ポリス・ストーリー/香港国際警察
警察故事 / The Police Story / Jackie Chan's Police Story 1985年 香港
スタッフ/キャスト
製作: レイモンド・チョウ
レナード・ホー
ウィリー・チェン
監督: ジャッキー・チェン
脚本: エドワード・タン
撮影: 張耀祖
音楽: マイケル・ライ
原案: ジャッキー・チェン
 
出演: ジャッキー・チェン
ブリジット・リン
マギー・チャン
トン・ピョウ
106分
ストーリー
 香港警察はその威信を懸け、犯罪組織の大物チョウを逮捕しようとしていた。自称実業家のチョウの犯罪を現行犯で押さえるため、麻薬の取引が行われるバラックの村に大勢の警官が配置される。しかし逮捕を目前にして警察の存在が敵方に露見! 市民を巻き込んで激しい銃撃戦が始まってしまう!
 ドサクサに紛れて逃走を図ったチョウ一味を追いかけたのは熱血漢のチャン刑事(ジャッキー・チェン)だった。チョウ一味が乗っ取ったバスを追いかけたチャンは、遂にはチョウを追い詰める。チョウは札束の入ったスーツケースを渡して買収を図ろうとしたが、チャンは突きつけた銃口を逸らそうとはしなかった。

 チョウを逮捕したチャンは一躍ヒーローにまつり上げられる。警官募集のCMにも起用されてすっかりご満悦のチャン。しかし、そんなチャンをチョウが許すはずはなかった。チョウは優秀な弁護士を使って法廷でチャンに赤っ恥をかかせた上、無罪を勝ち取る。そして謀略を巡らせると、チャンに警官殺しの汚名を着せてしまったのだ!

 警察からも終われる身となったチャンは、今や孤立無縁だ。しかし、そんな彼に絶好のチャンスが訪れる! チョウの秘書兼愛人の女サリーナが、組織の犯罪を暴く秘密書類を持ち出してチョウの元から逃げ出したのだ。直ぐに彼女の後を追ったチョウ一味は、デパートの中でサリーナを追い詰める。そこに組織の動きを見張っていたチャンが駆けつける! 今、激しい戦いの火蓋が切って落とされた!!
レビュー
 さあて今回レビューするのは、アジアが生んだスーパースター、ジャッキー・チェン監督・主演のアクション大作『ポリス・ストーリー』。言わずと知れたジャッキーの代表作です。
 ジャッキー映画に慣れ親しんで育った人からすれば、何を今更という話になってしまうかとは思いますが、どうか我慢してお付き合い下さい。私もジャッキー映画で育った人間。思いのたけを吐露したい気持ちがありますので・・・

 私が初めてこの映画を見たのは十才にも満たなかった幼少の砌。もう衝撃的でした・・・。殴られても、蹴られても・・・、走行中のバスから叩き落とされても・・・、高い所から突き落されても、何度となく立ち上がって敵に立ち向かっていくジャッキー。・・・シビレましたね。その溢れんばかりのエネルギーに圧倒されてしまったのです。
 別にこれが最初に見たジャッキー映画だったわけではありません。当時(80年代)は、香港映画、カンフー映画、中でもジャッキー映画はブームになっていたので、『酔拳』や『笑拳』、『少林寺木人拳』、マイナーどころでば『カンニングモンキー 天中拳』などがテレビを賑わしていました。でも、この映画は特別でした。ジャッキー映画にしてはシリアスな内容だったせいもあるかと思いますが、やっぱり命懸けのスタントに魅了されてしまったのでしょう。階段を転がってみたり、高い所から落ちてみたり、ジャッキーのマネをしてケガをしたことは数知れず(笑)。今でもフェンスを見たら跳び越えたくなったり、高い塀を見たらよじ登ったりしたくなるのはジャッキーの影響です。(←アホか)
 最後の戦いが行われるのがデパートだというのもイイですね。売り場の中をアスレチックさながらに縦横無尽に駆け回るジャッキー。暴れたい放題! 壊したい放題! デパートで好き放題遊び回るのって、子供にとっての一つの夢じゃありません? 理性のある大人が「やめろ」と言って引き止めても、悪いヤツのことは容赦なくぶん殴るし、ジャッキーってホント子供の視点に立ってます。健全な男の子なら憧れて当然ですね。

