ショーン・オブ・ザ・デッド
Shaun of The Dead 2004年 イギリス
スタッフ/キャスト
製作: ニラ・パーク
製作総指揮: ティム・ビーヴァン
エリック・フェルナー
アリソン・オーウェン
ナターシャ・ワートン
ジェームズ・ウィルソン
監督: エドガー・ライト
脚本: サイモン・ペッグ
エドガー・ライト
撮影: デヴィッド・M・ダンラップ
音楽: ダン・マッドフォード
ピート・ウッドヘッド
出演: サイモン・ペッグ
ケイト・アシュフィールド
ニック・フロスト
ディラン・モーラン
ルーシー・デイヴィス
ペネロープ・ウィルトン
ビル・ナイ
100分
レビュー
 一昔前までは考えられなかった話ですが、二十一世紀を迎えて、巷は「ゾンビ映画」のブームに沸き返っています。イギリスでは『28週後...』が、アメリカでは『バイオハザード』がスマッシュヒットを記録。メジャーもマイナーもこぞって製作に乗り出すようになりました。まあ、モダンゾンビ映画の始祖『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)の登場以降、低予算で製作でき、尚且つ固定客が期待できるゾンビ映画は、コンスタントに作られてはいたのですが、ここまでの盛り上がりは前代未聞です。ゾンビ映画の代名詞である『ゾンビ』(1977年)のリメイク『ドーン・オブ・ザ・デッド』の成功を受けて、遂には元祖ゾンビ映画監督ジョージ・A・ロメロの“リビングデッド・サーガ”の新章(『ランド・オブ・ザ・デッド』)が20年ぶりに製作されるまでに至りました。
 そんな中封切られた数多くのゾンビ映画の中で、ダントツの支持を受け、尚且つ高い評価を得たのが、この『ショーン・オブ・ザ・デッド』です。地味なオッサンが主演の小品ということで、日本では公開を見送られてしまいましたが、脚本、演出ともに下手なメジャー作品より洗練されてて、ジャンル映画ファンはもちろん、そうじゃない人も楽しめる快作です。

 「死人のショーン」、そんなふざけたタイトルが付けられたこの映画の舞台は、ロンドンの下町。ショーンは、電器屋勤めの冴えないオッサンです(←20代だけど、見た目は充分オッサン)。ボンクラな友人エドとTVゲームに興じ、パブに通ってビールを浴びる毎日。そんな生活にショーン自身は満足していたのですが、恋人のリズは食傷気味。彼女の心を引き止めようと、生活を改めると約束したショーンでしたが、やっぱりあれこれ失敗して、とうとう愛想を尽かされてしまうのでした・・・
 傷心のショーンがエドに慰められ、ビールを煽って酔っ払っている頃、周囲では異変が・・・? 死人が蘇って生者を襲う! 原因不明のゾンビパニックが発生していたのだ!!
 二日酔いの頭でいつものようにダラダラとした朝を送っていたショーンとエドも、遅ればせながら異変に気付く。「リズを助けないと!」、一念発起したショーンはゾンビで溢れた街の中へと飛び出して行くのだが・・・

 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の登場以降、世界各国で様々なゾンビ映画のヴァリエーションが作られてきました。産業廃棄物とか謎の怪電波とか、ゾンビ発生の原因を色々と設定したもの。はたまた走るゾンビとかハイパワーのゾンビとか、ゾンビそのものにヴァリエーションを持たせたもの。一方、ロメロが創造した世界観、ゾンビ像は忠実に受け継いだ上で、「ゾンビパニックに遭遇したら自分ならこうする」とか「○○でゾンビパニックが起こったら?」というようなアイディアを映像化した外伝的作品があります。ロメロ自身が監督した『ゾンビ』も、この範疇に入りますね。続編というよりは、舞台を変えての拡大再生産。この『ショーン・オブ・ザ・デッド』も後者の方に属していて、「もしイギリスでゾンビパニックが発生したら?」というシンプルなアイディアに基づいて作られています。
 ゾンビと戦う武器を探して物置を漁ったら、アメリカだったらベースボールのバットを見付けてきそうなところを、この映画ではクリケットのバット。ゾンビを逃れて立て篭もるところも、豊かさの象徴ショッピングモールじゃなくて、場末のパブです。「生前の習慣」だとか言って、『ゾンビ』のゾンビはショッピングモールに集まって来てたけど、イギリスでは、ゾンビもやぱっりパブに集まって来るのだ(笑)。
 特にイギリス関係ないけど、主人公たちが初めてゾンビに遭遇した時の反応も面白い。当然のことだけど、ある日突然ゾンビに遭遇しても、そいつのことをゾンビだとは思いませんよね。ウ〜ウ〜唸ってるだけの顔色の悪いヤツを。「ひでえ酔っ払いだ」とか言って、主人公たちは全然相手にしない。おおよそ半日ぐらいは事態に気付かず生活してるの(←今時流行りの「走るゾンビ」じゃ絶対無理・・・)。

