだいぶ経ってるので、もうバラしてもいいでしょうね。情報制限をして話題作りをしたハリウッド製怪獣映画です。ストーリーに新味があるわけではなく、怪獣映画に慣れ親しんだ日本人からすると何を今更な題材なんですが、ホームビデオで撮影されたという設定で実録風に演出されているところがミソ。出来上がった作品を見れば分かりますが、この手法はこの題材と相性がいい。また、実録風に撮られることによって、怪獣がテロのメタファーであることが、より明確に伝わります。かなり忠実にトレースされた、貿易センタービル崩壊の映像・・・。後半、主人公たちのドラマと怪獣を絡めようとした結果、展開がやや強引になっているところも見受けられるのですが、娯楽映画としても社会学映画としても見所の多い傑作です。『GODZILLA』なんていう酷い駄作もあったけど、「9.11」を経て、アメリカもやっとイッパシの怪獣映画を撮れるようになったんだなあ。(★★☆)
2008年9月5日 『ファントム』(1922年独)を見ました。
 F・W・ムルナウ監督。金持ちのお嬢さんに一目惚れした貧乏な青年が、金持ちを装おうと高利貸しの叔母さんからお金を借りたことから身を持ち崩して、悪い仲間に言われるがままに、遂には犯罪に手を染めるというお話。
 40歳過ぎのオッサン(←実際にはもっとフケて見える)が夢見る青年を演じているのは違和感ありまくり。この時代には、まだ舞台の伝統が残っていたんだろうけど、映画にはアップがあるから、演技力で顔のシワは隠せません。いかにも無垢そうな青年が演じていたら、もう少し同情的に見れたかも知れないけど、これではシンドイですねー。主人公の前後不覚な行動には、イライラさせられっぱなし。トリックを多用した映像はそれなりに面白いんだけど、観客を一緒に陶酔させてくれるほどではありません。『最後の人』や『ノスフェラトゥ』あたりは違うけど、ムルナウの映画って、幻想と現実をしっかり区切って見せるんですよね。このことが、映画に、変に真面目と言うか、凡庸な印象を与えていると思います。(★★)
2008年9月4日 『フォーゲルエート城』(1921年独)を見ました。
 F・W・ムルナウ監督。狩りのために貴族たちが集まったフォーゲルエート城に、殺人の嫌疑がかけられたエーチュ伯爵が現れる。エーチュを前夫の仇と恨む男爵夫人は彼を追い返そうとするが、エーチュは城に居座ってしまい、楽しいはずの城への滞在は重たい空気に包まれる。そんなある日、エーチェが忽然と姿を消して・・・というミステリー映画。
 80年以上前の映画だからしょうがないことだけど、オチが早々に予想できてしまうのは辛い。布石が露骨で丁寧過ぎるし。私の中ではミステリーとして機能してくれなかった。ただ、おどろおどろとした怪奇映画的なムードは楽しめる(←『ノスフェラトゥ』のような完全な怪奇映画の方が、変などんでん返しがない分だけ素直に楽しめるけどね)。ミステリー映画の一つの定石を作った映画ではあるんだろうし、歴史的な意義は大きいです。(★★)

2008年8月25日 『女ヴァンパイア カーミラ』(1964年伊/スペイン)を見ました。
 監督はカミロ・マストロチンクエという人。19世紀の怪奇小説家シェリダン・レ・ファニュの代表作「女吸血鬼カーミラ」を元にしたホラー映画。「カーミラ」を扱った映画ではハマー・フィルムの『バンパイア・ラヴァーズ』(1971年)が有名だけど、この映画もさり気なく人気がある。確かに、本物の城を利用したロケーションや、ミスター・ドラキュラ伯爵ことクリストファー・リーの出演など、見所も多い。ただ、既にハマーのホラー映画が世界を席巻していた時代にあっては古臭さは否めない。クストファー・リーのネームバリューに頼っていたのかな? これと言った見せ場がない。50年代にB級映画を牽引していたサミュエル・Z・アーコフが製作に名を連ねているけど、本当に50年代の映画みたいな感じ。雰囲気はそれなりにあるんだけどね。(★★)

『死霊伝説 完全版』(1979年米)を見ました。
 スティーブン・キング原作の長編小説を『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパー監督で映像化したTVムービー。多くの国では短縮版が劇場用映画として公開され、以前に日本で発売されていたビデオもそちらの短縮版(110分)でしたが、DVDは183分のオリジナル版です。
 怪しげな骨董屋が越してきて以来、田舎町サーラムズ・ロットでは謎の失踪事件が相次ぐようになった。ある少年は、失踪した友人が怪物になって舞い戻ってきたと証言する。一体町で何が起こっているのか? 久々に町に帰ってきた作家のベンは、過去に陰惨な事件が起き、自身も少年時代に恐ろしい体験をした幽霊屋敷に原因があるのではないかとにらむが・・・
 映画版では省略されていた細かいエピソードが復活したことで、ディテールを積み重ねていくことで表現されるキング小説の魅力が伝わるようになったと評判の完全版。確かに、一本筋の物語を追うだけだった映画版より、世界観が広がって深みが増しています。特に大きいのは、プロローグとエピローグのの復活。既に解決済みの「一事件」という印象から、連綿と続く「大河ドラマ」のようなスケールにグレードアップしています。でも、やっぱり演出まではグレードアップせず。TV映画だから、どうしても表現が控え目なんですよね。全体が抑え目なのは、雰囲気があってイイと思うんだけど、ここぞという場面では、もう少しパンチを効かせてほしかった。全体的に映像が安っぽいところも残念。TVドラマが活況を呈してる現在だったら、もっと立派なものになったと思うんだけど。肝心なところでコマーシャルを入れるためにブラックアウトするのも、見ていて興を削がれました。面白くて印象的なシーンも多いだけに、これが本格的な映画として作られていたら・・・と、ついつい考えちゃいます。(★★)
2008年8月24日 『ロストワールド』(1925年米)を見ました。
 監督はハリー・O・ホイトという人。コナン・ドイルの小説を元にした秘境冒険映画で、特撮映画の父オブライエンの手掛けたコマ撮り恐竜が大挙して登場! この映画の成功によって、歴史的名作『キング・コング』が生まれることになります。
 同時代に生きてて順番に見ていたら、凄く感動したと思うけど、『キング・コング』の後で見ると、流石に見劣りする。動きは荒いし、スケール感も出ていない。ストーリー展開がスローモーなところも痛いです。でも、たくさんの恐竜を登場させたサービス精神は楽しいし、初めて怪獣による都市破壊を描いた歴史的な意義も大きいです。全ての怪獣映画の始祖。ちなみに、スピルバーグの『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』は、言わずもがな、この映画に対して捧げられたオマージュです。(★★)
2008年8月23日 『The FEAST/ザ・フィースト』(2005年米)を見ました。
 監督はジョン・ギャラガーという人。砂漠のバーが謎のモンスターの襲撃を受ける! 立てこもった人たちは、必死の抵抗を試みるが・・・というベタベタなB級ホラー映画。
 普通の映画なら死にそうもない人が死んじゃったりとか、先の予測のできない展開を売りにした映画で、ホラーファンに好評とのことだったんですが、冒頭いきなり、これがコメディー仕立てのパロディー映画であることを宣言してしまっていたから、ちょっと興ざめ。それを宣言した時点で、何が起こっても大して驚かない“何でもあり”の世界になっちゃうでしょ。積み上げた世界観を壊すからこそ面白いんであって、ただハチャメチャなだけでは、なんにも壊していないのと同じだと思う。あと、ハチャメチャさを売りにしている割には、主役格の人はやっぱり無事に生き残ったりとか、結局は定番の展開になるところも頂けない。定番の逆をやるばかりでは逆に展開を予測されてしまうから、あえて定番のも入れたのかも知れないけど、こういうやり方では、単に保守的になるだけ。結局、凡庸な印象しか与えません。怪物がいきなり交尾を始めたり、大量の精子をぶちまけたりするのも、誰も思い付かなかった面白いアイデアと言うより、単に下らないからやらなかっただけ。まーハナから下らない映画を目指していたんだろうから、これはこれで成功かも知れないけど、ポップコーン映画ファンが色々とツッコミを入れながら見る以外には、ほとんど存在意義のない映画です。(★★)
2008年8月21日 『THEM ゼム』(2006年仏/ルーマニア)を見ました。
 監督はダヴィド・モローとザヴィエ・パリュという人。田舎の一軒家に越してきた夫婦が、謎の襲撃者によって恐怖に叩き込まれるというお話。ルーマニアで実際にあった事件が元になっているんだそうな。
 ほとんどストーリー性がないワンシチュエーション、一軒家(と言っても結構広い)を舞台に、少ない登場人物で描く映画なので、監督の演出力が肝になるところですが、その割にはパッとしない。別にこれと言った欠点があるわけではないのですが、際立った部分も特にない。こういう監督は、もっとストーリー性のある映画を作った方がいいんじゃないかな? ラストのオチはまあまあ。実際の事件であることをカサに着たような説明の字幕はいらなかったと思うけど。あんな説明がない方が、暗い余韻を引きずったと思う。ところで、襲撃者が「カカカカカ・・・」という音と共に登場するところは、やっぱり『呪怨』の影響なの?(★★)
2008年8月18日 『ルーブルの怪人』(2001年仏)を見ました。
 監督はジャン・ポール・サロメという人。改装中のルーブル美術館で、過去に収蔵されていた謎のミイラが見付かる。ミイラは早速研究に回されるが、それ以来、夜な夜な謎の怪人がルーブルに出没し、怪事件が相次ぐようになる。捜査に加わった老刑事は、謎の怪人の正体を、何十年も前にルーブルに出没した「Belphegor」という悪霊に違いないと主張するが・・・というお話。主演は、いつまで経ってもキレイなソフィー・マルソー。ルーブルの向かいのアパートに住んでいて事件に巻き込まれるという役どころです。
 「Belphegor」というのは、アルテュール・ベルネード原作の恐怖小説で、サイレント時代に連続活劇として映画化、60年代にもTVシリーズ化されている、フランスでは人気の物語らしいです。この映画と同じ2001年にもTVシリーズ化されてるみたい。IMDbのサイトで調べた時、私、そっちのTVシリーズの方の評価を見て、拾い物かも知れないと思ってDVD買っちゃったんですよね。ホントがっかり・・・。登場人物たちの目からは見えないCGの幽霊が飛び回っている様は全然怖くないし、だからと言って、ファンタジーとしても魅力に乏しいし、過去のシリーズと関連付けて描いている割には活劇にもなってないし、ホント何もかもが中途半端な映画。幽霊が大量出現するラストは、なんかアホっぽくても面白くないこともないんだけど・・・(★☆)

