| 永遠のこどもたち | |
| El orfanato | 2007年 スペイン/メキシコ |
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| スペインのアカデミー賞と呼ばれるゴヤ賞で史上最多の14部門にノミネートされ、新人監督賞や脚本賞など7部門で受賞したホラー映画の話題作。思わせぶりな邦題が付いてますが、原題はシンプルに『孤児院』。 <ストーリー> 幼少の砌を孤児院で過ごした女性ラウラは、医師である夫カルロスと幼い息子シモンを伴って、三十年ぶりに懐かしい孤児院に戻ってきた。今は廃屋になっているこの建物を改装して、障害のある子供を預かる施設を始めるためだ。開園の準備は順調に進んだが、ラウラには気がかりなことが・・・。この建物に越してきて以来、元々空想癖のあったシモンの言動がエスカレートして、空想の友だちとの遊びに没頭するようになっていたのだ。彼の描いた“友だち”の絵の中には、カカシの覆面を被った不気味な子供の姿も・・・ 施設の開園パーティーの日、ラウラはシモンの絵にそっくりな「覆面の子供」に遭遇して怖い思いをする。不穏な気持ちに襲われたラウラはシモンを探すが、彼は忽然と姿を消していた! 警察も捜査に乗り出すが、手掛かりは一切見付からない。開園パーティーに訪れた人の中に、ラウラが出遭った「覆面の子供」を見た者もいないという・・・ シモンは一体どこに消えてしまったのか!? そしてシモンが言っていた“友だち”の正体は!? 愛する息子を取り戻すために孤軍奮闘するラウラは、孤児院に隠された恐ろしい秘密に迫っていくが・・・ 日本では一過性のブームに終わってしまいましたが、世界ではまだまだホラー映画の人気は根強いです。「恐怖」という根源的な感情を扱っているのでボーダーレスに世界市場を狙えるということもあるのでしょう。今まであまりホラー映画というイメージのなかったフランスからも『ハイテンション』、『屋敷女』といった話題作が次々と送り出されていますし、イタリアではダリオ・アルジェントが名作『サスペリア』の続編を30年ぶりに発表(←コケたけど)。世界中でホラー映画が量産されて、かつてないほどの活況を呈しています。 そんな中、作品の質で他を圧倒しているのがスペイン映画。ハリウッド映画よりも立派なくらい。アメリカではあくまでもB級扱いになってしまうところを、一流の映画会社(←スペインにおける)が本腰入れて作ってますからね。俳優のレベルも高いし、映像も豪華。実際、プロダクションバリューだって、アメリカ映画に勝っているんじゃないかしら? ただ、この「立派さ」というのが映画の面白さに直結するわけじゃないのが難しいところ。一級品の映画を目指した「文芸路線」のホラー映画というのが増えてきたのですが、深刻なテーマをB級ホラー的手法で料理した軽薄な作品や文芸路線を意識し過ぎるあまりホラー映画としては機能しなくなってしまったチグハグな作品がほとんどで、個人的にはいい印象を持っていませんでした。世評は高いんですけどね、この手の映画。 この映画も配給会社がそういう路線で売りたかったらしく、『永遠のこどもたち』なんていう思わせぶりな邦題(←劇中にも登場する「ピーター・パン」からの引用)を付けた上で、「母と子の絆」みたいのを強調して宣伝していたから、ちょっと敬遠していたのですが、ハリウッドでリメイクされるという噂が流れたので、「先にオリジナルを見ておかないと」という程度の軽い気持ちで、あまり期待せずに見たのですが・・・ これはやられた!! 疑心暗鬼で見てたんだけど、グイグイと引き込まれちゃった。子供が難病だったりとか、お涙頂戴的なあざとい部分も見受けられるのですが、ドラマに力があるから全然気にならない。全部プラスに働いてる。術中にハマって最後には泣かされちゃったけど、全然悪い気はしない。これは清々しい涙。 こんなことを言っていると、それこそ文芸路線のヌルイ映画みたいに誤解されそうだけど、それでいてホラー映画としても押さえるべきところはしっかりと押さえてあるの。見せないことで逆に怖がらせる「抑えた演出」もあれば、観客をギャッと言わせるような「ショック描写」もあり。『ヘルハウス』よろしく霊能者を連れた調査団が孤児院を調査する場面では、監視カメラの映像が多用されて、今時流行りのモキュメンタリー(擬似ドキュメンタリー)みたいになったりとか、イヴェント盛りだくさん。上品ぶってるだけで退屈な「文芸ホラー」とは違います。 同じスペイン映画界出身のアメナーバル監督の『アザーズ』を思わせる部分があったり、製作総指揮を務めているギレルモ・デル・トロ監督の『デビルズ・バックボーン』とプロットが似通っていたりするなど、色々とイイトコ取りした脚本であることは明らかなのですが、ここまで高いレベルでまとめてあったら文句ないでしょ。物語に破綻はないし、伏線の張り方も見事。