死霊のはらわた
The Evil Dead 1983年 アメリカ
スタッフ/キャスト
製作: ロバート・G・タパート
製作総指揮: ブルース・キャンベル
ロバート・G・タパート
サム・ライミ
監督: サム・ライミ
脚本: サム・ライミ
撮影: ティム・ファイロ
編集: ジョエル・コーエン
音楽: ジョセフ・ロドゥカ
 
出演: ブルース・キャンベル
エレン・サントワイズ
ベッツィ・ベイカー
ハル・デルリッチ
サラ・ヨーク
86分
ストーリー
 青年アッシュと彼の友人たち一行は、楽しい休日を過ごすために、山奥の貸し別荘に車で向かっていまいた。途中、急にハンドルが利かなくなったり、今にも崩れそうな古い橋の上で脱輪を起こしたり、危ない目にも遭いましたが、なんとか無事に山小屋に到着! でも、そこはとっても辺鄙で、尚且つとっても不気味な所だったのです!

 バタンッと開く地下室の扉! 地下室に何かいる!? 捜索にあたったリーダー格のスコットは、そこで小屋の持ち主のものと思われるテープレコーダーを見付けました。
 面白半分にテープを再生してみせるスコット。しかし、そこに吹き込まれていたのは、太古の死霊を呼び覚ます呪文、「死の書」の一節だったのです!! ガラガラガッシャーン!!
 落雷に打たれた木の枝がガラスを破って飛び込んできて、アッシュの妹シェリルはすっかりパニックに・・・、でも、それ以上は何も起きなかったのです。その時は・・・・・

 夜が更ける頃にはみんな適当にくつろいで、スコットは恋人のシェリーとイチャイチャし始めましたし、アッシュはアッシュで恋人のリンダにプロポーズしたりしていましたが、シェリルは恐怖に打ち震えていました。彼女は森を漂う不気味な気配に気付いていたのです。
 謎の呼び声に誘われて、止せばいいのに(^^;、一人、森の中に入っていってしまうシェリル。その時、彼女に迫る何者かが!? シュルシュルシュルシュル! 彼女を襲ったのは、まるで生命が宿ったかのように動き回る森の木々でした!!
 辛うじて山小屋まで逃げ返ったシェリルでしたが、彼女は半狂乱状態で、みんな話の要領を得ません。とりあえず家まで送り返そうと、車を走らせたアッシュでしたが、昼間渡ってきたあの橋が崩落してしまっていたのです!

 止むを得ず、シェリルを連れて山小屋へと引き返したアッシュ。みんな何事もなく夜が明ける事を祈っていましたが、遂に恐ろしい事態が! シェリルが死霊にとり憑かれて、凶暴な悪鬼と化してしまったのです!!
 ハイパワーで大暴れするシェリルを前にヘコヘコになってしまうアッシュたち。なんとか彼女を地下室に閉じ込めて危機を脱する事ができたのですが、リンダが足を怪我してしまい、彼らは小屋に足止めに・・・

 地下室から響いててくる恐ろしい笑い声・・・。この世ならぬ存在へと変貌してしまった友人の姿におののくシェリー。でも、そんな彼女自身が悪霊化して、恋人のスコットに襲いかかります! スコットは苦戦しますが、遂には斧でもって彼女をバラバラにしてしまうのでした・・・

 あの橋の他にも道はきっとあるはずだと言うスコットは、歩けないリンダを見捨てて、一人で逃げていってしまいます。絶望に打ちひしがれているアッシュに追い討ちをかけるように、今度はリンダが悪霊化! アッシュの孤独な戦いが始まります・・・。果たして彼は無事に朝を迎える事ができるのでしょうか?
レビュー
 今や『スパイダーマン』で売れっ子監督の仲間入りを果たしたサム・ライミのデビュー作。映画ファンの間に「スプラッター」という言葉を浸透させ、後続の映画に多大な影響を与えたエポックメイキングな作品です。


