テラービーチ/髑髏軍団美女虐殺
La Noche de las gaviotas / Night of the Seagulls / Night of the Death Cult / Terror Beach / The Blind Dead 4 / Night of the Blood Cult 1975年 スペイン
スタッフ/キャスト
製作: Modesto Perez Redondo
Jose Angel Santos
監督: アマンド・デ・オッソリオ
脚本: アマンド・デ・オッソリオ
撮影: フランシスコ・サンチェス
音楽: Anton Garcia Abril
出演: ヴィクター・プラチク
マリア・コスティ
Sandra Mozarowsky
Jose Antonio Calvo
ジュリー・ジェームズ
Javier de Rivera
Pilar Vela
Fernando Villena
Maria Vidal
Oscar Phens
89分
ストーリー
 寂れた漁村に赴任してきた医師のヘンリー。前任者の老医師は、何かに怯えるように足早に去って行った。ヘンリーの妻ジョーンは、村に漂う不穏な空気に只ならぬものを感じて夫に訴えたが、彼は取り合わない。不安の中で眠りについた彼女は、深夜、女性の悲鳴らしきものを聴いて目を覚ましたが、カモメの鳴き声に掻き消されて、はっきりとしたことは分からなかった・・・
 何日経っても村人たちの排他的な態度は変わらなかったが、ルーシーという名の若い娘だけが夫妻に親切に接してきた。彼女はジョーンに頼み込むと、夫妻の家で家政婦として働くようになる。直ぐに夫妻と打ち解けるルーシー。しかし、彼女は常に暗い影を湛えていて、何か重い悩みを抱えているようだ。夜な夜な聴こえてくるカモメの鳴き声は今日も止まない。
 数日後、ヘンリー夫妻の家に一人の娘が駆け込んできた。彼女は何かに怯えていてパニック状態だ。直ぐに彼女の両親が迎えに来て連れ帰ったが、心配になった夫妻が翌日になって家を訪ねてみると、そこに彼女の姿はなかった。両親は、娘は都会に出て行ったと言う・・・
 不審に思ったヘンリーは聞き込みを始めたが、村人たちは揃って口をつぐむ。しかし、夫妻に親切にしてもらった知恵遅れの男テディーだけが二人の質問に答えて告げた。「彼女はもうこの世にいない」、・・・!!!
 その夜、ヘンリー夫妻の家の戸を叩く者があった。怯えるルーシー。そう、あの晩のように、村人たちが今度はルーシーを迎えに来たのだ。彼女は海岸へと連れて行かれ、鎖で岩に繋がれる。
 ルーシーの身に危険を感じて海岸へと向かったヘンリー夫妻だったが、彼らの前に恐ろしい存在が姿を現す! 馬を駆り、剣を振るう盲目の髑髏軍団!! 彼らは、邪神を信仰し、不死の力を得たテンプル騎士団の成れの果てだった!!
 七年ごとに現れては、七晩に渡って処女のいけにえを要求するというテンプル騎士団。ルーシーは今年の七人目のいけにえとして捧げられようとしていたのだ。ルーシーを助けた夫妻のもとに、地獄の騎士たちの魔の手が迫る! 果たしてヘンリーたちは、この窮地から脱し、生き延びることができるのであろうか!?
レビュー
 スペインが生んだ異能のホラー映画作家アマンド・デ・オッソリオが放つ、“ブラインドデッド・シリーズ”第四弾!
 海外では熱烈な支持を受け、名作(?)としての地位を確固たるものとしながらも、日本では冷遇され、一本たりとも劇場公開されることのなかった同シリーズ作品ですが、一作目『エルゾンビ/落武者のえじき』と本作『テラービーチ/髑髏軍団美女虐殺』だけは、俗に言うビデオバブルの時代にビデオが発売されたので、目にした方もあるかと思います。(私は世代がずれていますが・・・)


