| アイアン・ジャイアント | |
| The Iron Giant | 1999年 アメリカ |
|
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ソ連が世界初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功し、冷戦の脅威が頭をかすめる1950年代のアメリカ・・・、メイン州の片田舎に暮らすホーガス少年は、宇宙から飛来した謎の物体と遭遇する。それは、山のようにそびえ立つ、巨大なロボットだった! 見た目はイカツイが、心は子供のように純粋なロボット「ジャイアント」とホーガス少年はすっかり仲良しになる・・・、しかし、ロボットの存在を嗅ぎつけたアメリカ政府が、軍隊を送り込んできた! ホーガス少年とジャイアントの運命やいかに!? |
|
| 少年と巨大ロボットの心の交流を描いたワーナー製作の長編アニメーション映画。公開当時そこそこ話題を呼んだ映画なので、何を今更と言われそうですが、やっぱり面白いもん! 最近、なんとなしにDVDを再見してたら、「もうだいぶ経ってるし、さすがに感動しないよなあ」と思っていたのに、相変わらずジ〜〜〜ンときちゃった! 不朽の名作である。 この映画をケチョンケチョンにケナす人がいるのは、ちょっと信じられない。そういう人は、大抵、日本のアニメと比べてどうこう言ってるけど、ちょっとズレてるとしか思えない。確かにこの映画には「萌えキャラ」とかいないよ。先鋭的なデザインのロボットも登場しない。話を無駄に観念的にして、小難しく理屈をコネるようなこともない。古臭いタッチのダサいキャラに、古臭いタッチのダサいロボ・・・、ストーリーも古典的でストレートです。でも、それは、この映画がアニメーションとして不完全だとする証拠にはなりません。日本のアニメ、“日本的”なアニメだけしかアニメとして認めない狭い了見が働いているとしか思えません。まるで、「アメリカの野球(ベースボール)が一番だ!」と意固地になって、よその国に不利な判定をしまくったWBCの審判のようだ。 『アイアン・ジャイアント』は、完成された映画です。絵が古臭いのは、1950年代という時代性を表現しようとしているから。安易な見た目のアピールより、ストーリーテリングを重視した結果です。実は技術力だって高いんですよ。背景やロボは3Dで作ってるのに、トゥーンシェーディングを施して、わざと2Dっぽく見せてるんです。構成も緻密。ストーリーの脈絡を大事にして、きちんと布石を敷いた後で展開を作ってます(←当たり前だけど大切なこと)。多くの日本のアニメが、オタク的記号をちりばめることばかりに躍起になって、「アニメ」ではあっても「映画」とは呼べないものになっているのとは対照的です。(ちなみに、諸外国では、「Anime」は「日本のアニメ」を指す言葉として用いられ、いわゆるアニメの総称である「Animation」という単語とは区別されています。私の勝手な定義ですが、「Animation」から「motion」、つまりmotion picture的要素=emotionを抜き取ったのが「Anime」なんだと思う。だから、真に優れたアニメのことは、「アニメ」ではなく「アニメーション」と呼びたいと思います。もちろん、日本にだって、「アニメ」だけじゃなく、たくさんの優れた「アニメーション」がありますよ。) 監督は誰なんだろうと調べたら、「ブラッド・バード」という人。この後、『Mr.インクレディブル』を撮ってる人だったんですね! 今更ながら感心。『Mr.インクレディブル』も面白かった。個人的にはピクサーの作品でベストだと思う。 この人、躍動感の表現に巧さがある。Mr.インクレディブルの息子が超能力に目覚めて疾走するシーンには目頭を熱くさせるものがあったけど、重量感たっぷりの「ジャイアント」の描写にも、その才能は十二分に生かされてます。重たいから一見のろいように思えるけど、巨大な物体がブワーっと前を横切ると、小さい人間からは、とっても速く見えるのだ。スケール感の表現が秀逸。3Dの効果も生かされてます。昔のジブリの特徴だった飛翔シーンじゃないけど、こういう躍動感の表現には、アニメーション独特の面白さがありますね。 この映画の中で、私が個人的に好きなのは、ロボットの頭の部分がちょこっと凹んでるところ。映画の中では明らかにされませんが、おそらくあのロボットの正体は、宇宙人が地球を侵略するために送り込んだ兵器なんだと思う。問答無用に破壊の限りを尽くす“殺戮兵器”です。それがどうして優しい心を持つに至ったかと言うと、地球に墜落した時、頭をぶつけて電子頭脳を壊してしまったから。つまり、彼の中に芽生えた人間性は、機械の故障として、「欠陥」として描かれているのです。面白い発想でしょ。「人間的な心」が「欠陥」だなんて・・・。「問題を抱えているからこそ、完璧じゃないからこそ人間なんだ」という作者のメッセージが読み取れるようだと言ったら、ちょっと勝手な深読み過ぎかな? まあ、とにかく、そんなジャイアントが悲惨な目に遭った末、怒りを爆発させて、殺戮兵器としての本性を覚醒させる時に、その頭の凹みがメコメコと直るところが印象的なんです。まるで彼の持っていた人間性が跡形も無く消えてしまったかのようで、涙無しには見られない悲しいシーンです。 主人公のホーガス少年や周囲の大人が、子供のような心を持ったジャイアントに色々なことを教えてあげるという作りになっているところがイイですね。この映画がターゲットにしている主要な観客、小さな子供にも、難しい事柄を分かり易く伝えくれます。死の重みや犠牲の精神、そして、この映画の一番のテーマである、「銃にはなるな! なりたい自分になれ!」という言葉。 ジャイアントだけではなく、人間もまた、心に内なる攻撃性を秘めています。しかし、それに身をまかせてはいけない。理想を持って生きよう。そんな単純な事柄を、この映画は強く訴えているのです。「ボク ジュウ ナラナイ、スーパーマン ナル」、子供の無邪気な発想の中に宿る高貴な理想、ジャイアントの言葉が心に響く! 『アイアン・ジャイアント』は、紛れもない傑作です。見た目の地味さが響いてか、日本はもちろん、本国アメリカでも興行的に振るわなかったようですが、ジワジワと人気が広がり、今では名作としての評価を確固たるものにしています。日本のallcinemaでもアメリカのIMDbでも評価高過ぎ! まさに映画の中のジャイアントのように、最初は不信がられていたけど、最後にはみんなに愛されるようになったのです。(^^)
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| DVDは2000年7月にワーナーから発売されました。「アイアン・ジャイアント 特別版」。特典は、オリジナル劇場予告編にメイキング、ミュージッククリップ、他にアートギャラリーなどを収録したDVD-ROMコンテンツが付いてます。圧縮があんまり上手くないのか、デジタル系のノイズが気になるところも若干見られましたが、まあ許容範囲内。廃価盤になっているのでオススメです。 特典を増量した2枚組の「アイアン・ジャイアント スペシャル・エディション」なる商品も2004年9月に発売されましたが、現在ではメーカー在庫切れのようです。 |
|
(2007/7/22)
関連作をチェック!
| 関連作品 | |