 ・・・と、まあ当時はそんな感じで純粋に憧れていたのですが、今見るとまた別の感慨が湧き起こってきます。下手すれば死んでてもおかしくほど無茶なスタント・・・。これがただの若気の至りとは思えない。この異常とも言える情熱はどこから来たのか? 私には、再三に渡るハリウッド進出の失敗が、ジャッキーの映画作りに影響を及ぼしたように思えてならないのです。
 最近遅ればせながらハリウッドでも受け入れられたジャッキーですが、彼は遥か昔、80年代初頭からハリウッド進出を試みていました。監督作を立て続けにヒットさせ、肉体的にも最高潮を迎えていた、ジャッキーの全盛期ですね。既にアジアでの地位は不動のものとしていました。しかし、当時のハリウッドは今にも増して閉鎖的で、アジア地区での興行収入も現在ほど重んじられていなかったため、アジア人が主役の映画なんて考えられない状況でした(←今でもアメリカ人とコンビを組んだバディー・ムービーという形でしか受け入れられていませんが・・・)。「アジア一のスーパースター」という肩書きも、世界に冠たるハリウッドにおいては、むしろ嘲笑の対象だったのです。
 ジャッキーは思ったことでしょう。「お前らは何様なんだ? ハリウッド映画はそんなに偉いのか!?」と。そして作られたのが、この映画だったのです。

 この映画の主人公であるチャン刑事は、殴られても、蹴られても・・・、走行中のバスから叩き落とされても・・・、高い所から突き落されても、何度となく立ち上がり、むしろ闘志を激しくして敵に立ち向かっていきます。その姿が、再三に渡るハリウッド進出の失敗にもめげずに映画制作に情熱を燃やしていたジャッキーの姿と重なって見えると言ったら言い過ぎでしょうか? チャン刑事が戦っていた「巨大な敵」とは、実はハリウッド映画のことだったんじゃありません?(笑)
 まあそれは冗談としても、当時のジャッキーが「ハリウッド映画がなんぼのもんじゃい! オレは香港でもっとスゴイ映画を作ってやるぞ!」という心境になっていたであろうことは憶測できます。その発奮、その気概が、この映画を稀に見る傑作に仕立てたのでしょう。
 ハリウッド映画には絶対あり得ない、主演俳優自ら演じる危険なスタント。ジャッキーだけでなく、成龍チームのスタントは、全てアメリカ映画を遥かに超えたレベルに達していました。「アメリカ映画にこれができるか! やれるものならやってみろ!」、そう聞こえてくるかのようです

 当時の香港映画には珍しい、大人数を動員した激しい銃撃戦を撮っていることからも、ハリウッド映画に対する対抗意識がうががえます。・・・正直言って、撃たれた人が高い所から落ちたりするスタントこそあれど、ガンアクションそのものには迫力がなく、日本の刑事ドラマ程度の出来にしかなっていないのですが、犯人一味が車で逃げ出す段になって、映画は突如として緊張感を増します。逃げ場を塞がれた犯人は、なんと車で村に突っ込み、建物をなぎ倒しながら逃げるのです! ジャッキーもそれを追いかけ車で村に突っ込みます! ・・・凄いですね。よくこんなことを思い付きましたね。ハリウッド映画の御家芸である「カーアクション」というものを香港映画流の過激さで換骨奪胎しています。
 バスを乗っ取って逃げた犯人をジャッキーが走って追いかけるというのもハリウッド映画に対するアンチテーゼですね。アメリカ映画だったら当然車で追いかけてるところでしょう。走って車を追いかけるなんてナンセンスです。でも、ジャッキーは生身で追いかけ、そして追いつきます。この肉体! このエネルギー!
 映画におけるアクションというものが総じて機械化、大型化されゆく中、ジャッキーは映画をバスター・キートンの時代に引き戻し、当たり前だが忘れられていること、映画の根源的な歓びが「肉体の躍動」にあるということを思い出させてくれます。

 その後も所々に見せ場を挟みながら話は進んでいくのですが、やっぱりクライマックスはラストに用意されたデパートでの死闘でしょう。ジャッキー自身が自分のスタントやアクションを解説する『ジャッキー・チェン マイ・スタント』を見ていただければ分かりますが、ジャッキーは、攻撃する前から受身をとっているようなわざとらしい殺陣を嫌っていて、この映画でもリアルで激しい格闘を演出しようとしています。カンフー映画のような綺麗な型ではなく、ケンカ上等のラフファイトです。当時こんなにも肘打ちを多用する映画は珍しかったでしょう。頭突きや凶器攻撃まで飛び出します。しかし、統制された乱雑さとでも言うか、激しさの中にもしっかりとした流れがあるので、ほとんど音楽さえ感じられるほどなのです。
 ジャッキーが一人で四人を相手に戦う場面は、数あるジャッキー映画の中でもトップクラスの出来でしょう。殴っては殴られ、足を蹴られ、膝をつきながらも応戦し、受けに受けた後でここぞという機に攻勢に出て連続して四人を打ち倒すまでが、絶妙のリズムで綴られています。ジャッキーは編集にもコダワリを持っているんですよね。ジャッキーは自分専用の編集台を持っていて、自分でフィルムにハサミを入れることもあるそうです。これはジャッキーが、単なる「無謀なスタントマン」ではなく、一人の「映画人」であることを物語るエピソード。

