| 白い肌に狂う鞭 | |
| La Frusta e il corpo/Le Corps et le fouet/The Body and the Whip/The Whip and the Body | 1963年 イタリア/フランス |
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| 悪魔のように残忍な男クルトが家族の住む城へ帰って来た。クルトの弟クリスチアーノと結婚したネヴェンカは以前クルトと恋仲だったが、今では彼を憎んでいた。そんな彼女をクルトは鞭打って失神させる。 ・・・その夜、クルトは首を刺されて絶命した。一体誰が彼を殺したのだろう? 彼に怨みを抱く使用人、彼を恐れていた父親も怪しかった。疑念渦巻く中、ネヴェンカはクルトの亡霊を見る。そして遂に第二の殺人事件が起きる。果たしてこれは亡霊の仕業なのか!? |
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| マカロニ・ホラーの巨匠、『血塗られた墓標』のマリオ・バーヴァが手掛けた恐怖映画。バーヴァと言えば、ダリオ・アルジェントの師匠にして、ティム・バートンから黒沢清まで、多くの映画人に影響を与えたことで知られる偉大な映画監督ですが、この映画では名義をジョン・M・オールドと偽って表記しています。偽名で監督ということですが、別にいかがわしいことをやってるわけじゃないんですよ。イタリアやスペインの映画人はみんな結構普通に偽名を使います。芸名みたいなものですね。バーヴァは当時まだそんなに売れてませんでしたから、ハイカラな英語名にした方が外国に売り込みやすかったのでしょう。タイトルはキワモノっぽいですが、怪奇映画の名作として広く支持されている一本です。 悪魔のような男クルトを演じるのは「吸血鬼ドラキュラ」ことクリストファー・リー。申し分のない配役です。ともすれば単に凶暴なだけで終わってしまいそうなキャラクターを、クールに、そしてセクシーに演じています。早々に殺されてしまうので出演時間自体は多くないのですが、強烈な印象を残してくれます。たぶん多忙なリー(62〜64年間だけで12本に出演!)を短期間しか拘束できなかったために直ぐに退場させるハメになったのでしょうが、巧く設定に生かしていますよね。いなくなってからも、正に亡霊のように観客の心の中に立ち現れます。 はるばるイギリスからリーを招聘したことで予算が苦しくなったわけでもないでしょうが、この映画、美術や衣装こそ立派なれど、結構露骨に安いんですよね。登場人物は7人だけ。舞台は人里離れた古城とその周辺だけなので、他にエキストラもなし。恐怖映画と言ってもモンスターが出るでもなく、これと言った特撮もないので、地味なドラマみたいな感じ。でも、なかなか見応えはあるんですよ。イタリアの映画人はプロ意識が強く職人気質なので、B級のジャンル映画だろうと手を抜きません。その辺がAIP作品などに代表されるアメリカのB級映画との違い(←あれはあれで面白いだけどね)。繰り返し流れるテーマ曲も叙情的で胸に沁みるものがあり、メロドラマとして見てもイッパシの作品です。 謎解きに関しては、映画の最後にクリスチアーノが解説してくれて、結構ありふれたオチが付くのですが、この推理には異論を挟む余地がありますよね。彼は全てがネヴェンカの妄想だったとして、クルト殺しの犯人もネヴェンカだったと結論付けますが、一番怪しい容疑者は、クルトの、そしてクリスチアーノの父親です。彼はクルトを恐れており、クルト殺害の直前には不審な態度を見せています。その嫌疑は最後まで晴れません。また、観客しか知る由のないことですが、クルトは殺害される前に謎の女性の声を耳にしており、彼が自殺に追い込んだ不幸な女性、使用人の娘の亡霊がクルトを取り殺したようにも見えます。 亡霊が存在しなかったとは思えません。クルトの亡霊はネヴェンカに、彼女が知る由もない事実を教えたりしています。クルトのものと思しき亡霊の声は、ネヴェンカだけでなく、クリスチアーノと使用人の男も耳にしています。 ここで注意すべきは、クリスチアーノがネヴェンカのことを愛しておらず、別の女性と恋仲にあるという点です。彼は信じたくないことは信じようとはせず、事実を自分の都合のいいように解釈しているのではないでしょうか? 彼は全ての罪を不貞を働いた妻ネヴェンカに押し付けようとしています。 いや、犯人の姿が見えないクルト殺害シーンに象徴されるように、事件の真相は漠として知れず、如何様にも解釈することが可能です。しかしどちらにせよ、クルトが死後もネヴェンカと邂逅していたということは事実でしょう。それは妄想を超えて、限りなく実存的なレベルで・・・ 映画のラストで最期の抱擁を交わすクルトとネヴェンカ。そこに駆けつけたクリスチアーノには一人虚空に手を回すネヴェンカの姿しか見えませんが、ネヴェンカに感情移入している観客には、しかとクルトの姿が見えたはずです。 この映画は恐怖映画である以上に、生死を超えた愛の物語、幻想的なラヴ・ストーリーだったんですね。そう思うと、結構胸に迫って来るものがあるじゃありませんか(*^o^*) SM的要素を取り入れている点でもこの映画は特徴的です。クルトに鞭打たれてよがるネヴェンカ。その表現は結構露骨で、60年代の映画としては過激な部類です。恐怖映画としての体裁を繕うことで誤魔化してはいますが、明らかに変態的です。でも、死をもってしても引き離せない二人の姿からは深い愛情が読み取られ、本来は恐怖シーンとなるはずの亡霊の登場場面が、官能的な色彩に彩られて見えるのです。 一般的な常識が否定するものを、この映画は暗に肯定しています。亡霊、タブー・・・。クリスチアーノは否定して、多くの良識的な観客たちも彼の見解に同意することで納得しようと努めるでしょうが、全ては不可解なまま終わるのです。 この映画は単なるホラー映画として割り切るには、あまりにも複雑な表情を持っています。でも、同時に極めてホラー映画らしい映画だとも言えます。それは信じ難いものを信じさせ、怪しげなもの、奇なるものに対する愛を感じさせてくれるからです。ここにはホラー映画特有のロマンがあります。 映像的にも内容的にもバーヴァのカラーが存分に発揮された『白い肌に狂う鞭』は、マリオ・バーヴァの代表作であるばかりでなく、怪奇映画を代表する作品です。ホラー映画ファンならずとも必見の名作だと言えるでしょう。
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| DVDは紀伊国屋書店より2005年7月に「映画はおそろしい ホラー映画ベスト・オブ・ベスト DVD-BOX」に収録されて発売されました。特典は劇場予告編とフォトギャラリーです。片面一層ディスクですが、画質などのクオリティーに問題はないですよ。 ちなみにこのDVD−BOXには、他にジャック・クレイトン監督の『回転』とジョルジョ・フェッローニ監督の『生血を吸う女』が収録されています。どちらもホラー映画の名作としてカルト化しながら、今までソフト化されずに幻と化してした作品です。マニア驚喜のラインナップ! 黒沢清監督が選出したホラー映画のベスト3だそうです。紀伊国屋の着眼点は面白いなあ。こういう企画をどんどん続けてほしいですね。 |
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(2006/1/19)
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