ローズマリーの赤ちゃん
Rosemary's Baby
1968年アメリカ

製作 ドナ・ホロウェイ
監督・脚本 ロマン・ポランスキー
原作 アイラ・レヴィン
撮影 ウィリアム・A・フレイカー
音楽 クリストファー・コメダ
出演 ミア・ファロー、ジョン・カサベテス、ルイス・ゴードン
上映時間 137分


ストーリー
 マンハッタンのアパートに引っ越してきたローズマリーとガイのウッドハウス夫妻、親切だが厚かましいお隣さんなどに悩まされながらも幸せな新婚生活だ。しかしある夜、悪夢とともに妊娠したローズマリーは、それ以来不安と恐怖に苛まれる事になる。隣人たちが赤ちゃんを狙っている!? 悪魔信仰・・・、いけにえ・・・、不気味な想像に悩まされるローズマリー、夫に相談しても取り合ってくれない。果たしてこれは妄想なのだろうか? 必死に赤ちゃんを守ろうとする彼女であったが、臨月を迎えた体では抵抗も空しく、薬を打たれ意識を失ってしまう・・・

 目覚めた時、彼女の体に赤ちゃんはいなかった。死産だったという・・・。しかし隣人たちが彼女の母乳を毎日回収して行く。そしてどこからともなく赤ん坊の泣き声が・・・!?
 ある日、遂に彼女は意を決して、泣き声の方を目指して隣室へのドアに手を掛ける・・・!!
レビュー
 怖い話ですねえー、主人公が妊婦だなんてほとんだ卑怯技です。逃げる事も抵抗する事もままならない、助けを求めて人に訴えてもヒステリー扱いされてしまう。この孤立感、不安感をミア・ファローが見事に演じ切っています。
 現代的な都市の片隅で、人知れず悪魔信仰が息づいている(?)というプロットも美味しいです。見るからにそれっぽいセットや衣装が出てこないところがいいですね。普通の服装をしたごく普通っぽい人たちが、ごくごく普通に悪魔教を信奉している(?)ってところが物語に魅惑的な現実感を付与しています。

<ポランスキー監督出世作>
 監督は『水の中のナイフ(1962年ポーランド)』で世界的な評価を獲得するも、不道徳な内容だと批判を受けて自国での映画活動が制限されて国外に拠点を移していたロマン・ポランスキー。
 カトリーヌ・ドヌーブ主演の『反撥(1965年英)』で、抑圧された性衝動から精神の均等を失い、挙句の果て殺人まで起こす女性の物語をほとんどホラー映画的なネチっこさと恐怖映像で描いていましたが、彼を本作に抜擢したプロデューサーの目は確かです。

 ユダヤ系であるポランスキーは、幼少時代にナチスによるホロコーストを経験していて、そんなせいもあってかネチネチとした不安と恐怖の描写には真に迫ったものがあります。小市民的なスケールの不安感や不快感を丁寧に描いていて、彼の神経質な性格がうかがえるようです。この後この人、実体験が“ホラー(&スキャンダル)”になってしまいますが、まあその話は別の機会に。

<演技陣>
 ローズマリーの夫役は『アメリカの影(1960年米)』などの監督で、アメリカ独立系映画の父として知られるジョン・カサベテス。この才人が才能のない俳優の役を巧く演じています。なお、厚かましい隣人役ルイス・ゴードンはこれでオスカーを受賞。たぶんこのゴードンが演じたようなオバさんがポランスキーが苦手なタイプなんでしょうね。真に迫ってますもん(笑)。

<ローズマリーの悪夢>
 ローズマリーが妊娠する夜に体験(?)する悪夢のシーンも秀逸です。当世風のCGで色々こねくり回したような映像ではなく、普通に撮影された映像で、何気ない日常の中に唐突に異質なものが入り込んだかのような感覚をかもし出しています。
 その意図された映像の飛躍は一種のトリップ感覚を引き起こしていて、当時のドラッグカルチャーの影響を想像させますが(事実ローズマリーは薬を飲まされていますね)、この「異質なものが入り込む」という感覚が「妊娠」の暗喩表現になっている事も忘れてはなりません。
 シーンを構成する各要素はシュールレアリスム映画を思わせ、ここだけ切り出して短編映画にしてもいいぐらい良く出来ています。
 ベッドに横たわって放心状態のローズマリー、周りを取り囲むのは素っ裸の老人たち、夫が現れてセックスするが、いつのまにか相手が「悪魔」に変わっている・・・、はっと我に返ったローズマリーが叫ぶ。「これは現実よ!!」

 この悪夢の翌朝からローズマリーはだんだんと強迫観念に捕らわれていくのですが、後は見てからのお楽しみに。オチに至るまでスキなく楽しませてくれるはずです。
ソフト
 パラマウントから発売されているDVDは大手会社の製品なので画質はもちろん良好です。ポランスキー監督へのインタビューメイキングも収録されています。しかし残念ながら劇場予告編はありません(私、半分はこれ目当てなのに・・・)。特典全く入ってない昔のビデオのマスターをそのまんま焼いただけのヤツなら分かるんですが、こういう風に色々特典入っていながら、予告編だけ入ってないのって一体どういう事なんでしょうね。発売会社の関係で支払わなければならない権利料が生じているとか? まあそれでも充分買いのDVDですよ。


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