| ノーカントリー | |
| No Country for Old Men | 2007年 アメリカ |
|
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ジョエル&イーサンのコーエン兄弟が手がけた犯罪ドラマ。アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚色賞の主要3部門の他、冷酷な殺し屋を演じたハビエル・バルデムが助演男優賞を受賞した話題作。 コーエン兄弟は、『バートン・フィンク』でカンヌ史上初の3冠も獲ってるし(←審査員長のロマン・ポランスキーのゴリ押しで)、『ファーゴ』の批評・興行両面での成功もありましたが、ついに名実共に現代アメリカを代表する映画監督になったという感がありますね。傾向としてアカデミー賞って、全盛期を過ぎた監督に功労賞みたいに遅ればせながら賞をくれる場合が多いけど、コーエン兄弟は、まだバリバリの全盛期。『ノーカントリー』は、彼らの最高傑作と言っても過言ではない、大胆かつ完成度の高い映画です。 ちなみに「国家の崩壊を描いた映画か?」と思わせる大げさな邦題ですけど、原題には続きがあって、『No Country for Old Men』。「年寄りの居場所はない」ってな感じでしょうか? 「Old Men」は、もっと広範に、「古い人間」、「古臭い人間」ととることもできます。 鹿狩りをしていたハンターが、偶然、マフィアとギャングが麻薬の取引中に撃ち合って全滅した現場を発見した。そこには見たこともないような大金の詰まったバッグが・・・! ハンターは思わずその金を持ち逃げしてしまうが、凶悪なギャングたちと、マフィアに雇われた凄腕の殺し屋が執拗に追跡してくる! 事件を捜査していた老保安官もハンターの後を追い、なんとか彼を救おうとするのだが・・・ コーエン兄弟の語り口の上手さが存分に発揮された映画です。特に目新しいシチュエーションを描いているわけではないのですが、構成の巧みさと演出の妙で、見る者をグイグイと引き込みます。特に冒頭30分は圧巻。愛妻と共に静かな生活を送っている老保安官、圧縮酸素のボンベを下げた謎の殺人鬼、鹿狩りをしている冷静沈着なハンター、全然関係ないように見える3人の運命が微妙に絡まり始め・・・いや、絡むと言うより、ほとんどすれ違ってばかりなのですが、そのことが寧ろサスペンスを誘発します。会ってはならなかった相手、会うべきだった相手・・・。運命はままなりません。 アカデミー賞を獲ったことから、何か堅苦しい映画のように誤解している人がいるかも知れませんが、『ノーカントリー』は、スリル満点の一級の娯楽作です。アクション映画的な見せ場も豊富。ほとんど人間を超越しているようにすら思える凄腕の殺し屋に対して、根っからの用心深さに加えて従軍経験もあるハンターが果敢に立ち向かう姿には、思わず熱くなります。犬に追われて川に逃げた後、発砲する前に、銃の中に入った水を掃除するところもリアリティーがあってカッコいい。よくある映画の主人公みたいに気合と根性じゃなくて、抜け目のなさと冷静さでもって対処するところがいいですね。つまらないところで人間味を発揮して、墓穴を掘ってしまったりもするのですが・・・ それにしても、小説が原作なのに、コーエン兄弟的なモチーフがいっぱいに詰まった映画ですね。些細なことから狂っていく運命の歯車、偏執狂の犯罪者、思慮深い警察官、すれ違いのドラマ・・・(殺人鬼が変な武器を使うところは『XYZマーダーズ』のようでもあるし)。なんだか『ファーゴ』の姉妹編のようですらありますが、人間離れした凶悪さを発揮する殺し屋のキャラクター造形が異彩を放って、物語の寓意性を高めています。 こういう映画がアカデミー賞を獲るようになるなんて、アメリカも変わったなあ。理解不能な存在として描かれる凶悪な殺し屋の姿に、アメリカ人は、「テロリスト」を、「テロの恐怖」を見るのかしら? そう言えば、彼が、イラクの自動車爆弾よろしく、車を爆破するシーンもありましたね。「古い人間」を代表する登場人物である老保安官は、なんとかして悪に立ち向かおうとしますが、最後には無力感に打ちひしがれることになります。 悪が滅びることはない。観客の期待に応えるように、最後には天罰が下りますが、それでも何とかして生き残ってしまう。善人に出来るのは、自分の人生を省みることだけ・・・。突き放しているようだけど、倫理的な命題を突きつけている、印象的なラストです。 娯楽性とテーマ性をここまで高いレベルで両立した映画は稀に見ます。サスペンスフルでスリリング、黙示録的で啓示的。『ノーカントリー』は、コーエン兄弟の代表作というだけでなく、21世紀のアメリカ映画を代表する一本となることでしょう。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| DVDは2008年8月にパラマウントより発売されました。オリジナル劇場予告編が収録されていないのは残念ですが、画質、音質共にクオリティーは高いです。ただ、同じく2008年の12月にブルーレイ版も発売されてるので、再生環境がある人はそちらを購入した方がいいでしょう。なんで少し遅らせるかなあ? 商売が汚い。同時発売しろよ! | |
(2009/8/3)
関連作をチェック!
| 関連作品 |