| キル・ビル Vol.2 | |
| Kill Bill: Vol. 2 | 2004年 アメリカ |
|
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 組織の裏切りによって愛する家族を殺され、自らも瀕死の重傷を負った女殺し屋ザ・ブライドは、憎き毒蛇暗殺団のメンバーをオーレン・イシイ、ヴァニータ・グリーンと討ち取ってきた。残るは三人。バド、エル・ドライバー、そしてボスのビルだ! まずは標的を、今はストリップバーの用心棒に身をやつしているバドと見定めたザ・ブライドは、彼の住むトレーラーへ向かって様子をうかがう。しかし、機を見て斬り込んだザ・ブライドを待っていたのはショットガンの洗礼だった! 深手を負い、武器であるハンゾウ・ソードを奪われたザ・ブライドは棺に入れられ生き埋めにされてしまう! 絶望的な状況の中で、ザ・ブライドは、昔、中国の霊山で拳法の達人パイ・メイ老師の下で修行していた時のことを思い出していた・・・ |
|
| クエンティン・タランティーノがユマ・サーマンを主演に迎えて贈る、ジャンルごった煮のハチャメチャ・エンターテイメント作品『キル・ビル』シリーズ第二弾! 一般的に前作よりつまらないと言われてるけど、そんなことはないと思うぞ。個人的にはこっちの方が楽しめた。 確かに『キル・ビル Vol.1』は派手な映画でした。大人数での立ち回り、大流血スプラッター。アニメの挿入やヤクザ映画のパロディーなどもあり、日本リスペクトも顕著でした。栗山千明ちゃんの活躍も眩しかったです。ジャンル映画ファンが喜ぶものがいっぱいに詰まっていましたね。・・・でも、どこか無理してるような感があったことも否めません。全体にギコチなくて、どうもノリ切れませんでした。タランティーノは自分を見失っていたのではないでしょうか? いやいや、『キル・ビル』が彼の好きなものをいっぱいに詰め込んだ映画であることは分かります。でも、好きだからと言って上手く撮れるというわけではありません。マニアが作った映画はつまらないとよく言われますが、あの映画もその轍を踏んでしまったと思います。自分の中のマニア的な部分と上手く折り合いをつけてきたタランティーノらしからぬ失態ですね。いやまあ、失態は失態でも、微笑ましい失態ではあるのですが・・・ でも、アクション・シーンの出来が悪いのは頂けません。特にクライマックスであるはずの「青葉屋の死闘」ときたら・・・。チャンバラはテレビ時代劇にも負けてるし、カメラを変な風に動かしてみたところでサム・ライミには敵わない。スプラッターという点に関しても、ピーター・ジャクソンには遠く及ばない。個々のショットの出来はまあまあだと思いますが、シーンとしてのつながりが悪いので全然映えてこないのです。タランティーノってアクションを撮るのが下手なんでしょ? 確かにタランティーノは活劇的な映画を撮ることを得意としてきましたが、あくまでもそれは“活劇的”なものであって、“活劇”そのものとは違いました。『レザボアドッグス』然り、『パルプ・フィクション』然り。「いやいや『フロム・ダスク・ティル・ドーン』がある」という人もいるかも知れませんが、あれはロバート・ロドリゲスの仕事でしょう。 ロドリゲスはアクションにコダワリのある監督です。それに対してタランティーノは、アクションというものにそれほどコダワリがあるとは言えません。そのことは二人のデビュー作を見れば明らかです。予算がないのでアクションを割愛した『レザボアドッグス』。予算がなくてもアクションを見せ切ろうとした『エル・マリアッチ』。よく一緒くたにして語られる二人ですが、その個性は似て非なるものなんですよね。だからこそ衝突せずに仲良くやっていけるのでしょうが。 『キル・ビル Vol.1』は、そんなタランティーノが初めてアクションを正面に据え、活劇を撮ろうとした映画だったわけですが、正直言って馬脚を晒す結果になってしまったと思います。