 スパニッシュホラーの歴史に金字塔を打ち立て、70年代のユーロホラーを牽引してきた“ブラインドデッド・シリーズ”も、いよいよ今作で打ち止め。まあ、そうは言っても、当初から最終作として企画されていたわけではなく、ストーリーに連続性があるシリーズでもないので、特に感慨深いわけじゃないんですけどね。
 今回の舞台は不気味な伝説の残る海沿いの寒村。またいつものパターンかと思われることでしょうが、その通り。またいつものパターンなんです(^^;。でも、ロケーションの美しさは際立っており、浜辺を駆けるブラインドデッドたちの勇姿はいつにも増して夢幻的。カモメの鳴き声に紛れて女性の悲鳴が聴こえてくるというのも、いかにも漁村に伝わる怪談という雰囲気でいい感じ♪ 閉鎖的な印象を与える風土描写と相俟って、怪奇ロマンとしての風格を否応がなしに高めています。ユーロホラーらしく行き当たりばったりの大雑把な話運びをしていた前三作と比べると、ずっと脚本も洗練されていて、完成度という点に関して言えば、本作はシリーズ中随一ではないでしょうか?

 『エルゾンビ/落武者のえじき』の時に主張していたことをあっさり撤回するようで恐縮してしまうのですが、オッソリオ監督の興味の対象は、「モダンとクラシックの融合」とかそんなものではなくて、ただ単に「クラシック」の方、純粋に古典的な怪奇ロマンだったんですよね。『エルゾンビ/落武者のえじき』は偶然の産物。恐らく、ナウい映画を作りたかった製作者から、やれゾンビを出せ、やれレズを出せって言われて折衷した結果生まれたのが、あの斬新な世界観だったのでしょう。モダンな要素の混ざり具合が中途半端になっていた二作目『Return of the Evil Dead』、三作目『The Ghost Galleon』は大味になっていた感が否めませんでしたが、その点、ほぼ完全にクラシックの方向に移行したこの『テラービーチ/髑髏軍団美女虐殺』は、断然洗練されています。まがりなりにもヒットメーカーとなって、オッソリオ監督もやっと自分の意見を通せるようになったのでしょう。

 と、まあ、なんとなく誉めてきたわけですが、完成度というものが映画の面白さに直結するわけじゃないんですよね。「洗練されてる」と言えば聞こえがいいけれど、裏を返せば「無難にまとまってる」ってことであって、そういう「普通の映画」だからこそ日本でもビデオが発売されたんでしょうけど、正直言ってパンチに欠ける。
 ラストも凄く安直なハッピーエンド。邪神の神像をエイヤ!って押し倒したら(→落として下さいとばかりにスベリ台みたいになっていた斜面を勢いよく滑り落ちて(笑)→)崩壊! それに応じてブラインドデッドたちも滅びていくと・・・。いや、定番のオチだし、こういうのだってアリだとは思うけど、こんな簡単なことで呪いが解けるなら、とっくに誰かが解いておけよ! だって五百年でしょ、五百年! 七年ごとに七人、五百年に渡っていけにえに捧げてきたってことは、ほぼ五百人を死なせてるってことじゃない。村人、なにしとるねん。

 いやいや、プロットが月並で、ご都合主義的なところが多く見受けらる映画ではありますが、そこはそれオッソリオ。やっぱり一筋縄ではいかない! ところどころに常軌を逸したストーリー展開を用意していて、観客を当惑させてくれます。
 村人たちが知恵遅れの男を殺そうとするところが怖い! 主人公たちに村の秘密を話したばかりに、この男は村人たちから追い回され、石を投げつけられ、棒でこづかれ、崖から突き落とされてしまいます。ブラインドデッドも怖いけど、村人はもっと怖い! こういう暴力って普通にリアルだしね。
 ついでに言うと、この男は辛うじて助かって、主人公のお医者さんの家で治療してもらうことになるんだけど、今度はそこにブラインドデッドたちが押し入ってきて、剣で刺されて殺されてしまうの。たぶん、あの後、食われたね・・・
 この男がブラインドデッドたちに捕まって外に連れ出された時、主人公たちが全然助けようとしないところにも注目。
 主人公夫妻の友だちになったルーシーという娘もね、普通なら助かる役どころでしょ。いけにえに捧げられたところを駆けつけた主人公夫妻によって助けられたのに、逃げてる途中で取り残されて、結局はブラインドデッドたちに殺されてしまう・・・。なんのために助けたんだよ! ホント、元も子もないのお。
 この時も主人公夫妻は、取り残された彼女を助けに戻ろうとはしないんです。弱者は見殺しなんですか。あの状況じゃあしょうがないとも思うけど、やっぱり非情ですよねえ。