 『死霊のはらわた』と言ったら、いや、サム・ライミと言ったら、まず思い起こされるのは、あの“疾走する主観映像”。カメラが唸りを上げながら突っ走るアレ。アレは間違いなくライミのトレードマークとなる映像ですよね。
 実家がカメラ屋だったというライミは「シェイキーカム」と呼ばれるステディカムを自作して、あの画期的な映像を作り出しました。今となっては猫も杓子もこんな風にカメラを走らせている感がありますが、元はと言えば、みんなライミの影響なんですって。もちろん、ステディカムの大々的な活用はライミに端を発するものではありませんが、あそこまで徹底させて、あれほどまでにスピード感溢れる映像を作り出したのはライミが初めてでしょう。
 自主製作映画の可能性を示した『死霊のはらわた』は、映画青年たちのバイブルとして崇められるようになったので、彼らライミ世代の人間たちが映画制作者となった昨今、類似した映像が氾濫するようになったのは当然の事ですね。
 でも、ライミ自身はとても撮らせてもらえないようなメインストリームの映画の中にライミ・スタイルの映像が登場するのを見る度に、ライミ・ファンとしては複雑な思いを抱かずにいられなかったので、『スパイダーマン』がシリーズ揃って歴代興収記録(全米)のトップ10入りを果たし、ライミがヒットメーカーとしての地位を確立するにあたって、やっと時代がライミに追いついたかと、安堵しているところなのであります(笑)。
 一緒に映画を作っていた友人のコーエン兄弟はカンヌで大賞を獲るまでになっちゃうし、後から出てきたピーター・ジャクソンは、似たようなスプラッター映画でデビューしたクセに、『ロード・オブ・ザ・リング』みたいな大作を撮って大物監督の仲間入りを果たしちゃうし、ホント、ライミだけがとり残されてたような感がありましたからね(^^;

<サウンドデザイン>
 この『死霊のはらわた』、映像だけでなく、「音」も面白いんですよ。主人公の神経が昂ぶり出してからは、柱時計の振り子も「ガシャン! ガシャン!」と大音響で鳴り渡り、平屋造りの山小屋なのに、二階を歩く足音が「コツ、コツ、コツ」と聴こえてきたりとか、色んなサンプル音源から引っ張ってきたと思しき「教会の鐘の音」やらデパートのアナウンスの時に流れる「ピンポン音」やらが節操もなく鳴り響いて、一体どこまで本気でどこまでシャレなのか分からなくなってきてしまいます。ゾンビがムクッと起き上がるのに合わせて「べべ〜〜ん!!」なんてのには爆笑しちゃいますよね。

 普通、こういう自主映画って、映像だけで精一杯になって、音にまでは気が回らなくなってしまうものですが、本作は、寧ろ、音で魅せてくれます。恐怖映画であるにもかかわらず、ユーモアを前面に出して、コミカルな雰囲気を演出していて、まるでカートゥーンみたい。16ミリの安っぽい映像と素人芝居の痛々しさが、これで大分緩和されていると思います。ジョセフ・ロドゥカの音楽もクラシック風で結構聴かせてくれますし、音だけ聴いてるとなんだか立派な映画みたいでしょ?(笑)

 でも、一際印象的なのは、カメラの“動き”に対して効果音を付けているところでしょうね。カメラが主人公のアッシュの頭を後ろの方から舐めるように捉えていくと、そこに「フオオオオオオン」という効果音が被さり、カメラが天井に沿って移動しながら主人公を追いかける時も、梁が前を横切る度に「フオン!・・・フォンッ、フォンッ!」と風切る音が聴こえます。
<“動く”カメラ>
 通例、劇映画においては、カメラというものは、登場人物の主観となる場合を除き、その場に存在しないものとして扱われます。照明器具やマイクを画面に写さないのと同じ事ですね。つまり、カメラの存在を意識させないのが、映画演出の正道。当然、“存在しないもの”が動くのに音がするはずはありません。しかし、ライミはカメラの存在を意識させる事によって、カメラに登場人物と同等の存在感を与えてしまったのです!