 「死人のショーン」ことダメ男のショーンが、ゾンビパニックに遭遇したことでヒーロー然とした戦う男に変貌していくというのも、この映画の面白さですね。庶民(特にショーンのようなダメ男)の願望を投影した定番の展開だけど、やっぱり燃えちゃう。ゾンビを倒したことで自分の中の何かに目覚めたのか、急に勇ましくなるショーン(←ゾンビを撲殺してる時の目がアブナイ(^^;)。職場ではバイトの若造にもなめられていた男が、率先してゾンビの群の中に飛び込んでいくようになります。キザな登場をキメて、豚皮スナックと一緒に元カノのハートもしっかりキャッチ! その振る舞いたるや、すっかり「頼れるリーダー」です。
 見た目冴えないオッサンのサイモン・ペッグが演じているからこそ、この面白さが際立つんですよね。このサイモンって人、見かけによらず(←失礼)才人です。監督のエドガー・ライトと一緒に、本作の脚本も手がけてます。
 さてさて、そんなショーンの活躍で一件落着となるか言うと、そうはならない。基本ダメ男なので、色々とポカをやらかしてしまうのだ。結果的に見ると、ショーンのせいで被害が広がっているような・・・。やっぱりダメ男はダメ男ってことですか・・・(^^;

 ジョージ・A・ロメロから続く伝統で、社会に対する批判精神みたいなものも含まれているんだけど、カリカチュアライズの手腕は、むしろ本家の上を行っています。これは、風刺の精神が文化に定着していて、イロニーの利いたユーモアを得意とするイギリス人故でしょうか。ラストなんてなかなか辛辣です。「ボンクラどもはゾンビと変わらん! 生きてても死んでても同じ!」と言わんばかり。だけど、自分たちもその「ボンクラ」の部類に属していると認めているエドガーとサイモンは、「ボンクラだって別にいいじゃない。みんなみんな生きている(?)んだ、友だちなんだ♪」とまとめてみせます。終末観に包まれたゾンビ映画はもちろんいいけど、こういうのもたまにはいいよね。庶民派の癒し系ゾンビ映画。
 ・・・って、誤解されそうな物言いをしてしまいましたが、この映画、そこいらのコメディーホラーのように、「笑い」に逃げてる生ぬるい内容じゃありませんよ。笑わせるところでは笑わせても、ハラハラさせるところではしっかりハラハラさせてくれるし、ドラマも結構シビア。ゴア描写にも力が入っていて、『死霊のえじき』ばり(って言うかパクリ)の内臓引き出し人体バラバラ描写まで披露してくれます。本家ロメロが絶賛したのも頷けます。基本的にコメディーだけど、時々本気で「ゾンビ映画」。本格派をキドったシリアスなゾンビ映画でも、なかなかここまで「ゾンビ映画」していません。ラストに流れるのは、もちろん(?)あの曲、みなさんご存知『ゾンビ』の「ショッピングモールのテーマ」です。
 タタンタンタン、タタンタンタン、タタンタン、タタタタタンタンタン♪
 これは単なるパロディーではない! これは、あの“リビングデッド・サーガ”を補完しようとする試みなのだ!!(←大げさ)

 監督自身オマージュであることを公言しているけど、作り手たちが自分の好きな要素を色々と詰め込んだ映画なので、正直言ってオリジナリティーはあんまり感じさせません。でも、それらをまとめ上げる構成力が卓越しているので、ハリウッド大作にも負けない一級の娯楽作品に仕上がっています。これはタランティーノなんかと同じ現代的なアプローチですね。たぶんゾンビ映画以外を撮らしても面白くなるでしょう。事実、次作の刑事モノ『ホット・ファズ』も大好評。エドガー&サイモンのコンビには、しばらく楽しませてもらえそうです(^^)。
勝手に総評
1 5 10
私が愛している度
私が評価している度
一般人気度
マニア人気度
オススメ度
ソフト
 DVDはユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンより発売されました。本編のクオリティーは良好ですし、映像特典もいっぱい収録。もちろんオリジナル劇場予告編もありますよ。映画の内容同様にご満足いただける商品かと。廃価版になっているので、とりあえず買っちゃえ!(?)

(2008/10/9)

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