決して水準以下の出来とは思いませんが、盛り上げるのが上手いタランティーノ。引っ張りに引っ張って、盛り上げに盛り上げてから展開させるものだから、自分でハードルを高くしてしまったと思います。そもそもこういう典型的なエンターテイメント映画みたいな語り口がタランティーノの領分じゃないでしょ。 タランティーノが今までやってきたのは、引っ張って引っ張ってから、・・・スカす! 盛り上げて盛り上げてから、・・・スカす! というように、見せ場をスカしていくことだったでしょ。この点が、私がタランティーノの映画を“活劇”ではなく“活劇的”と評する理由です。観客が期待しているであろう活劇を回避して、普通ならアクションが展開される場面で会話を始めさせたりします。よくタランティーノの映画は下らない会話の部分が面白いと言われますが、その通りです。逆説的ですが、彼は本来なら見せ場にならないようなダレたシーンをエキサイティングな見せ場に変えてしまうのです。ある意味で知的とも言えるアプローチですね。タランティーノにとっては会話こそがアクションなのです。 『キル・ビル Vol.2』を見た時、「タランティーノは本来の自分を取り戻したな」と思いましたね。しょっぱなから、ストリップバーの用心棒に身をやつしたバド(マイケル・マドセン)のさえない日常が描かれます。彼に向かって雇い主の男が説教をダラダラと。なんというテンションの低さだ(笑)。しかし、映画は少しずつ緊張を高めます。バドが住いであるトレーラーに帰ると、そこには復讐を誓うザ・ブライド(ユマ・サーマン)が潜んでいるのです。様子を探り、斬り込む機をうかがうザ・ブライド。 さあ引っ張ってます、引っ張ってます! 観客の期待も高まりますね♪ バドはザ・ブライドの復讐を受け入れる気でいることを匂わしたりもしていました。この後にはバドの贖罪が描かれるのでしょうか? それともやはり激しい立ち回りが!? しかし、タランティーノは観客の予想を裏切る決着を用意しています。ザ・ブライドが斬り込んだ瞬間、ショットガンが炸裂! 深手を負ったザ・ブライドは戦闘不能状態に陥ってしまうのです いいですねー、この呆気なさ。こうした「スカシ」こそタランティーノの持ち味。前作でああいう立ち回りを見せてきただけに尚更効果的です。一本の映画としては少々物足らなく思えた『Vol.1』も、この『Vol.2』のための前フリだったと思えば申し分ないではありませんか。ホント、当初の予定通り一本の長い映画に仕上がっていれば文句なかったのに! 一番簡単な標的に思えたバドが実は一番の強敵だったというのも面白いですね。生きる気力を失くした世捨て人とは仮の姿。反省した風なことを言いながら、実は虎視眈々とザ・ブライドが来るのを待ち構えていたという・・・。渋いなー。『キル・ビル Vol.2』のDVDの初回出荷版にはジャケットの裏面に毒蛇暗殺団のメンバーの内誰か一人をフォローした裏表紙が印刷されているという仕様があって、当然エル・ドライバーかザ・ブライドを期待していた私としては、バドが出て少々ガッカリしてしまったのですが、今では結構満足してます(笑)。 ちなみにこのシーンに流れるBGMはモリコーネの『夕陽のガンマン』。モリコーネの曲は他にも三曲ぐらい使われてます。そう、前作では日本の70年代アクションや仁侠映画にオマージュを捧げたタランティーノが、今回意識したのはマカロニ・ウエスタンなんです。この点も映画の完成度を引き上げるのに貢献していますね。ヤクザ映画や仁侠映画はタランティーノにとって所詮外国の文化に過ぎないわけですが、「マカロニ」とは言っても、「ウエスタン」は他でもないアメリカの文化。語り口が地に足着いてます。どんなに頑張っても出来の悪いパロディーにしか見えず、いまひとつ感情移入できなかった前作の場合と異なり、世界観がしっかりしてるので物語に入り込み易いんです。ザ・ブライドの回想シーンでカンフー映画のパロディーが展開されたりもしますが、比重としては少ないので問題なし。