『マニアック』(1980年米)を見ました。
 監督はウィリアム・ラスティグという人。頭のおかしい殺人鬼が次々と女性を血祭りに上げるという、まーそれだけの映画。『血を吸うカメラ』みたいに殺人者の苦悩も描かれているんだけど、こっちの主眼はゴア描写。心理描写は二の次です・・・
 『ハイテンション』のアジャ監督が褒めていたから見てみたんだけど、確かにそっくりなシーンがありました。脚本はメタメタだけど、演出にはそれなりに光るものがあるのかな? 確かに、ジメジメ、ネチネチとしたタッチは印象に残る。タランティーノは、脚本を手掛けた『トゥルー・ロマンス』の監督にラスティグを望んでいたそうだけど、それはそれで見てみたかった気もする。この映画に関しては、もう一度見る気はしないや。(★☆)
2008年8月16日 『ノーカントリー』(2007年米)を見ました。
 ジョエル&イーサンのコーエン兄弟監督。作品賞を含むオスカー3部門を受賞。鹿狩りをしていたハンターが、偶然、マフィアとギャングが麻薬の取引中に撃ち合って全滅した現場を発見した。そこには見たこともないような大金の詰まったバッグが・・・。ハンターは思わずその金を持ち逃げしてしまうが、凶悪なギャングたちと、マフィアに雇われた凄腕の殺し屋が執拗に追跡してくる! 事件を調査していた老保安官もハンターの後を追い、なんとか彼を救おうとするのだが・・・レビュー(★★★)
2008年8月10日 『少林虎鶴拳』(1978年香港)を見ました。
 ラウ・カーリョン監督。『キル・ビル Vol.2』に登場した「白眉道人」の元ネタが登場するカンフー映画。あらゆる武術を跳ね返す無敵の体を持った白眉道人によって少林寺が滅ぼされる。仲間の犠牲もあって、なんとか逃げ延びた武術家のホンは、敗れても敗れても、鍛錬に鍛錬を重ね、何度となく白眉道人に挑んでいくのだが・・・
 白眉道人の無敵っぷりが人気を呼んだ映画なんだけど、それよりも、何度となく白眉道人に挑み、十数年越しで復讐を成し遂げようとする主人公の姿に熱くなる。それだけに、彼の死後、息子が復讐を受け継いでから、急にコミカル・カンフー調の軽いノリになってしまうのは戴けない。なんだんだろう? ジャッキー・チェンの影響か? こんなに簡単に倒しちゃったら、親父さんの立つ瀬がないです。最後の最後で盛り下がるなあ。(★★)

『続・少林虎鶴拳 邪教逆襲』(1980年香港)を見ました。
 『少林虎鶴拳』で人気を博した白眉道人を再び登場させた作品。一応兄弟(兄弟子?)ということになってるけど、ほとんど同一キャラです。味をしめた白眉道人役のロー・リエが監督まで担当。今回、白眉道人に挑むのは、『キル・ビル Vol.2』では白眉道人の方に扮していたリュー・チャーフィーです。
 今回は最初からコミカル・カンフー路線を押し出していて、白眉道人の無敵ぶりもさらにパワーアップ。もうほとんどマンガの世界。これはこれで別に悪くないけど、最後はどうしてあんななんだ。万策尽きた後に、なんとなく攻撃したら、そこが弱点で、白眉道人は呆気なく死亡。主人公が「あれ? 倒しちゃった!」って喜んで「劇終」。こんなの面白いか?(★☆)
2008年8月9日 『デュエリスト/決闘者』(1977年英)を見ました。
 リドリー・スコット監督。ナポレオンの時代のフランス。腕自慢の決闘マニアのフェロー中尉に決闘を挑まれたデュベール中尉は、思わず彼を負かしてしまったことで、以来、執念深いフェローにつけ狙われる。戦中戦後、決闘に決闘を繰り返す2人の運命やいかに!?
 とにかく映像がキレイ・・・。多少『バリー・リンドン』の後追いをしているようにも見えるけど、普通あんなのマネしてマネできるものではないんだから、最大級の賛辞に値します。こっちの方が予算は全然かけてないんだし。演出もしっかり地に足着いてて、いっぱしの大河ドラマ。長編デビュー作でコレって凄過ぎるよね。この映画に続けて、『エイリアン』、『ブレードランナー』って撮ってた時代のリドリー・スコットって、ホント神がかってたな。最近の映画は、もーどーでもいいけど・・・(★★☆)

『少年と自転車』(1965年英)を見ました。
 リドリー・スコット監督の処女作らしい。27分の短編。『デュエリスト/決闘者』のDVDに特典として収録されてます。少年が、学校に行かないで自転車を乗り回して、浜辺に行って・・・
 ヌーヴェルヴァーグの影響も色濃い、初々しい作品。モノクロームの映像の節々に、そのセンスの片鱗を感じさせます。他愛のない内容に思わせておいて、最後にホラー映画まがいの演出でビシッとオチをつけるあたりはさすが! 少年の心に引っ掛かっていたものが何なのか? 霊感のように去来する死の認識・・・。世間での評価はあまり高くないけど、これは、彼の長編にも匹敵する傑作だと思うぞ。(★★☆)