 これは演出そのものの面白さを真正面から見せようとする姿勢の顕れですね。そういう意味で、彼の映画は「芸術」なんですよ(笑)。「被写体」以上に「筆致」を見せる作風だという事です。
 もちろん、それはポップでキュッチュで血まみれの芸術なのですが、ライミが“ホラー映画の”世界において、“ホラー映画の”様式をもって、作家主義を貫いていたという事は言えるでしょう。だからこそ、本作は映画狂たちから熱烈な支持を受け、まかり間違ってカンヌ映画祭でも上映されてしまったりしたのでしょうね。まあ、頽廃的なフランス人が単にスプラッターを好きだったせいかも知れませんが・・・(^^;

<デカダンと「ルネッサンス」>
 ありとあらゆる種類の映像が氾濫して、「ホラー」にかかわらず、映画全体が飽和状態に陥っていた70年代に台頭した「スプラッター」というものは、ある種のデカダン趣味だったのです。
 それは延々と繰り広げられる「反芻」と「嘔吐」の宴であり、文化的な廃退を意味するものでしたが、また、裏を返せば、その成熟の度合いを示すものでもありました。熟れたればこそ生じる腐敗です。だからこそ、「スプラッター」はアメリカ人よりも、寧ろ、ローマ帝国の末裔であるイタリア人たちの手によって大量に生み出される結果になったのでしょう。

 そんな経緯もあって、アメリカとユーロのスプラッター映画には質的な差異が見られるのですが、中でもライミの映画は特異な存在だと言えます。この『死霊のはらわた』は、「スプラッター映画の決定版」と言われ、同ジャンルを代表する作品として知られているわけですが、頽廃的と形容するには、あまりにもパワフルで、あまりにも“生き生き”とし過ぎているのです。
 それはもちろん、商売っ気のみで映画を作っていたイタリアの映画人と、若き情熱を滾らせていた映画青年とのモチベーションの差から来るものでもあったのでしょうが、もっと本質的な部分で、立脚しているスタンスに違いがあったのだと思います。ライミが盟友のブルース・キャンベルらと共に設立した映画会社の名前が「ルネッサンス・ピクチャーズ」であった事からも窺えるように、倦怠とデカダンの世情にあって、ライミが目指したものはある種の「復興」だったのです。

 ライミが目指していたものは、伝統的な映像表現の復興だったのでしょう。ライミの「カメラワーク」はヒッチコック譲りのものであり、その「アングル」はオーソン・ウェルズを模範とするものです。ちなみに、『死霊のはらわたII』のオープニングを飾ったのは「Rosebud」というレーベル名。そう、ウェルズの“バラのつぼみ”です。
 膨大なコミックの蔵書を所有し、生粋のコミック・マニアとして知られるライミの作品は、往々にして「コミック」との関連のみで語られる傾向にありますが、実の所、彼は生真面目なほど硬派な映画青年としての顔も持ち合わせていたのです。仮にも「古典」と言われるような映画を作り出す人間は、古典への目配せを忘れないものなのですね。だからこそ本作は、ホラーに限らず、多彩なジャンル映画に対して、これほどまでに影響を与える事になったのでしょう。


 ・・・と、まあ、色々と書き連ねてきたわけですが、やっぱりね、この映画の事を一言で表現すれば、「血がドパーッ!」とか「グチャグチャドロドロ」ってのに尽きるんですよね(^^; 最後のゾンビの周到な崩れ具合と言ったら・・・
仲間内では「Super8の女王」とか言われていたそうな・・・ あたしってキレイ?
シェリル役のエレン・サントワイズは整った顔立ちしているので
ゾンビ化してもサマになってますね。“いい顔”したゾンビです(^。^)
下の写真はダミーヘッドですが・・・
フガ〜・・・ ズキューン!
<はらわた>
 気が遠くなるほど丹念なコマ撮り撮影で、少しずつ肉が崩れていったゾンビは、一拍ついてから「ドパーッ!」とはらわた(?)を晒して、「ズキューン!」、「バキューン!」と軽快な効果音と共に血を噴き出した後、再びコマ撮りになって、今度はガイコツになるまで崩れながら倒れていって、床に叩きつけられた弾みで頭蓋骨をバカッと割って、その血肉を飛び散らせます。でも、ライミはそれでも飽き足らずに、もう充分に崩れている死体を、ほとんど灰燼に帰さんがまでに崩壊させていくんです(笑)。
ケーキ? ダイレクトヒット!
ケーキ(?)は出るわ、
虫は湧くわで、もう大変!
噴き出した血汐が
ことごとくブルースの顔面を直撃!(笑)