・・と言うか、70年代日本映画よりもジャンルとして確立されている香港映画はパロディーするにしてもやり易いのでしょうが。 この後、本筋とは関係ないサブキャラとの絡みなど、いかにもタランティーノらしいエピソードを挟みながら話は進み、いよいよ迎えるクライマックス。ザ・ブライドことベアトリクス・キドーが武装してビル(デヴィッド・キャラダイン)のもとへ乗り込んでいくと、そこに待っていたのは大勢のツワモノたち! ・・じゃなくて死んだものと思っていた彼女の娘。昔ベアトリックスと恋仲だったビルは二人の子供をこっそり育てていたのです(←これは『Vol.1』のラストで明かされている事実なので観客にとっては驚きではないのですが)。激しい戦いどころか、娘を挟んで家族のだんらんを始めてしまうベアトリクスとビル。とんだ肩透かし・・・と思ってしまいそうなところですが、実は違うんですよね。幼い娘の前なので表面は取り繕っていますが、心の中では憎悪をたぎらせ、火花を散らし合っているんです。もちろん憎悪だけでなく、その他の複雑な感情も・・・。「『Vol.1』で見せ場を出し切ってしまったので『Vol.2』は地味だ」と言う人がいますが、全然ハズれてますよね。『Vol.2』で描かれている内面の戦いは、ただただ外敵と衝突していただけの『Vol.1』よりも、ずっと激しく、ずっとエキサイティングです。 娘を寝かしつけ、その寝顔を優しく見詰めるベアトリクス。これが最期の別れになるかも知れない。彼女は今度こそビルと決着をつけるために、死地に赴く覚悟です。バックに流れるマルコム・マクラーレンの「About Her」が雰囲気を盛り上げます。でも、「今度こそ」と思っていると、やっぱりそこはタランティーノ。互いの技を尽くしたチャンバラが始まるかと思わせて、唐突にビルの「ヒーローコミック談義」を始めてしまうのです。「私はとりわけスーパーマンが好きだ。スーパーマンはとてもユニークなキャラクターだ」とかなんとか。麻酔を打たれて身動きのとれないベアトリクスは、そんなビルの話にじっと耳を傾けるしかありません。 凄い展開ですね。前作も合わせれば長々4時間も繰り広げてきた物語のクライマックスをこんな無駄話に費やしてしまうなんて・・・。でも、ただの無駄話のように思われたこの話が、だんだんと主人公のアイデンティティーに切り込むような深刻味を帯びてくるんです。泣き出してしまうベアトリス。上手いじゃないの♪ これがタランティーノの語り口だ! この後、「青葉屋の死闘」の派手な立ち回りとは対照的なイスに座ったままの決闘が描かれるのですが、やっぱりアクションを撮ろうとするとボロが出る。律儀な写し方をしてしまっているせいで、すぐに先が読めてしまうの。盛り上がらないチャンバラ・・・。でも、決着のつけ方はサイコーです。デヴィッド・キャラダインの見事な死に様を見せてもらっただけで大満足ですね。 ・・・彼はハナから死ぬつもりだったのかも知れません。自分のようなワルには娘をまともに育てることができないと、彼女をベアトリクスに託そうとしていたのかも知れません。贖罪の意味も込めて・・・ 娘がテレビを見ている時に、ベアトリクスは席を立ってバスルームへ行くと、「ありがとう」と言いながら一人泣き崩れます。これは神様に対するお礼のようにも聴こえますが、やはりビルの気持ちを汲んでのことだったのでしょう。肩を寄せ合う母と子の笑顔で映画は幕を迎えます。いい映画じゃないか(笑)。 「ユマ・サーマンが歳食っていてアップがキツい」とか失礼なことを言ってる人もいましたが、全然違いますよね。この映画におけるユマの役回りは、レッキとした一児の母なんです。キャピキャピした若い女優に演じられるものではありません。タランティーノによれば、この映画の構想は『パルプ・フィクション』撮影時にユマと出会った時から練られていたそうなので、撮影までに10年がかかっているわけですが、この年月は無駄にはならなかったと思います。