『ファントム』(1998年米)を見ました。
 監督はジョー・チャペルという人。ディーン・クーンツの同名小説の映画化。遠出していた女性医師が、自宅兼診療所のある田舎町へ戻ると、町の住民500人が忽然と姿を消していた! 探索を続ける内にいくつかの遺体も発見されたが、それらは皆、異常な状態だった。外傷がなく、全身が黒ずんで死んでいる者もあれば、はたまた切断された首をオーブンに詰められている者まであった! ホテルの一室では、謎の書き置きが見付かる。「太古からの敵・・・」。一体何が起こったのだ? 「太古からの敵」とは一体何なのだ!?
 ご覧の通り、ツカミはオッケーなSF(?)ホラー映画。小説が面白かったので、是非映画版を見たいと思ったのですが、こりゃヒドい。危険な逃亡犯や悪魔崇拝の暴走族のエピソードが同時進行する多層的な構造を取っ払って、単なるSFホラーの形態を取ったのは、尺の問題とかあるから、まあ許せるとしても(そのせいでオチが弱くなってるけど)、肝心のSFホラーの部分のレベルが低いから、全く救いがない。この監督(もしくは脚本家)、心理的なレベルでの恐怖を全く表現できないんだよ。原作にあったそういう部分が全部抜け落ちてる。それだけじゃなく、原作にはない安直なサスペンスを創作してお茶を濁したりしてるから、尚更始末が悪い。配役もヒドいなあ。頼りになる初老のベテラン警官役がベン・アフレック。←ベテランに見えないし、頼りにもならないよ! 大食漢の科学者役がピーター・オトゥール。←やせ過ぎ! 意志の強い女性医師役がローズ・マッゴーワン。←『プラネット・テラー』の時より全然魅力がねーよ! 医師の妹役の人も老け過ぎ。原作では少女だったのに(←キチ○イ警官が裸で迫ってくる場面があるから配慮したんだろうけど・・・)。全ての面に渡って、ことごとくレベルの低い映画ですね。(★☆)
 この映画見るなら原作読みましょ。100倍面白いよ。まあネタばらしに怒っちゃう人もいるかも知れないけど。ほとんど反則。何でもあり。こういうオチにするんだったら、どんなに異常な出来事が起こっても許されちゃう。下らなさが突き抜けてて、逆にスゲーなあって感じなんですけど。SFと神話が混然となってく感じが好き。
2008年8月8日 『破戒』(1977年香港)を見ました。
 監督はチェン・チャンホーという人。「女ドラゴン」ことアンジェラ・マオ主演のカンフー映画。梶芽衣子の『修羅雪姫』を思いっ切しパクっているのでビックリしてしまった。あの映画、そんなにパクりたくなるほどイイ映画か? まあ、とにかく、流刑地で産まれて少林寺みたいな所で育った女性が、濡れ衣を着せられて殺された両親の復讐をするというお話。
 ちょっとちょっかいを出してきただけの不良をサソリの毒の実験台にして殺してしまったりするヒロインの傍若無人ぶりが凄い(^^; 立ち回りもなかなかの迫力で、アンジェラ・マオの代表作と言われるのも頷ける(←毒を受けた時の顔が不細工過ぎるけど・・・(^^; メイク係も配慮してやれよ)。それにしても脚本がいい加減。ヒロインの親代わりのおばさんやお寺の尼さんが、「彼女に復讐をさせたくない」とか言いながら、やっていることはアベコベなの。登場人物の言動に一貫性がない。香港映画じゃいつものことだけど、重たい話なだけに、もう少し丁寧に描いてほしかったなあ。(★★)


『逢びき』(1945年英)を見ました。
 デヴィッド・リーン監督。中年男女の遅れてきた初恋、不倫の愛。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が情感を盛り上げるロマンス映画の名作です。
 主人公の回想で始まるから、オチはある程度分かった上で見るんだけど、そんなことは全然気にならない。登場人物と一緒に幸せな時間を味わって、登場人物と一緒に喪失感を味わう。全編を覆うモノローグも、心理的な没入を促します。物珍しい設定に頼ったり、安っぽいサスペンスを投入して間を持たせる最近の恋愛映画とは大違い。モノクロの映像美、街路に落ちる男女の影、そしてラフマニノフ。これ以上、何を望むと言うのか?(★★★)
2008年8月7日 『ゾディアック』(2006年米)を見ました。
 デヴィッド・フィンチャー監督。60〜70年代に暗躍し、逮捕されないまま姿を消した謎の殺人鬼、通称「ゾディアック」の引き起こす騒動を描いたミステリー映画。未解決事件を扱った映画なので、当然未解決のまま終わるのかと思ったら、最後に事件に解決がついてた(・o・) 未解決のまま終わってた方が、印象深くなったと思うけど・・・。考証を徹底した時代描写は見事。こういうのは金のかかったハリウッド映画じゃなきゃできない。ゾディアックその人と言うより、移り行く時代をテーマにした映画。なかなか堪能させてくれます。(★★☆)
2008年8月5日 『Light Rhythms』(1930年英)を見ました。
 抽象的な写真作品で知られるフランシス・ブリュギエールが手がけた6分ほどの短編。彼の写真作品と同じように、切り抜いた紙に照明を当てて陰影を描き出す手法で作られた映画です。(★★)
2008年8月?日 『レンブラントの夜警』(2007年加/ポーランド/オランダ/英/伊/仏/独)を見ました。
 ピーター・グリーナウェイ監督。レンブラント生誕400周年を記念して制作された映画らしいんだけど、「レンブラントはあまり好きじゃない」というグリーナウェイは、結構悪意をこめて作ってます。まあ悪意があるのは、いつものことなんですが。祝祭的ムードとは程遠い、陰湿な映画です。大作「夜警」の誕生の経緯に迫る物語なんですが、正義に燃えて色々な告発を込めて書いた絵を、「言いたいことは分かるけど、それが一体なんだって言うんだ?」って一蹴されてしまうところが面白い。芸術家の存在の意義そのものを否定しているような身も蓋もない物言い。ところでこの映画のDVD、ちょっとピンボケして見えるけど、これって元からなの? 目がちかれた。(★★)