 やり過ぎの一歩先までやってしまう・・・、若人のデビュー作に特有の“前のめり感”がサイコーですね。前のめりの大暴走です! 血糊も過多なら、演出も過多! ライミは自分の持てるものを、出し惜しみなどせずに、全て曝け出してしまっているんです。これぞB級映画の醍醐味!
ぬおおおおおお!!
 本作は冒頭から、あの“疾走する主観映像”で幕を開けます。主人公が登場するよりも何よりも先に、この視点なのです。そして映画の最後を閉めるのもこの視点・・・。ちなみにカメラが奔る時に聴こえるあの唸り声は、ライミ監督自身が吹き込んだものなんだそうです。つまり、ファーストシーンからラストシーンまで、この映画の中を駆け抜けていたのは、まさにライミ監督自身、ライミ監督の映画魂だったんですね(笑)。
 コンピューターが普及して、素人映画のクオリティーが格段に上昇した現在では、本作の映像もだいぶ見劣りしてしまった感があるのですが、その情熱が色褪せて見える事はありません。作り手の中の色々なものまで“飛び散って”しまっているこの映画こそ、真の意味で「スプラッター映画の決定版」と呼ばれるに相応しい作品でしょう(^^)
映画の印象
/
降水確率10%
「良く晴れた気持ちのいい一日になるでしょう」
勝手に総評
1 5 10
私が愛している度
私が評価している度
一般人気度
マニア人気度
オススメ度
ソフト
 以前J.V.Dから発売されていたDVDは四角いノイズが乱舞する粗悪品で、その上なぜか削除されたカット(←確かにあの目ん玉潰すところはこの映画の中でも一、二を争う残酷シーンですが・・・)まであって、二度と見たくなくなるような酷い代物でしたが、同J.V.Dから新たに発売された『20周年記念アニバーサリー・死霊のはらわた』は海外で発売されて人気を博していた商品のマイナーチェンジ版なので、画質、特典共に満足のいくレベルです。
 特典としてオリジナル劇場予告編ドキュメンタリー他が収録されています。サム・ライミと製作のロバート・G・タペート、主演のブルース・キャンベルによる音声解説が日本語字幕付きで収録されているのは嬉しいですね(^^)

<国内の限定版と輸入盤の限定版>
 J.V.Dの通販限定『死霊のはらわた アルティメットセット』は、ポスター、T−シャツ、バッチ3個、そして「死の書」複製付き(←なんかいらないような物も混ざってますが)。でも、この「死の書」、残念ながらプリントを施しただけのただの紙製です。と言うのもコレ、北米発売の限定版では、本作で特殊メイクを担当したトム・サリバン先生が直々に原型を制作した、「立体物「死の書」レプリカ」(←それがまんまDVDのパッケージという代物)だったのです!
 何気に映画に登場した「死の書」より立派に仕上がっています(笑)。これを手に取った時のプヨプヨ感には、心を病んだ現代人たちも癒される事必至です。
 日本語字幕はもちろん、英語字幕も付いていませんが、マニアならコチラも買っておかないと泣きを見ますね。ちなみに、これはリュージョンALLディスクなので国内のプレイヤーでも問題なく再生できます。
ぷよぷよよ〜ん

関連作をチェック!

関連作品
死霊のはらわたII 「アッシュ」ことブルース・キャベルが大活躍する続編をチェック!


トップページを表示