 オッソリオは、どうしてこんなにも執拗に、繰り返し、繰り返し、残酷な物語を描いたのでしょうか!? 彼の目的は、現実社会の残酷さ、非情さを描き出すことにあったのでしょうか? それともただの悪趣味?? (←たぶん後者・・・)
 まあ、スパニッシュホラーなんて、みんなこんな感じに荒んでるのであって、別にオッソリオの映画に限った話じゃないんだけど、彼の功績は、そんな破綻した内容の映画を、そこそこのクオリティーに仕上げたってこと。そこそこよく出来ているから、まんざら無視もできない。なにがしかの“真実”が描かれているように思えてしまう。ハタから見ればバカみたいでも、オッソリオ監督は真剣です。“ブラインドデッド・シリーズ”の根底には、古典への、ゴシックロマンへの、そして“奇なるもの”への嗜好があるんですよね。つまり愛です、愛(笑)。

 60〜70年代のホラー映画の監督たち、特にヨーロッパの職業監督たちのほとんどは、ジャンル映画になんの愛着も抱いていませんでした。いや、寧ろ軽蔑してたぐらい。彼らにとってジャンル映画は、単なるメシの種。だからやっつけ仕事が多い。そんな中でオッソリオみたいな人は貴重な存在です。彼は、引退後は画家として活動していたそうですが、その時に描いてたのも、やっぱり死霊や魑魅魍魎の絵。もちろん盲目の髑髏騎士も描いてますよ。ホント、好きだったんですねー。
 90年代には“ブラインドデッド・シリーズ”の新作も準備していたそうですが、撮影まで漕ぎ着けることはできず、2001年に他界。“あやかしのもの”に捧げられた82年の生涯でした。


 さて、いい加減長くなってきたので、そろそろまとめなければならないところなのですが、内容が散漫なままで一向にまとまる気配がありませんね。でも、それもしょうがないか。だってオッソリオの作風自体が、しごく散漫なのですから・・・(^^;
 それでも敢えて、トリロジーの完結にあたってシリーズを総括させてもらうとしましょう。

 ブラインドデッドたちが登場する一連の映画は、全部が全部傑作なわけではありません。いや、寧ろ駄作の方が多いかな? でも、この4本の映画は、未だに映画ファンたちを魅了し続けています。それは、オッソリオが示した“奇なるもの”に対する嗜好が、普遍的なものであったればこそなのでしょう。私たちもまた“奇なるもの”を愛しているんです。
 オッソリオの映画にはロマンが溢れています。彼はトラッシュ映画の世界に生きたロマン派です。正統から最も離れた正統、悪にして善、トラッシュにしてクラシック。“ブラインドデッド”は永久に不滅です。産みの親のオッソリオが葬られた後も、呪われた騎士たちは重たい墓石をもたげて姿を現すと、馬に跨り剣を振るい続けるのです。
映画の印象
/
降水確率20%
「曇り勝ちの天気になりますが、
ところによっては明るい陽もさすでしょう」
勝手に総評
1 5 10
私が愛している度
私が評価している度
一般人気度
マニア人気度
オススメ度
ソフト
 2005年11月現在、日本ではDVD化の予定はありません。アメリカでも質の悪い英語版商品しか出回っていませんでしたが、2005年9月、Blue Undergroundから決定版とも言える商品が発売されました。
The Blind Dead Collection(5-Disc Limited Edition)!!!
・『ブラインドデッド』シリーズ、全4作をニューマスターで収録!
・1作目と2作目は、アメリカ公開版とオリジナル・スペイン版、両バージョンを収録!!
・オッソリオ監督のインタビューやブラインドデッド誕生の経緯に迫るドキュメンタリーを収録した特典ディスク付!

・置き場所に困る棺おけBOX入り!!
 定価$99.95ですが、それなりに値引きしているお店も多いので、気になった方は購入を検討してみて下さい。リュージョン1ディスクのため、日本国内向けプレイヤーでは再生できないので注意!

 ちなみに、今回紹介した『テラービーチ/髑髏軍団美女虐殺』のディスクの仕様は以下の通り。
・音声: スペイン語/英語選択可
・字幕: 英語字幕ON/OFF可

*特典
・アメリカ版劇場予告編
・ポスター、スチルギャラリー

(2005/11/04)

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