2008年7月30日 『アンドロメダ…』(1971年米)を見ました。
 ロバート・ワイズ監督。砂漠に墜落した人工衛星を回収しようとした米軍部隊からの連絡が途絶えた。そこから程近い田舎町では、アル中の年寄りと生まれたばかりの赤ん坊だけを残して住民が全滅していた。未知の細菌の存在を疑った米政府は、回収した衛星と2人の生存者を砂漠の地下の秘密施設に隔離して、各分野のエキスパートを集めて研究を進めさせるが・・・
 ベストセラーとなったマイケル・クライトンの処女作を名匠ワイズ監督で映画化したハードSF。リアルな科学考証とシリアスな展開にシビレル! まあ今見ると、ちょっとレトロな部分も目立つけど、今時だって、こんなハードなSFは滅多にないよ。派手目のクライマックスより、じわりじわりと盛り上げる部分にワクワク!(★★☆)
(この映画のDVD、ちょっと変。地名や団体名を示す英語字幕が抜け落ちてるの。各国公開用に原版が字幕なしだったのかな? 昔のビデオとかだと、「ピッピッピッ」の音に合わせて字幕が流れてきたんですけどね。音だけして字幕が出ないのは変な感じだから、字幕ありのバージョンのDVDを出して欲しかったなあ。ブルーレイではどうなってるんだろ?)
2008年7月?日 『チョコレート』(2005年米)を見ました。
 監督は『クリッター2』や『サイコ4』(←自慢にもならない)のミックギャリス。アメリカの人気TVシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」の第一シーズンから。ある日突然どこかにいる誰かの感覚を共有するようになった主人公。快楽も共有して、すっかり夢中になってしまった主人公は、その誰かを探し当てようとするのだが・・・
 映画向きじゃない題材だ。画的に地味過ぎる。短編小説なら悪くなかったと思うけど・・・。悲劇性を強調して、もっと情感が出すことができてれば、もうちょっと面白くなったんじゃないかなあ。(★☆)
2008年7月?日 『妻の死の価値』(2007年米)を見ました。
 監督は『クライモリ』のロブ・シュミット。アメリカの人気TVシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」の第二シーズンから。支配的な奥さんが事故で死んで、愛人とラヴラヴ万々歳と思ったら、病院に担ぎ込まれた瀕死の奥さんが、臨死体験する度に幽霊になって現れて脅かしてくるというお話。
 全体的に勢いを失った感のある第二シーズンの中では、拾い物の一本。ホラーと言うよりはブラックユーモア作だけどね。(★★)
2008年7月?日 『新リバイアサン/リフト』(1989年スペイン)を見ました。
 監督はJ・P・サイモンという人。とても80年代後半の映画とは思えない安っぽい特撮ながら(←狙ってやってるのか?)、B級映画らしいサービス満点の展開で、それなりに人気のある海洋冒険SFホラー。まーそれだけ。映像の安っぽさはガマンするけど、演出の安っぽさは・・・(★☆)
2008年7月?日 『ノイズ』(2006年米)を見ました。
 監督は『セッション9』のブラッド・アンダーソン。アメリカの人気TVシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」の第二シーズンから。聴覚が異常に鋭くなってしまった男が体験する恐怖・・・というかストレス。
 音響にコダワリを見せるアンダーソンらしい作品。一人よがりの物語も、いかにもアンダーソンらしい・・・(★☆)
2008年7月?日 『Vの伝染』(2006年米)を見ました。
 監督はTVを中心に活動しているアーネスト・ディッカーソンという人。アメリカの人気TVシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」の第二シーズンから。肝試しで葬儀屋に忍び込んだせいで、オッカナイ思いをするというお話。
 手堅い演出で、葬儀屋のシーンは結構盛り上がります。ただ、その後はずっと失速気味。主人公の決断も感動を呼ばない・・・(★☆)
2008年7月?日 『災厄の街』(2006年米)を見ました。
 トビー・フーパー監督。アメリカの人気TVシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」の第二シーズンから。両親が何者かに殺されて以来、怯えて生きる主人公。彼が大人になった時、再び“ヤツ”が戻ってくる!(←やっつけ感たっぷりな解説)
 出だしは期待させるんだけど、後半はしぼみます。敵の正体がパッとしないし、暴れっぷりも割とおとなしい。(★☆)
2008年7月?日 『ワシントン・コード』(2007年米)を見ました。
 監督は『蜘蛛女』のピーター・メダック。アメリカの人気TVシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」の第二シーズンから。アメリカ初代大統領ワシントンの秘密と、その秘密を守ろうとする秘密結社「WASHINGTONIANS」(←原題)の暗躍。
 初代大統領の背徳的な秘密ということで、多少スキャンダラスになることを狙ったみたいなんだけど、コメディー調の軽いノリのせいでパンチは弱い。こんなの、アメリカ人だって衝撃受けないでしょ。どーでもいー。(★☆)

2008年6月?日 『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年米/英)を見ました。
 監督はマーティン・キャンベルという人。心機一転、ハードでシリアスなタッチを売りにした新ボンド・・・なんだけど、しょっぱなのアクションからして、ジャッキー・チェンまがいのアクロバチックなものだったので、ちょっと興醒め。所詮見世物だから、リアルじゃないのはしょうがないのかも知れないけど、オリジナリティーも希薄。まあ旧作の熱心なファンというわけでもないので、普通に楽しめたけど。アクション映画としては及第点。
 肝心のポーカー対決が盛り上がらないのは問題。相手のクセを見抜いて手を読むとか、それを逆手に取って勝負をかけたりとか、駆け引きの底が浅過ぎる。こういうところがお子ちゃま向けなんだよなー(原作のバカラがポーカーになってるし)。ハードなタッチを強調したかったんだろうけど、キン○マを痛めつける拷問も微妙。穴の開いたイスに座らせてロープで下からぶつ・・・って、なんか回りクドい。直接キン○マを映せないからこうしたとしか思えない。じゃあ別にキン○マにしなくても良かったのでは? 「ぼくの小指のテクニックを知ってる?」みたいなジョークも含めて、変に下品なんだよね。これが大人向けってこと? お子ちゃまが精一杯背伸びして作った「大人の映画」って感じ。(★★)
2008年6月?日 『ファンタスティック・フォー 超能力ユニット』(2005年米)を見ました。
 監督はティム・ストーリーという人。強力な宇宙線を浴びて超能力を得た4人組が、同じく超能力を得て世界征服を企む悪者に立ち向かう!
 原作は長い歴史のある人気アメコミなんだけど、やっぱり体がグニョグニョのゴム人間が主人公というのは、実写にするとカッコ悪いよね。今まで実写化の話が出ては立ち消えていたというのも頷ける。最近流行の“ダークでシリアスなアメコミ”路線を狙わずに、コメディー色を強調したのは正解だったと思うけど、あんまりキレがないなー。シリーズ化をにらんで配慮したんだろうけど、個性を感じさせない地味な役者陣もマイナス(←役者がビッグになると続編で起用しにくいから)。唯一の救いは紅一点のジェシカ・アルバか。私、初めて見たんだけど、人気者になるのも納得のカワイさでした。(★☆)
2008年6月?日 『プレスリー VS ミイラ男』(2002年米)を見ました。
 監督は『ファンタズモ』シリーズのドン・コスカレリ。主演は『死霊のはらわた』シリーズのブルース・キャンベル。自分のことをコッソリ引退した「エルヴィス・プレスリー」だと主張する老人と、自分のことを黒人に整形手術されて暗殺を逃れた「ケネディ大統領」だと主張する老人が、老人ホームを襲うミイラ男「ババ・ホ・テップ」に立ち向かう!
 ホラー映画界のカリスマの異色の顔合わせが実現したホラー・コメディー。なんとも下らないストーリーラインだけど、語り口は意外としっかりしてる(←ウケ狙いの一発ネタかと思ったら、ちゃんと原作があるんですね)。老いさらばえ、誰からも顧みられなくなった男たちが死力を振り絞って巨悪と戦う様は、ちょっと感動的だったりして(笑)。ミイラ男との攻防にもう一工夫ほしかったとは思うけど、コメディーとしては及第点。楽しく見れましたです。(★★)
2008年6月?日 『サンシャイン2057』(2007年英/米)を見ました。
 ダニー・ボイル監督。原題はただの『SUNSHINE』。SFだと分かるようにしたかったんだろうけど、年号を付けるタイトルはダサイなあ。どうしても、あの超駄作『クライシス2050』を思い出してしまいますし・・・。太陽の活動が弱まり、地球上どこもが冬に包まれた近未来・・・、人類の最後の希望「イカロス2号」が、8人のクルーと超特大の核爆弾を乗せて太陽へと向かっていた。太陽に充分接近した上で計算されたポイントに正確に核爆弾を投下することができれば、太陽は再び活性化するはずだ。しかしクルーの不安は尽きない。太陽に極度に接近することによって、船体や人体にどんな問題が起きるのか予想できないのだ。7年前に消息を経った「イカロス1号」の失敗の理由も未だ分かっていない。宇宙の脅威に立ち向かう8人、そして人類の運命やいかに!?
 「鉄腕アトム」の時代に逆戻りしたような今更な題材だけど、これは意図的なものですね。レトロなSFを現代的に映像化するという試みなのでしょう。確かに、今風の科学考証に基づいたリアルな映像は見応えあります。ただ、ドラマはちょっと弱いかな? 宇宙旅行を始めてだいぶ経ってるという設定だからしょうがないのかも知れないけど、登場人物がみんなテンパリ過ぎ。理解不能な言動を連発するから感情移入しにくいの。後半、幽霊映画みたいになってからのサブリミナル演出とか、モンスター映画みたいになってからの歪んだ映像とか、狙い過ぎの演出もあざとい上にクドくて、ちょっとウンザリ。もっとサラリと描けなかったのかな? こういうSF映画で、あんまり演出が前に出るのは良くないと思う。見せ場が多くて普通に面白いんだけど、どれもいちいち出典を挙げられるような既視感に溢れたものだし、ボイル監督のB級資質が、いい意味でも悪い意味でもよく発揮された映画だと言えます。(★★)
(せっかくミシェル・ヨーや真田広之を起用してるんだから、モンスターと戦わせれば良かったのに(笑)。そうしてたら別の意味で傑作に成ってたかも?)
2008年6月8日 『28週後...』(2007年英/スペイン)を見ました。
 監督はフアン・カルロス・フレスナディージョという人。前作の監督ダニー・ボイルが製作総指揮に回った『28日後...』の続編。イギリス全土を恐怖に陥れたレイジ・ウイルス(凶暴化ウイルス)の発生から28週間後、ウイルスの脅威が過ぎ去り、外国へ逃れていた人々も帰国を始め、首都ロンドンは軍の管理下で復興を始めていた。しかし、軍が収容した保菌者からウイルスが流出して、急速に感染が広がってしまう。感染者と健常者の区別がつかない中、軍は事態を収拾するために皆殺し作戦を決行! 感染者と軍の両方から追われる身となった生存者たちは、必死に逃走を試みるが・・・
 最近珍しい、徹底して絶望的でシリアスなホラー映画ということで、評判も良かったので楽しみにしていたのですが、なんじゃコリャ?? 人喰いゾンビみたいな感染者がいっぱいの中、街中全滅してるのに女性が一人で何週間も生き延びていた! どうやって田舎から自宅まで帰ってきたの? 軍隊は全然調査しなかったの? 毒ガス撒いたりしなかったの? そもそも、オープニングで大勢の感染者に囲まれた時点で死んでると思うんだけど・・・。その女性がウイルスに免疫を持っていて、発症はしないけど保菌していて、こっそり会いに行った旦那を介して感染が広がるという筋なんだけど、いくら「街の責任者」とは言え、一般市民が軍の機密エリアにまでアクセスできるものなのかな? 仮に侵入してウイルスに感染したとしても、警備の人に撃ち殺されて終わりでしょ。これは作ってる方でも説得力がないと思ったのか、彼が感染して最初に軍人を襲うシーンは、残像のかかったコマ落としのPVみたいな映像にして誤魔化してるの。肝心なシーンを曖昧に済ませるなよ(^^; その後も、コイツは重要な出来事が起こる場面にはいつも居合わせてるんだけど、リアルさを売りにしたこの映画に、こんな“悪の権化”みたいなキャラはいらないでしょ。もっと大局的に描いてよ。運命の皮肉を描きたかったんだろうけど、こんなに偶然ばっかり重なると、ただの御都合主義です。見ていてシラケてしまいました。映像のクオリティーは高いだけに、なんとも惜しい映画ですねー。(★☆)