B級映画よろしくなんでもかんでも詰め込んであるようでいて、その実、一分の無駄もなくタイトに仕上がってる。これだけの脚本が書けちゃったら、もう映画の成功は保障されたようなものだよね。 「B級」と言えば、この映画、アメリカ製の某有名B級ホラー映画と筋立てがほとんど一緒なんですよね。昔子供が溺死していて、その母親が復讐に乗り出して、死んだはずの子供がマスクを被って現れて・・・って、そう、あの映画! ほとんどリメイクと言っていいほど一緒なんですが、これは単なるパクリじゃないですよ。ちゃんと意図を持って用意された“仕掛け”で、その意図は見てれば分かると思うのですが、そうした意図うんぬんよりも、あんな程度の低い映画を下敷きにしながら、こんな風格のある映画を作ってしまったことの方に感心。「換骨奪胎」とは、まさにこのこと。つくづく良く書けた脚本だと思う。 脚本のことばかり褒めてますが、べつだん演出だって悪くないですよ。感情が高揚するエモーショナルな場面では、カメラワークや音楽がいささかオーバーになる感もありますが、基本的にはとても堅実。何事も過不足なくこなす仕事ぶりで、新人とは思えないほどの安定感を示してます。普通、才能をアピールしようとして奇を衒ったことをやっちゃったりするもんなんですけどね。 これは一見すると消極的な姿勢のようでもありますが、実際には違います。その証拠に、この映画には方向性の定まっていない映像がありません。ミュージック・クリップ出身の監督が増えたせいか、最近は、大雑把な「スタイル」こそ持っていれど、脚本の意図は反映していないような曖昧な映像が氾濫していますが、この監督は、脚本の良さをきちんと把握した上で、それを最大限に生かす手段を講じたのだと思います。脚本が主役で、演出はあくまでもサポート役。この映画の場合はこれで正解。演出がうるさかったら物語に没入できないもんね。 なんだかちょっと褒め過ぎ? 確かにこの映画、崇高な理念を掲げた「芸術映画」とかじゃないですよ。ショーパフォーマンス的な見せ場もあれば、扇情的な要素で観客を引き付けるようなあざとい部分もある。あくまでも商業ベースの娯楽映画。だけど、「器に見合った中身が詰まっている」と言うか、この内容、このプロダクションバリューの映画としては、やるべきことは全部やってる、表現できることは表現し尽くしているので、そうした意味では一個の「完成された作品」だと言うことができます。厭味じゃなくて、いい意味で、「文芸路線のホラー映画」の傑作! まあ、ぶっちゃけて言うと、話が個人的に“ツボ”だったんですよね。結構暗い話ではあるけど、この暗さが胸を打つ。人によっては「この暗さが嫌」って感じるでしょうが・・・。確かに、いささか悪趣味に思えるところもある。特に終盤には、凡百の残酷ホラーが束になっても敵わないような“残酷な展開”が待っていますし・・・。でも、この映画には、そうした暗さを補って余りあるだけの“優しさ”もいっぱいに詰まっていると思う。暗さじゃなくて、優しさの方に涙しちゃう。ああ、思い出すだけでも泣いちゃいそうだ!(ToT) *以下ネタバレ注意! *この映画の場合は特に、見た人は以外は読んじゃダメ! ■私の涙腺のツボ■ どうしてあの幽霊が洞窟の中にいたのか・・・、分かったら可哀相過ぎるでしょ! いつもマスクを被っているトマスという少年が、孤児院の子供たちのイジワルでマスクを脱がされた。彼は、醜い顔を見られたくない一心で洞窟に閉じ篭って、そのまま満ち潮で溺れ死んだ・・・。これだけでも充分可哀相だけど、トマスは、幽霊になった後も、ずっと怯えながら洞窟に閉じ篭っていたんですよ。三十年間も! 可哀相、可哀相過ぎる! ・・・でも、私の“泣きのツボ”はここじゃない。 洞窟探検中にトマスを見付けたシモン。彼は、トマスのことを怖がったりするのではなく、「キミは誰? ここで何をしてるの?」と話しかけ、「ウチにおいでよ!」と誘います。それに応えて孤児院へやって来たトマスは、自分にイジワルをして、あまつさえ死に追いやった子供たち(の幽霊)と再会することになるのですが、最後には、みんな仲良しになってるの。優しい話でしょ。誤解や恐れは氷解したの。だから、もうマスクは必要ない。そこには赦しと無垢な喜びだけがある。幼年時代へのノスタルジー。生は暗く、死は優しい・・・。あーあー、こういう話に癒されるなんて、私も相当疲れてるな〜
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| DVDは2009年5月に発売されました。特典として、メイキングの他、オリジナル版特報やオリジナル版予告編などを収録。本編のクオリティーも良好なので、安心して購入できる商品です。 | |
(2010/3/25)
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