まさかユマが歳を食うのを待っていたわけでもないでしょうが、ユマの年齢に合わせて脚本が変更されていったであろうことは推測できます。正にユマを引き立てるための脚本です。その顔に刻まれた年輪(←失礼)までもが魅力的に感じられます。ユマも幸せですよねー。こんな映画を作ってもらえて。人生の宝物でしょ。 エンディングがまた楽しいです。普通の映画2本分、いや3本分のボリューム! まずは陽気なラテン・ミュージック(Chingonの「Malaguena Salerosa」)に合わせて『Vol.1』、『Vol.2』のメインキャラ総登場の名場面集的なエンディング。あんまりメインでないキャラまでフォローしてるところにニンマリさせられます。ユマ・サーマンの役名紹介のところに「Mommy(お母さん)」と出す芸の細かさ! 続けてB級映画や昔のテレビドラマを思わせるモノクロ映像のエンディング。バックに流れるのはShivareeの「Goodnight Moon」。雰囲気満点です。最後は黒地に文字だけのスタンダードなエンドクレジットですが、「さそり」こと梶芽衣子が歌う「怨み節」が流れます。やっぱり『キル・ビル』と言ったらこの曲っしょ! 普通こういう長いエンディングって水増ししてるみたいで印象良くないのですが、この映画は全然別です。もう楽しいったらありゃしない。そして少しシンミリもさせられる。こんなバカ映画なのに、不覚にも感慨に耽っちゃってる自分がいます(笑)。色々ケチもつけてきましたが、ホント見てきて良かったなーって思わされました。 『キル・ビル』は、是非『Vol.1』、『Vol.2』と続けて見てもらいたい映画です。技巧のあるタランティーノのことなので、どちらもそれなりにまとめてはいますが、元々1本の大長編にするべく構想されていた企画なだけに、やっぱりその魅力は続けて見た時にこそ伝わると思います。 ところで先頃小耳に挟んだのですが、なんとタランティーノはこの『キル・ビル』を再編集して当初の構想通りの1本の映画にする予定があるというのです! 確定した話じゃないですが期待しちゃいますねー。変に奇を衒ったような編集をされていたらシラケてしまうところですが、エンターテイメントというものをよく分かっているタランティーノのこと。オリジナルの持ち味を損なわずに上手くまとめてくれると思います。たぶん30分もある「青葉屋の死闘」は大幅にカットされてキレのある名シーンになってるんじゃないでしょうか?(それとも意地を張って少しもカットしないか?(^^;)) 『キル・ビル』の全貌が明かされるのはまだまだこれからなのかも知れません。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| DVDは2004年10月に発売されました(発売:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン、販売元:ジェネオン エンタテインメント)。 *収録特典 ・壮絶!ビル幻の必殺ファイト(未公開シーン) ・熱狂のマリアッチ(CHINGONライブ at 「キル・ビル Vol.2」プレミア・ム・パーティー) ・レジェンド・オブ・「キル・ビル Vol2」(メイキング) ・劇場予告編集 ・メンバー・オブ「キル・ビル Vol.2」(静止画、スタッフ・キャストプロフィール) 3000セット限定(←限定でもなんでもない数字だが・・・)で「キル・ビル Vol.2 プレミアムBOX」も発売されました。こちらの商品には下記の特典物が封入されています。 ・カンフーTシャツ ・ベア・ブリック(“LOVE BRIDE VERSION”) ・パイ・メイ キーホルダー ・メモリアル・カー(10枚) ・オールカラー・ブックレッ(24P) |
|
| (2006/2/27) |
関連作をチェック!
| 関連作品 | |
| キル・ビル Vol.1 |