 ところでこの映画の終わり方にはバージョン違いが存在することをご存知ですか? 怒りを爆発させた主人公が仲間の制止も振り切らんばかりに敵に向かっていこうとするところでストップモーションになって、そのままエンドロールに突入。私ぐらいから後の世代の人間が親しんできた『ポリス・ストーリー』はこれだと思います。テレビ放送もレンタルビデオもDVDもみんなこうなっていました。
 対して別バージョンでは、上記した場面まで展開した後、主人公がデパートから出てきて、仲間に伴われて連行されていくまでが描かれているのです。85年の日本初公開版がこれだったそうです。ソフト化されていないため現在では見ることが難しいですが、私は先頃NHKの「衛星映画劇場」で目にすることができました(*求む再放送!)。本国香港でもソフト化されていないので、他の多くのジャッキー映画と同じように日本独自のバージョンだったとも考えられます。もしくは香港でも一部地域で上映されたか・・・
 年配のファンの方が日本初公開版に愛着があるのも分かりますが、だからと言ってストップモーションで終わるバージョンのことを否定する意見には同意しかねます。あれは香港映画によくあるような尻切れトンボな終わり方などではありません。あのストップモーションは、この映画の魅力を凝縮しています。溢れんばかりのエネルギー、その躍動の瞬間を永遠に留めんとしているかのようであり、感動的ですらあります。多くの観客の心の中に、あの瞬間のジャッキーの姿が永遠に刻まれたことでしょう。
 そしてあのエンディング曲・・・、あのエンディング・ソングが聴こえてくる!!

  サンティモー ランホンチー ヘンチョンヤサンティー♪

 ジャッキー自身が歌っていたあの主題歌。幼き日に口ずさんでいたあの歌の詞の意味を、私は20年目にして初めて知ることになりました。以下はその「一番」の日本語訳です。

  誇りある男は全力でぶつかる
  正義のためなら血の汗も流す
  命をかける! それがヒーローだ!
  俺の魂は獅子のように強い
  いざ進め! 失うことを恐れずに
  前を向け! 天に届く夢を持て!

 なんて陳腐な歌詞なんだ! でも、なんて心に響いてくるんだ!! ジャッキーは特別な存在です。本物のヒーローです。今でも、いや今だからこそ、私はジャッキーに励まされる思いがします。
映画の印象
/
降水確率10%
勝手に総評
1 5 10
私が愛している度
私が評価している度
一般人気度
マニア人気度
オススメ度
ソフト
 DVDはまずジェネオンから発売され、その商品が廃盤になった後、デジタル・ニューマスターの新商品がユニバーサルから発売されました。
 ジェネオンのDVDは、香港の会社から多言語字幕付で発売されていた商品をジャケットだけ変えて出したものです。画質は粗く、音質も悪かったです。まあ80年代の香港映画のクオリティーはだいたいこんなものなので、それほど気にはなりませんでしたが・・・
 一方のユニバーサルのDVDは、香港のフォーチュンスター社が制作したデジタル・ニューマスターを使用した米ユニバーサルの商品のマイナーチェンジ版です。当然画質は向上しているので、旧盤を持っている人でも購入する価値はあると思います。旧盤にはなかった日本語吹き替え版も収録されているので、吹き替えファンは要注目でしょう。音質に関しては、元々悪かったものをデジタル処理で強引にドルビー化しているので、逆に音質の悪さが目立っている気がしましたが・・・(^^;

 ユニバーサル盤の特典は以下の通り。
・予告編集(オリジナル劇場予告編、ビデオ用予告編)
・フォト・ギャラリー
・NGシーン集
・『ポリス・ストーリー2/九龍の眼』予告編
・『ポリス・ストーリー3』予告編

 ジャッキー・ファンなら「NGシーン集」というのが気になってしまいますね。でも、その中身は「危険なスタントを自分でやるジャッキー」というのをアメリカ人に紹介するために作られた宣伝映像で、特に目新しい映像もなく、大して面白いものではありませんでした。これを「NGシーン集」という名目で売り込むのは問題ありますね。商売キタナイよ。
(2006/3/12)

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