シーバース(シーバース/人喰い生物の島)
Shivers / Frissons / Orgy of the Blood Parasites / They Came from Within 1975年 カナダ
スタッフ/キャスト
製作: アイヴァン・ライトマン
製作総指揮: ジョン・ダニング
アンドレ・リンク
アルフレッド・パリサー
監督: デヴィッド・クローネンバーグ
脚本: デヴィッド・クローネンバーグ
撮影: ロバート・サード
音楽: アイヴァン・ライトマン
 
出演: ポール・ハンプトン
ジョー・シルヴァー
リン・ローリイ
アレン・マジコフスキー
バーバラ・スティール
スーザン・ペトリ
94分
ストーリー
 人間の体内には様々な寄生生物が棲みついていて、中には、乳酸菌のように、人間の役に立つものもある。そこで、とある科学者は、内臓の代わりになってハイパワーに活動してくれる寄生虫を体の中に飼えば、人間はもっとハッピーになれると考えた。病気だとか体の不調なんかも無くなっちゃう。善は急げとばかりに、早速、人体実験! ・・・でも、この寄生虫には、大変な副作用があったのだ! 寄生された人間は脳まで侵され、理性が吹っ飛んで、欲望のままに行動する暴行魔へと成り果ててしまうのであった! その上、この虫は、どんどん増えて、人から人へうつっていく。孤島のマンションを舞台に展開される暴力と酒池肉乱! 寄生されていない人間たちは、必死の抵抗を試みるのだが・・・
レビュー
 『ビデオドローム』や『ザ・フライ』などの異色ホラーで一世を風靡し、最近でも『ヒストリー・オブ・バイオレンス』などの話題作を手掛けているデヴィッド・クローネンバーグ監督の商業用長編デビュー作。SF映画によくある寄生生物ネタながら、クローネンバーグ監督独特の美意識と変態趣味(笑)が炸裂した、とんでもない怪作なのだ。

 とにかく、オープニングからしてアブノーマル。とあるマンションの一室で、ハゲのオッサンが、抵抗する女子高生を殴打してるの。そして服を脱がすと、メスで腹部を切開して酸を注ぎ込む・・・。特殊メイクは最小限だけど、リアルな演技、そして即物的なカメラワークが、映像に生々しい空気を付与しています。もう、「引き込まれる」って言うより、引きます・・・。楽しいSF映画を見てワクワクしたいという人には向いてないです。
 映画が進むと、キチ○イ博士の企み(*上記ストーリー紹介参照)が明らかになって、謎の寄生生物のご登場と相成るのですが、ここから色々な攻防が・・・と思っていると、そうはならない。謎の生物に寄生された男が、だんだん具合が悪くなっていって、その内、お腹の中で増えた虫がモゾモゾと動き始め、男の奥さんはどうすることもできなくてメソメソと泣きじゃくり・・・という風に、ただひたすらに、悪化する状況をネチネチと捉え続けるのです。爽快感の欠片も無い。ただひたすらに暗く、そしてバッチい・・・(^^; 寄生生物のデザインも、特殊メイクも、そしてストーリーも、不潔感に溢れています。生理的な嫌悪感を煽ることに余念がありません。

 この映画を初めて見たのは、十代中頃の、今よりも少しピュアだった頃なので、本気で気持ち悪くなりましたね。また、ただ気持ち悪いだけじゃなくて、本気で怖かった。モダン様式のマンションの無機質な風貌、閉鎖的な空間で展開されるサスペンス、そして救いの無い結末・・・、これらは皆、見る者の恐怖を煽るに充分なものです。この映画は、“異色のホラー映画”であると同時に、“一級品のホラー映画”でもあると思います。
 この手の映画の定番だけど、周囲の人間が一人また一人と寄生されていく中、一人残された主人公が必死の逃亡を試みる場面にはハラハラさせられました。でも、そんな主人公の前に現れるのが、世にも恐ろしい怪物!・・・とかじゃなくて、犬の散歩よろしく首輪をはめられた、四つんばいの少女たちだというのが変態的・・・。こんなのにいきなり出会ったら、ある意味、怪物より怖いよね。

 一種の“感染モノ”ホラーだということで、本作は、よく『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』との類似点を指摘されますが、どちらかと言うと、同じくロメロ監督の『ザ・クレイジーズ』の方に近いです。『ザ・クレイジーズ』に影響を与えていると思しき、『処刑軍団ザップ』にも似ています。3本とも人間の狂気を描いた映画です。そう言えば、『処刑軍団ザップ』、『ザ・クレイジーズ』、そしてこの『シーバース』にも、女優のリン・ローリイが出演しているんですよね。インスピレーションが脈々と受け継がれていったことの証でしょう。この3本は、遠縁のいとこみたいなものですね。
 でも、クローネンバーグは、ただパクったり、リスペクトを捧げてるわけじゃないですよ。扇情的で低俗な見世物に徹していた(笑)『処刑軍団ザップ』、集団や権力が内包する狂気を描くという社会的なスタンスを重視していた『ザ・クレイジーズ』に対し、この『シーバース』は、あくまでも、個人的なレベルでの狂気の発露を描くことに執心しています。言うなれば、リビドーの発露、鬱積したエネルギーの噴出ですね。だから、初見の時には思いもよらなかったことですが、再見してみたら、不思議な開放感さえ覚えました。ずっとウジウジ、メソメソしていた人が、寄生されたことによって、自信満々、大胆不敵になって、なんだかハッピーになったように見えるの。キチ○イ博士の思い描いていた“理想郷”も、そんなに悪いものではないのかなーなんて・・・
 一見絶望的に思える結末が、新たな始まりを、新たな可能性を示唆しているようにも見える。私は、素直に、モダンでクールな味付けをされた異色のホラーとして楽しんだけど、色々な見方ができるのも、この映画の面白いところだと思います。
映画の印象
/
降水確率20%
勝手に総評
1 5 10
私が愛している度
私が評価している度
一般人気度
マニア人気度
オススメ度
ソフト
 DVDは、2002年1月にビームエンタテインメントより発売されました。画質はまあまあ良好です。古い映画なので、それほど鮮明ではありませんが、昔のビデオと比べると格段に向上しています。
 特典は、本作『シーバース』と、クローネンバーグ長編第二作の『ラビッド』のオリジナル劇場用予告編。あと、クローネンバーグへのインタビューです。

(2007/6/18)

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