メドゥーサ・タッチ/恐怖の魔力
The Medusa Touch 1978年 イギリス/フランス
フランス版ポスター
スタッフ/キャスト
製作: アン・V・コーツ
ジャック・ゴールド
製作補: デニス・ホルト
製作総指揮: アーノン・ミルチャン
監督: ジャック・ゴールド
原作: ピーター・ヴァン・グリーナウェイ
脚本: ジョン・ブライリー
撮影: アーサー・イベットソン
音楽: マイケル・J・ルイス
 
出演: リチャード・バートン
リー・レミック
リノ・ヴァンチュラ
ハリー・アンドリュース
アラン・バデル
マリー=クリスティーヌ・バロー
ジェレミー・ブレット
110分
ストーリー
 作家のジョン・モーラーという男が、ロンドンにあるアパートの自室で、何者かに襲われ、意識不明の重体に陥った。容疑者は不明。ロンドン市警に協力して捜査に加わることになった、フランスの敏腕刑事ブルネルは、被害者の人となりを調べるために、彼が通っていた精神科の女医、ゾンフェルドを訪ねるが、彼女の口から奇妙な話を聞かされる。モーラーは、自分に災いを起こす能力があると信じていたというのだ。その能力によって幼き頃より多くの人を不幸に陥れてきたというモーラーの話を、ゾンフェルドは単なる妄想だと言うが、ブルネルは、何か引っ掛かるものを覚える。医師によると、モーラーの脳波は異常な数値を示しているという・・・
 ローマ法王訪英のニュースが世間を賑わす中、ブルネルは言い知れぬ不安を覚える。今、何かが起ころうとしている!?
レビュー
 70年代を代表するスリラー映画の傑作。日本では劇場未公開に終わりながらも、テレビ放映で人気を博し、「幻の傑作」と言われていた一本。こんな風な物言いって、マイナーな旧作を売り込む時の定番ではありますが、これは本物。すんごい面白いのだ。

 出演陣は、エリザベス・テイラーとの痴話話の方が有名だけど、それなりに名優でもあるリチャード・バートン、『酒とバラの日々』のような名作もあるけど、『オーメン』のかわいそうなお母さん役も印象的なリー・レミック、それに、もちろんフランス人刑事役で登場の、フィルムノワールの顔、リノ・ヴァンチュラと、ちょっと渋めだけど、なかなか豪華。予算も思いのほか掛けられていて、スペクタクルな描写も見応え充分。なんでこれが未公開なんだろ? 配給会社の人が、刑事映画然としたクールな語り口を、「地味」だと勘違いしてしまったのかなあ? それとも、明確な解決を見せないまま終わる物語を、一般向きじゃないと判断してしまったのかしら? ホント、センスが無い。
 『オーメン』のリー・レミックを出してることだし、オカルト・ブームに乗っかった企画ではあったんだろうけど、その独創性は、ブームの牽引役となった諸作品に勝るとも劣らないものがあり、ショッカーな描写をエスカレートさせていくことだけに心血を注いでいた凡百の追従作とは一線を画しています。まあ、配給会社の、そして大方の観客の期待するものは、往々にしてそうした追従作の方であり、本作の持つ独創性は、寧ろ歓迎されないものだったのかも知れませんが・・・
 本作の監督であるジャック・ゴールドは、これ以後、ほとんどテレビ映画しか手掛けていない人で、正直言って大した監督じゃないんだと思いますが、本作での仕事ぶりは、堅実で、評価できます。脚本がイイから、これでイイんですよね(もちろん原作もイイんでしょう)。正攻法で料理すれば、充分に生きてくる素材です。

 オープニングから引き込まれます。アパートの一室で起こる殺人未遂事件。犯人は誰なのか? そして動機は? 出だしは王道ミステリー調。刑事役が板についているリノ・ヴァンチュラの主演なだけに、風格は充分です。でも、意識不明になっている被害者の男、モーラーの過去が紐解かれていくにつれて、映画はだんだんと不気味な空気を帯びてきます。彼は、かかりつけの精神科医に、自分には、災いを引き起こす超能力(念動力)があると告白していたというのです。回想形式で描かれる様々な事件。両親を襲った自動車事故、寄宿学校の火事・・・。でも、これらは全て、作家であるモーラーの口から語られていることなので、その真相は漠として知れません。狂った男の妄想なのかも知れないし、作家の生み出したフィクションなのかも知れない。また、たとえモーラーが事件を起こしていたのだとしても、超能力などではなく、ごくごく普通の物理的手段―車に細工するとか、マッチで火をつけるとか―を用いていたのではないか? つまり彼は、単なる凶悪な犯罪者なのかも知れない・・・
 こうした疑念の数々を、観客は、リノ・ヴァンチュラ扮する刑事と共有することになるわけですが、この映画の偉いところは、ただ観客をはぐらかし、翻弄するだけじゃなくて、ドカンと一発かましてくれるところ。いや、一発どころか二発か三発。大掛かりなスペクタクル描写はもちろんですが、絶望的な破滅を予期させる、世紀末的なラストが秀逸です。脳波計に映し出される波形の乱れだけで、観客に戦慄を覚えさせます。見せなくていいものまで見せる今時の映画やテレビに慣らされた鈍感な観客だと、今一つピンと来ないかも知れませんが、ホントにクールです! このシーンがあるだけでも、本作は語り草になるべき傑作だと言えるでしょう。

 以下、ちょっとネタばれ有り。

 謎の男モーラーの正体は、最後までハッキリとは明かされないのですが、大方の意見は、“破壊的な思想を持ったサタニスト”ということで一致しています。ローマ法王の暗殺を企てたりしてますしね。制作者もそのつもりで撮っていたのでしょう。でも、私は、また別の見方もできると思います。彼は、自らの意思で災いを起こしていたのではなく、ただ未来に起こる災いを予知していただけなのではないか? いや、予知という言い方は正確じゃないな。まるで、彼自身が災害そのものであるかのような・・・、人類が生み出した災禍、それを映す鏡であるかのような・・・。モーラーが引き起こしたとされる事故、災いが、「自動車」、「飛行機」、そして「******」と、近代の文明、科学技術の発展の歴史をなぞるかの如くに展開されていくところが思わせ振りです。人類が生み出した技術、力が、だんだんと大きくなっていって、遂には自分たちにも制御できないほど巨大なものとなり、絶望的な破滅をもたらす・・・、そんな啓示が込められているようにも思えます。いや、そこまで言ったら言い過ぎかも知れませんが、そんなことまで考えさせてしまうくらい、あのラスト・シーンは印象的なのです。
映画の印象
/
降水確率0%
勝手に総評
1 5 10
私が愛している度
私が評価している度
一般人気度
マニア人気度
オススメ度
ソフト
 DVDは2004年12月に紀伊國屋書店より発売されました。B級の佳作、傑作を紹介する「ENTERTAINMENT COLLECTION SILVER」というレーベルからの一枚。映像特典はオリジナル劇場予告編のみですが、クオリティーは良好です。

(2007/6/9)

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