2008年5月?日 『ディスタービア』(2007年米)を見ました。
 監督はD・J・カルーソーという人。高校生の主人公が、教師を殴って、家から離れたら警察に通報するセンサーを付けられて自宅謹慎処分を受ける。彼は、退屈しのぎに近所を覗き見していた時に、女が殺されそうになっているのを目撃して現場に駆けつけようとするが、センサーが作動して警察に逮捕されてしまう。警察も親も彼の話を信じてくれない。殺人は本当に起こったのか? だとしたら死体はどこに? 彼は友人と共に事件を解明しようとするが・・・
 ちゃらんぽらんな若者を主人公にしたティーン向け『裏窓』。アメリカではヒットしたという触れ込みだったので期待して見たのですが、行き当たりばったりなストーリー展開にガッカリ。肝心の犯行が露見するキッカケも、ただの偶然。これでミステリーとして成立してるのか? バカで自己中な主人公に共感できないところも痛い。(★☆)
2008年5月2日 『殺人者たち』(1964年米)を見ました。
 TVムービーとして制作されながら劇場公開されたドン・シーゲル監督の初期作。原作はヘミングウェイ。依頼されて、ある教師を殺した殺し屋が、殺される前の教師の態度に何か腑に落ちないものを覚えて、彼の過去を調べ始めるが・・・
 元々はTVムービーながら、リー・マーヴィン、ロナルド・レーガン、ジョン・カサヴェテス、アンジー・ディキンソン、クルー・ギャラガーといった豪華キャスト(一部B級だけど)が集結。シーゲル監督のハードボイルドな演出も冴えた、犯罪映画の傑作です。(★★☆)
2008年5月1日 『簪』(1941年日)を見ました。
 清水宏監督。保養地の温泉に集う人たちの人間模様。原作は井伏鱒二。温泉に入っていて足に簪(かんざし)を刺してしまった男のところに、簪の持ち主がはるばる謝罪にやって来る。何かワケありの彼女は、彼の怪我が治るまで世話をすると言って温泉に留まるのだが・・・
 同室の人たちとのドタバタなどもあり、軽めの人情喜劇と言った風なのですが、オチでは結構しんみりさせます。登場人物たちが温泉地に集うのと同じように、思い返すとまた浸りたくなる、情緒ある世界。ただ、悪い意味で日本映画的と言うか、あざとくてクドイところも少々目立ちます。オチの情感を強調したかったのでしょうが、その布石となるシーンが必要以上に長いのです。「おじさん、がんばれ! おじさん、がんばれ!」、子供の騒ぎもウザッたい(^^; もう少しサラリと描いてほしかったなあ。(★★☆)

2008年4月27日 『ヒルズ・ハブ・アイズ』(2006年米)を見ました。
 ウェス・クレイヴン監督の『サランドラ』を、『ハイテンション』のアレクサンドル・アジャ監督でリメイクしたホラー映画。ネバダ砂漠を車で通り抜けようとした家族が、核実験場跡地に住むフリークス家族に襲われるというお話。
 新世代のスプラッターの旗手として売り出したアジャ監督のハリウッド・デビュー作ということで、壮絶極まりない映画を期待していたのですが、割と普通の映画でした。ストーリーが原作通りということは聞いていたけど、描写もそんなにキワドクなってなかったです。流血こそ少ないですが、70年代的な乾いた空気を漂わせていたオリジナルの方が、むしろショッキングに感じられたくらい。娯楽的要素にあまり配慮していなかったオリジナルと違い、アクション映画的な見せ場もふんだんに盛り込まれていて、ウェルメイドなアトラクション映画という印象です。これがアジャ監督の目指したところだったのかな? まあ、個性は感じさせないけど、この手のホラー映画としては水準以上の出来なので、普通にお楽しみ頂けると思います。敵に捕まった主人公が死体置き場に詰め込まれる時に殺されてない御都合主義には納得がいかないけれど・・・
 オリジナルには無かった新要素として、核爆発の影響を調べるために建てられた町の廃墟が登場するのですが、これは雰囲気があって良かったです。虐げられた者たちが住まう廃墟の町・・・。豊かな大国アメリカの裏の部分を描くという、物語の寓話的側面を強調していました。こういうシリアスな要素があるからこそ、あんまりアトラクション化しない方が良かったと思うんだけど・・・(★★)

『スリザー』(2006年米)を見ました。
 監督は、『ドーン・オブ・ザ・デッド』の脚本を書いたりしているジェームズ・ガンという人。80年代のB級ホラーの王道復古を目指した映画で、ストーリーも、宇宙から飛来した謎のナメクジ状生物に寄生された人がモンスター化するというベタなもの。予告編が面白かったので、それなりに期待していたのですが、面白いシーンは、ほとんど予告編の中で出尽くしていました。後は全然パッとしない。予告編で面白く思えたシーンも、テンポが悪くなってて、実際にはつまらなかった・・・。ダメじゃん。(★☆)

『セヴンス・コンチネント』(1989年オーストリア)を見ました。
 ミヒャエル・ハネケ監督。オーストリアに暮らすある家族、両親と幼い娘が、唐突に「オーストラリア」へ移住すると言い出して、身辺の整理を始める。会社や学校を辞め、銀行に入れてあったお金をごっそり下ろして・・・。レビュー(★★☆)
2008年4月3日 『プラネット・テラー』(2007年米)を見ました。
 お祭り企画の2本立て映画『グラインドハウス』からロバート・ロドリゲス監督作をピックアップしたもの。3時間超の映画では客入りを望めないということで、本国アメリカでも途中から分割上映されちゃいました。そうすると今度は短過ぎるということで、10分程長くされてますが、重要なシーンが増えているわけではないので、印象はほとんど変わらないです。相変わらず楽しめます。(★★☆)
 この映画、個人的には、娯楽映画として満点近い作品だと思っているのですが、一つ気に入らない点が・・・。映画中に登場する科学者が、男性の睾丸を集めていることの意味が分からない。銃撃戦になって命が危ない時にも、拾ってポケットに押し込んだりしてるから、ゾンビの治療薬を作るのに必要だとか、後で何かあるのかと思ったら、全然無いの。『ダークマン』の悪者が人の指を集めていたみたいに、ただの趣味だったってこと? 悪趣味なゲテモノ映画っぽさを出したかったんだろうけど、拾ってポケットに押し込むカットはいらないよね。まあ、そういう脈絡の無さも含めて、「エクスプロイテーション映画」らしいと言えば、らしいのですが、ギャグとしても面白くないだけに、蛇足のように思えました。

