| 殺人者はライフルを持っている! | |
| Targets | 1968年 アメリカ |
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| (割愛) | |
| 名作『ペーパームーン』のピーター・ボグダノヴィッチ監督のデビュー作。引退を間近に控えた老怪奇スターと無差別狙撃魔のエピソードが交錯する異色のスリラー(?)映画です。 老怪奇スターを演じるのは、『フランケンシュタイン』(1931年米)以降、30年以上に渡って怪奇映画の顔として活躍してきたボリス・カーロフ。老体にムチを打ち、ひしゃげた足を引き摺りながら演技する御大。その勇姿を目に焼き付けろ! 映画は、カーロフが出演したロジャー・コーマン監督作『古城の亡霊』(1963年米)のクライマックス・シーンが延々と映し出されるところから始まります。劇中では「バイロン・オーロック」という役名になっているカーロフの公開を間近に控えた新作という設定。浮かない顔で試写を見ていたカーロフが引退を口にしたものだから、みんな困ってしまってというエピソードが展開される一方、家庭も持ち、特になんの問題も無い生活を送っているように見える男が無差別狙撃殺人に至るまでの姿が丹念に描かれます。全然関係無いようでいて、微妙にリンクを見せ始める二つの物語・・・、なんと最後には、無差別狙撃魔とカーロフの対決(笑)にまで発展するのです!! このなんとも奇抜な映画が生まれた背景には、特別な事情があったそうです。なんでもこの企画は、2日間だけ契約が残っていたカーロフを使ってもう一本映画を作ろうと考えたロジャー・コーマンが、自作の『古城の亡霊』の映像を20分使うことを条件に(←宣伝目的?)、門下で働かせていたボグダノヴィッチに持ちかけたものなんだそうです。カーロフの出演シーン20分、『古城の亡霊』から20分、あと40分付け足せば、なんとか映画になるだろうと。正直言って、かなり無茶な企画だ(^^; まともな映画になりそうもない・・・。しかし、初監督に燃えたボグダノヴィッチは、離れ技とも言える脚本を書き上げ、これを見応えタップリの傑作に仕上げたのです。とても上記したような制約の中で撮られた映画には見えない。むしろ、才気に溢れた若手映画監督が好き放題に撮った野心作みたいに見える。たぶん、ハナから無茶な企画だったから、開き直って、逆に自由に撮れてしまったんでしょうね。映画の神様のイタズラだ。 この脚本には、ボグダノヴィッチが以前から温めていた「チャールズ・ホイットマン」についての映画のアイディアが盛り込まれているそうです。チャールズ・ホイットマンとは、1966年に、有名な「テキサスタワー乱射事件」を起こした人物です。元海兵隊員であるホイットマンは、当時在籍していたテキサス大学の時計台の上からライフルで狙撃を行い、30名を負傷させ、14名(16名とも?)を殺害しました。全米を震撼させた大事件ですね。つい最近、ヴァージニア工科大での事件が起きるまでは、単独犯が起こした銃乱射事件としては最大のものでした。 この映画に登場する殺人者が事件の朝に取る行動などは、ホイットマンが実際に取った行動を忠実に模しているそうです。劇中では、男が狙撃を行うのは高速道路とドライブインシアターですし、全てにおいて事実をなぞっているわけではなく、あくまでも実際の事件とは別物として語られているのですが、アメリカ人ならチャールズ・ホイットマンのことを想起せずにはいられないはずで、この映画の中で描かれる出来事を、絵空事としてではなく、現実に起こり得ること、“現実の恐怖”として認識させる意図があったことが窺えます。チャールズ・ホイットマンうんぬんということを抜きにしても、ディテールの積み重ね、そして抑えた演出によって付与された異様な迫力は、観客を震撼させるに充分なものであり、特に、静寂と日常性の内に淡々と死が積み重ねられる狙撃シーンは圧巻です。 このようにして“現実の恐怖”が描かれる一方、長年に渡って「虚構の世界」で恐怖を体現してきた怪奇役者カーロフが提示されているわけですが、これは、ただ単に、この映画で描かれている狙撃事件の恐怖、その迫真性を強調するために、古めかしい怪奇映画を象徴する存在として引き合いに出されているのではありません。もちろん、そうした側面も少なからずありますが、それ以上に印象的なのは、カーロフという存在を通して、映画がモラルの代弁者としての役割を負っている点です。映画マニアのボグダノヴィッチらしい脚本ですね。最近でも、「映画が暴力を誘発する」とか本気で言ってるトボケた人たちがいますが、暴力的なのは現実の方であって、映画は寧ろ道徳的であると、暗に主張しているのでしょう。ここで引き合いに出されているのが、世間的にも評価の高い名作ではなく、「下らない」、「馬鹿らしい」と言われて揶揄され、一般的には教育的とは思われていない「低予算のホラー映画」だというところが、また憎いじゃありませんか。まあ、『古城の亡霊』が引用された背景には、上記したような止むに止まれぬ事情があったわけですが・・・(笑)。映画の最後、虚構の世界の住人であるカーロフの口から発せられる、「これが現実なのか・・・」という台詞からは、現実に対する深い絶望が読み取れ、辛辣です。 『殺人者はライフルを持っている!』は、大胆で奇抜な異色作であると同時に、紛れもない「怪奇映画」でもあります。異様な迫力に満ちた狙撃シーンはもちろんのこと、恐らく、それ以上に観客に恐怖を覚えさせるのは、殺人犯が事件を起こすまでの日常の描写・・・、そこには、彼があのような事件を起こすに至るだけの、動機らしい動機を見出すことができないのです。一見普通の男が、一見平穏な生活の中で凶悪な事件を引き起こす・・・、これこそが現代の恐怖であり、現代の怪奇なのです。制作から40年近くを経ていますが、全く古びていないだけに、敢えてこう言わせてもらいましょう。『殺人者はライフルを持っている!』は、限りなく現代的なアプローチを持って撮られた怪奇映画、“現代の怪奇映画”であると。 ケネディ大統領暗殺を彷彿させる狙撃シーンがあることや、映画の完成直後に起こったキング牧師暗殺の影響で、アメリカではお蔵入り同然、小規模公開で採算も取れず、日本では劇場未公開に終わってしまいましたが、『殺人者はライフルを持っている!』は、紛れもない傑作です。興味があったら是非見てみて下さいね。
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| DVDはパラマウントから発売されました。古い映画で、あまり恵まれてない環境で撮られたことを思えば、画質はまあ合格点。特典としては、「ピーター・ボグダノヴィッチが語る製作秘話」、「ピーター・ボグダノヴィッチによる音声解説」が収録されています。廃価盤も出ているので是非購入しましょう。 | |
(2007/4/25)
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