2008年3月28日 『パンズ・ラビリンス』(2006年スペイン/メキシコ/米)を見ました。
 ギレルモ・デル・トロ監督。スペイン内戦を背景にしたダーク・ファンタジー。ギレルモ・デル・トロって、素直に評価できない微妙な映画ばかり作っているけど、最高傑作とも言われるこの映画には、かなり期待してました。映像は凝ってるし、何しろプロットが魅力的でしたからね。・・・が、フタを開けてみたら、いつもの“安直サスペンス”だった。この人って、物語を語るすべを知らないのかな? なんでもサスペンス仕立てにしないと気が済まないみたい。それが面白いんならイイんだけど、もってき方が強引過ぎるのでシラケる・・・。こういうワザとらしいサスペンスは、デル・トロ監督のお好きなアメコミ映画化(『ブレイド2』とか『ヘルボーイ』とか)ならイイかも知れないけど、シリアスな作品だと浮いちゃいます。もっとドラマの力で見せてくれないと。脚本も演出もダメダメ。デル・トロには、ストーリーテラーとしての資格がないです。(★☆)
2008年3月22日 『グラインドハウス』(2007年米)を見ました。
 古き良き(?)エクスプロイテーション(見世物)映画の伝統を復活させようという試み。ロバート・ロドリゲス監督のゾンビ・ホラー『プラネット・テラー』と、クエンティン・タランティーノ監督のカーアクション・スリラー『デスプルーフ』の2本立て。
 タランティーノ信者の多い日本では『プラネット・テラー』より『デスプールフ』の方が評価が高いけど、正直言って『デスプルーフ』は、冗長な映画だと思う。最初の被害者が出るまでのクダリはサイコーだけど、その後は、あまりにも趣味的。趣味的な会話を延々と繰り広げた上、趣味的なアクションを延々と見せ続ける。緩急とかリズムというものを完全に無視してます。前にもどこかで書いたけど、タランティーノはアクションを撮るのが、あまり上手くないと思う。まあ、C級、Z級のエクスプロイテーション映画にオマージュを捧げているわけだから、こういう批判は、むしろ褒め言葉になちゃうかも知れないけど(笑)。
 対して『プラネット・テラー』は、娯楽作品として完成されています。テンポが良くてワクワクする。映像も立派なので、逆に「70年代のエクスプロイテーション映画らしくない!」と批判されたりしてますが、『デスプルーフ』とは、そもそも目指すところが違ったんだと思う。『デスプルーフ』は、かなり忠実にC級、Z級映画のスタイルを模した映画だけど、『プラネット・テラー』は、C級、Z級の映画制作者たちが、予算や技術がないために実現できなかった「夢の映画」を、本気で映像化したものなんだと思う。C級、Z級の映画制作者たちだって、意図して「安っぽい映画」や「出来の悪い映画」を作っていたわけではないのだから、こういうアプローチもアリだと思う。まあ、なんにしても楽しい2本立てであることに違いはありません。あくまでもお祭り企画として、ノリで楽しむのが吉ですね。(★★☆)
2008年3月11日 『クリッター』(1986年米)を見ました。
 監督はスティーヴン・ヘレクという人。なんでの食べちゃう凶悪宇宙人が宇宙の刑務所から逃げ出してきて、地球(の田舎)をパニックに陥れる!
 『グレムリン』フォロワーの中では一番有名な映画で、シリーズ化もされました。昔、小学生の時に見た時は結構楽しんだ記憶があったので、DVDが出ると同時に購入。子供の活躍で宇宙人が撃退される辺り、いかにも「子供向け」という感じなんですが、低予算の割にはソツのない作りで、今見てもそれなりに楽しめました。監督のヘレクは、後にディズニーに引っ張られて、ヒット作の『三銃士』を手がけたりしてます。(★★)
2008年3月3日 『スネーク・フライト』(2006年米)を見ました。
 監督はデヴィッド・R・エリスという人。証人1人を消すためにマフィアが旅客機の中に大量のヘビを持ち込んでパニックになるという、おバカな設定の映画。そもそも「おバカ映画」として開き直って作られていて、ノリと勢いで公開したらアメリカではスマッシュヒットを記録。確かに、ヘビが大量出現して機内がパニックになるシーンは、勢いがあって面白かった・・・けど、その後は停滞気味。珍しい毒ヘビがいっぱいいるという設定をほとんど生かせてません。せっかくヘビに詳しい先生と電話でやりとりするシーンを入れてるんだから、ヘビの毒の詳しい解説とか入れてほしかった。なんか漠然としていて恐怖が伝わりにくいの。これならディスカバリー・チャンネルの「毒ヘビ特集」の方がよっぽど怖いです。ヘビの中では主役格の「アナコンダ」の登場シーンにも一工夫欲しかった。なんとなく登場しちゃうけど、そうじゃなくて、他のヘビの攻撃をあらかた退けて一安心となったところで、ヘビ博士からの電話で「積荷リストにはアナコンダもいるぞ!」とかなって、ジャ〜ン!って登場したら盛り上がったと思う(←モンスター映画の定番)。(★☆)
2008年3月2日 『悪魔の追跡』(1975年米)を見ました。
 監督はジャック・スターレットという人。偶然、オカルト教団のいけにえの儀式を目撃してしまったキャンパーたちが、オカルト教団の追っ手とカーチェイスを繰り広げるという、前半ホラー→後半アクションな映画。タランティーノとかにも影響を与えているのかな?
 カルト的な人気のある映画なので期待していたのですが、あんまりパッとしない。ホラーの要素が上手く消化されていないんだよね。オカルトブームに乗っかって、「カーアクション映画」に強引に「ホラー」を詰め込んだ感じ。あんまり志の高くないプログラムピクチャーですな。オチも唐突で、ビックリすると言うよりシラケてしまいました。まあ、カーアクション映画としては及第点なので、普通に楽しめますが。(★★)
2008年3月1日 『アデラ/ニック・カーター、プラハの対決』(1977年チェコ)を見ました。
 監督はオルドリッチ・リプスキーという人。20世紀初頭のアメリカの大衆誌に掲載されていたという連続活劇のヒーロー「ニック・カーター」を主人公にした、レトロタッチの活劇映画です。本編に登場する怪物植物アデラの特撮を、なんとあのヤン・シュヴァンクマイエルが担当!
 往年のヒーローにオマージュを捧げてる映画かと思ったら、結構チャカして笑いものにしてる。オモシロオカシク楽しむパロディー・ギャグ映画ですな。・・・でも、サイレント映画タッチのオーバーアクションのギャグは、テンポが悪くてあんまり笑えない。ストーリーも、奇を衒っている割には、その実、結構保守的なんですよね。シュヴァンクマイエルの映画とは大違い。彼だったらヒロインを怪物に食わしてるぞ(笑)。悪者のキャラ造形は良かったのになー。いかにも「連続活劇」という感じの終わり方は楽しいです。(★★)

 2008年の2月は新しく10本の映画を見ました。
▼今月のアタリ
『ブラックブック』(2006年オランダ/独/英/ベルギー)
『たぶん悪魔が』(1977年仏)
2008年2月25日 『ホステル2』(2007年米)を見ました。
 イーライ・ロス監督。オランダのアムステルダムには、観光客を拉致って殺人趣味の金持ちに提供するホステルがあった! 人気残酷ゴア映画の第二弾。今回の被害者は女性観光客です。前作のラストから直接つながる冒頭の展開は好印象。なんだかご都合主義な展開に思えたあのラストの後に、こういう悲惨な結末が待っていたかと思うとスッキリ(?)する。前作のラストで、ここまで描いておけば良かったのに。拷問される側と拷問する側の物語を同時進行で描く新趣向も面白い。まあ、ホラーというよりはコメディーの様相を呈しているけどね。前作よりテンポが良く、演出にもキレがあるので、私はこっちの方が好き。ラストはちょっと微妙だけど・・・。普通、物語の主人公は、窮地に陥ったら、自らの能力、身体能力や機転を生かして、そこから脱するものじゃない。でも、この映画の主人公は、特定の人にしか許されていないアンフェアな、しかも自分の能力や努力に依存していない方法を使って窮地から脱するの。なんと「オ○のカ○」。わざと普通じゃない方法にしたんだろうけど、これって物語としてどうなんだろ? 少なくともカタルシスは生じない。チンチンを切って犬に食わせちゃうところは面白かったけど・・・。生首サッカーが展開されるラストも、ただの悪趣味に思えた。なにやら深いテーマを読み取ってる人もいたけど、何も考えてないね、この監督。(★★)

『変人村』(2006年仏)を見ました。
 監督はキム・シャピロンという人。最近フランスで流行っているブルータルなホラー映画の一本。不良のニーチャン、ネーチャンたちが、かわいいネーチャンに誘われるままに彼女の実家へ行ったら、スゴイ田舎だった上、屋敷を仕切っている使用人の男が、おっかないキ○ガイだったというお話。
 ユーロホラーらしいリアルな汚い系の映像なんだけど、B級ホラー的な記号がチラホラとするヘンテコな映画。シリアスにするのかコミックタッチにするのか割り切れてない感じで、見ていて困っちゃう。ビザールなテイストを狙ったのかも知れないけど、それにしては洗練が足りない。アーティストきどりのカッコつけた演出をやっちゃうところがいかにもフランスなんだけど、それがオリジナリティー皆無のパクリ演出。脚本崩壊のスタイルだけの映画なのに、そのスタイルが借り物だとは情けない。今時のフランスの若手監督ってこんなのばっか? まあC級ホラーと割り切って見れば、普通に楽しめるけど・・・。それにしても、ハリウッド進出もしている結構なスターのクセして、製作まで務めて嬉々としてキ○ガイ使用人を演じているヴァンサン・カッセルは、一体どこを目指しているのだろう?(★☆)
2008年2月24日 『インランド・エンパイア』(2006年米)を見ました。
 デヴィッド・リンチ監督。曰くのある“呪われた映画”の撮影に臨む女優の周囲で、奇妙な出来事が相次いで・・・という、まるで『女優霊』のようなお話。リンチにしては珍しい、ストレートなホラーのような題材だけど、そこはやっぱりリンチ。劇中劇と妄想が現実と錯綜して描かれてる、奇妙奇天烈な映画なのだ。ほとんどシュールレアリズム。思いつくままに勝手にやってる感じ。ちょっと悪ノリが過ぎる気もするけど、センスがいいので結構楽しめます。上映時間180分の長尺なので、さすがにちょっとダレるところもあるけど・・・。オチでまとめに入って、わやくちゃになった物語に一応の解釈を与えてしまったところは余計かな? “呪われた映画”の撮影に臨んでいた映画女優が主人公だと思わせておいて、実は・・・。全ては“インランド・エンパイア=脳内の帝国”だったって言われてもねー。訳が分からないまま終わった方が面白かったのに・・・。終盤のホラー演出は結構サマになっていたので、リンチは真面目にホラーを撮っても面白いと思う。謎のピエロ男が怖い。(★★)
2008年2月6日 『ロケットマン』(2006年タイ)を見ました。
 監督はチャルーム・ウォンピムという人。むかしむかし・・・、タイの田舎に、ロケット花火とムエタイを駆使して悪者をやっつけるヒーローがいた!・・・というようなお話。監督、主演は『七人のマッハ!』のコンビ。あの映画、そんなに面白くも無かったけど、アクションにはそれなりに見るものがあったし、演出は『マッハ!』や『トム・ヤン・クン』より洗練されてる感があったので、今回はレベルアップしてることを期待して見てみた次第。・・・だけど、むしろレベル落ちてた。脚本がいい加減なのは、いつものタイ映画だけど、活劇映画に不可欠な爽快感が薄いのは致命的。妖術を操る強敵相手に苦戦するところでは、先の展開に期待をもたせるけど、それを打ち破る方法が、自分も妖術でパワーアップ!という安直なものだったのにはガッカリ。これでカタルシスが生まれるか? 「花火を使う」という設定をもっと生かせよ。まあ一応決着は花火でつけてたけど・・・。この映画の主人公、最初っから花火を使ってるけど、普通だったら、最初は腕っ節の強さだけで悪者を成敗してたのが、妖術使いに惨敗して、試行錯誤の結果、花火を使って敵を打ち破る「ロケットマン」になる!ってやった方が盛り上がるよね。主演のダン・チューポンのムエタイが様になってなかったのもイタイ。『マッハ!』や『トム・ヤン・クン』が世界的なセールスに成功したから、二匹目のドジョウを狙ったんだろうけど、彼ってスタントマンとしては凄いし、テコンドーみたいな回転系の足技は上手いけど、ムエタイはそれほどでもないよね。まあそもそも子供向けなんだろうけど(その割には“処女の月経”ネタで笑わそうとしてたりするけど・・・)、もう少し真剣に作ってほしかったなあ。普通に撮れば普通に面白くなりそうな素材と題材なのに、その「普通」にも全然届かなった感じ。(★☆)

『タルチュフ』(1925年独)を見ました。
 F・W・ムルナウ監督。モリエールの「タルチュフ」の忠実な映画化じゃなくて、映画中映画として「タルチュフ」が登場する教訓劇。舞台は現代(製作当時)、偽善者の家政婦に騙されているおじいさんの目を覚まさせようと、孫が偽善者「タルチュフ」を描いた映画を上映するという、なんだか奇妙な構成・・・。映画中映画の場面は舞台劇のようなオールドスタイル、現代の場面は軽いコメディー・タッチでモダンに演出されているんだけど、今見ると、このモダンをキドってるところが逆にダサく見えてしまう。まあ、主人公がいきなりカメラに向かって話しかけてくるところには驚かされたけど。映画中映画の「タルチュフ」の密度の濃さと迫力はさすがのムルナウなので、この部分だけで一本の映画にした方が、現代の観客には受けが良かったと思う。25年作とは思えないほどの大胆なエロスは見応えあり。(★★)
2008年2月5日 『ブラックブック』(2006年オランダ/独/英/ベルギー)を見ました。
 ポール・ヴァーホーヴェン監督。ナチスドイツ統治下のオランダを舞台にした戦争秘譚。ナチに家族を殺されたユダヤ人女性がレジスタンスに身を投じて・・・というお話。これはオススメ! サスペンスあり、アクションあり、ラヴストーリーありの一級の娯楽作。それでいて、ハリウッド映画にはマネのできない、厳しい視点もあり。後腐れのない結末なんて期待できない。「苦しみに終わりはないの!?」という主人公のセリフが印象的。歴史の悪循環を描いたラストを見ると、「そう、苦しみに終わりはない」と言っているように聞こえてくる・・・。あくまでもエンターテイメントに徹するヴァーホーヴェン流演出はテンポが良過ぎて、特に終盤では、物語の重厚さ、情感を削いでいる感さえありましたが、これは同時に長所でもあるので、一概には悪いとは言えず・・・。芸術性と娯楽性の両立というのは難しいですね。(★★☆)

『スコーピオ・ライジング』(1964年米)を見ました。
 ケネス・アンガー監督の代表作。輸入盤を購入したので、久々に見てみた次第(*「The Films Of Kenneth Anger Vol. 2」に収録)。デヴィッド・リンチにインスピレーションを与えたことで有名な作品。「ブルーベルベット」始めとするオールドナンバーの使い方が印象的・・・。60年代ピンナップ風にいちゃんが黙々とバイクの手入れをする様が舐めるようなカメラワークで描かれるので、「マシン=肉体」的な感覚を伝えるフェティッシュ且つミニマルな映画かと思ってしまうのですが、バイカーたちが街に繰り出し始める辺りから、世界観に広がりと同時に奥行きが生じます。暴走族の乱痴気騒ぎの合間合間に挿入されるのは、キリストを描いた寸劇に、マーロン・ブランド主演の『乱暴者』・・・。イコンとしてのマーロン・ブランド、イコンとしてのヘルズ・エンジェルズ・・・。洗練からは程遠く、発想も幼稚だけど、悪魔的で魅惑的なイメージ。(★★☆)
2008年2月3日 『ザ・ケイヴ』(2005年米)を見ました。
 監督はオラントゥンデ・オスサンミという人。洞窟探検に出かけた若者グループが不慮の事故(?)によって閉じ込められて・・・という『ディセント』みたいなお話。全く無名だし、全然知らない映画だったのですが、チャンネル変えてる時に偶然映って、なんだか面白そうだったので、後日、最初から見てみた次第。・・・でも、結論から言うと、チャンネル変えてる時に偶然見た、不慮の事故(?)が起こって洞窟に閉じ込められてしまうシーンが一番面白くて、それ以外はあんまりパっとしなかった。低予算を誤魔化そうとしてたのかも知れないけど、映像に走る過ぎてるきらいがある。ちょっとウザったいPV調。アメリカのホラーにしては珍しくシリアス調で、その点は悪くなかったけど、オチは微妙・・・。現実にもありそうな、説得力のあるオチにしたかったんだろうけど、なんか頭が固い感じで、見ていてワクワクできなかった。だからと言って、別に伝えたいテーマがあるようでもないし・・・(★☆)
2008年2月2日 『湖のランスロ』(1974年仏/伊)を見ました。
 ロベール・ブレッソン監督。「円卓の騎士」の一人、「ランスロ(ランスロット)」の伝説に題材を取ったコスチュームプレイ。冒頭のスプラッター描写にまず唖然・・・。「鮮烈」とか「過激」というのじゃなくて、あまりにも無味乾燥。即物的描写を重んじるブレッソンらしい。リアリティーがあるんだか無いんだか、よく分からないような時代考証もステキ。切るところは切って、生かすところは生かす「モンタージュ」を行っているのですな。ブレッソン念願の企画だったそうですが、思い入れが先に立ってしまったのか、正直言って完成度はあまり高くないです。でも、人間の性(さが)と業を描いた物語、そして、あまりにも無味乾燥に描かれる、ラストの悲劇は印象に残ります。(★★☆)

『たぶん悪魔が』(1977年仏)を見ました。
 ロベール・ブレッソン監督。あの『ラルジャン』が優しく思えてしまうほど、暗くて絶望的な映画・・・。一人の青年が、人生に絶望して、自ら死を選ぶまでの姿が、感傷を排した冷徹な筆致で描かれます。物語はセンセーショナルですが、観客を扇情しようなんて気は毛頭ない。淡々と綴られる絶望の散文・・・。いや、希望を感じさせる瞬間が無いわけではないのです。ただ、全てのものが、留まることなく通り過ぎていく・・・。そう言えば、この映画は青年の死を告げる新聞の報道から始まっていました。この映画の中に映し出されていたのは、走馬灯のようなものだったのかも知れません。好きか嫌いかと言われれば微妙ですが、心に刻まれる映画です。(★★★)

 2008年の1月は新しく4本の映画を見ました。
▼今月のアタリ
 これと言って特に無し。
▼次点
『言葉なき隣人』(2006年米)
2008年1月26日 『フロストバイト』(2006年スウェーデン)を見ました。
 監督はアンダシュ・バンケという人。「寒さに噛まれる」と書いて「凍傷」の意。なんとも気の利いたタイトルがついたスウェーデン産のヴァンパイア映画。「白夜」の反対で、一ヶ月間も夜が明けない「極夜」の田舎町が舞台ということで、寒々とした空気を味わわせてくれる本格ホラーかと思ったのですが、これがアメリカ映画志向のライトなティーン向けホラーでした。う〜む、拍子抜け。でも、これはこれで悪くないです。吸血鬼化しつつある青年が、彼女の家に行ったら親が牧師! 握手するだけで汗タラタラで、終いにゃニンニク入り料理を食わされてゲロをビシャー!・・とか、クダらないながらも笑わせてくれます。吸血鬼になったら動物の言葉が分かるようになって、犬とかが話しかけてくるというのも面白い。まーでも、全体的にテンポが悪いかな。事件の真相を明かすまでに結構引っ張るけど、観客がとっくに気付いているような事実に、登場人物がなかなか気付かないというのはダルい(←よくあるけど)。『ブレインデッド』の影響を受けていると思しきクライマックスの惨劇も、あまりテンション上がらなかった。そもそも「極夜」という設定が、ほとんど生かされていないような・・・。オイシイ設定なのになー。まー、ノンビリした雰囲気は狙いでもあるんだろうし、余韻を残すオチも含めて嫌いじゃないです。「スウェーデン映画独特の・・・」とか「新機軸のホラー」とかいうのを期待しなければ、そこそこ楽しめるのでは?(★★)
2008年1月16日 『グッバイ・ベイビー』(2006年米)を見ました。
 アメリカの人気TVシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」の第二シーズンからジョン・カーペンター監督作。堕胎手術を行っている産婦人科病院に、ある少女がやってくる。彼女は赤ちゃんを堕してほしいと訴えるが、すぐに少女の父親が現れて、娘を返せと騒ぎ出す。彼は、娘のお腹に宿っているのは「神の子」だと信じているのだが・・・
 論議を醸すことを狙ったのか、かなり挑発的な内容の作品。堕胎反対のキリスト教原理主義者が銃を持って病院を襲撃したりとか・・・。日本だったらギャグになるかも知れないけど、アメリカじゃリアルよ。実際に原理主義者が産婦人科病院を爆破する事件が起きたりしてるから。暴力描写もカーペンター作品の中では、かなりドギツイ方。そんなわけでテーマ性のある深刻な映画になりそうなところですが、割合と曖昧なので、言いたいことはよく分からない。結局、色んな配慮が働いたのかな? 盛り上がらないオチにもガッカリ。色々と面白くなりそうな要素が詰め込んであるんだけど、どれも中途半端に終わってしまった感じです。(★★)

『ヴァレリーの誘惑』(2006年米)を見ました。
 アメリカの人気TVシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」の第二シーズンから。監督は、本シリーズのメインプロデューサーでもあるミック・ギャリス。作家志望の人間に格安で部屋を貸すアパートに越してきた主人公。彼は、廊下の階段の上で、謎の女幽霊に出会う。ヴァレリーと名乗るその幽霊は、何者かの影に酷く怯えているのだが・・・
 クライヴ・バーカーの原作らしく、ホラーと言うよりもファンタジーっぽい内容。「読むスプラッター」とか紹介されていたから誤解されてるけど、彼の作品ってかなりファンタジー寄りなのよね。割とありがちだけど、そこそこ興味を引くお話。・・・でも、語り口が冗長なので、見ていて結構ダルくなる。オチが早々に読めてしまうのもなんだかなー。まーでも、こんなものかな。TV番組としては及第点だと思います。(★★)

『言葉なき隣人』(2006年米)を見ました。
 アメリカの人気TVシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」の第二シーズンからジョン・ランディス監督作。長閑な住宅街に越してきた若夫婦のお隣さんは、良き家庭人で、近所付き合いもいいオッサン。しかし彼の家族とは、彼が誘拐してきた被害者たちの、物言わぬガイコツだったのだ!
 ダークなユーモアの効いたお話で、これは結構面白い。ガイコツに囲まれながら、妄想の中で幸せな家族像を展開してるとことか、皮肉っぽくてイイですね。妄想オヤジの頭の中に合わせたのか、妙に明るい軽いノリで進むところもマル。オチも面白い(←もう少しヴィジュアル的にパンチが欲しかったとは思うけど)ですし、第二シーズンの中ではオススメのエピソードです。
 ところで邦題の「言葉なき隣人」というのは微妙。オッサンの家族のガイコツのことを指しているんだろうけど、それは物語の主眼ではないでしょ。原題通り「Family」の方が、皮肉が効いてて良かったと思う。(★★☆)


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