ドーン・オブ・ザ・デッド
Dawn of The Dead 2004年 アメリカ
スタッフ/キャスト
製作: マーク・エイブラハム
エリック・ニューマン
リチャード・P・ルビンスタイン
製作総指揮: アーミアン・バーンスタイン
トーマス・A・ブリス
デニス・E・ジョーンズ
監督: ザック・スナイダー
脚本: ジェームズ・ガン
撮影: マシュー・F・レオネッティ
音楽: タイラー・ベイツ
出演: サラ・ポーリー
ヴィング・レイムス
ジェイク・ウェバー
メキー・ファイファー
タイ・バーレル
マイケル・ケリー
98分
ディレクターズカット版は109分
レビュー
 『Dawn of The Dead』。ホラー映画をそこそこ見ている人には今更言うまでもないことだけど、これはゾンビ映画の名作中の名作『ゾンビ』の原題です。監督は(これも言うまでもないことだけど)、ゾンビ映画のクラシック『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を撮った、元祖ゾンビ映画監督ジョージ・A・ロメロ。後年のホラー映画に多大な影響を与え、製作から30年以上を経た今でもリスペクトされ続けている偉大な作品です。それをリメイクしようなんてバカがいた! ホラー映画ファンはもちろん激怒です。そのうちだんだんと情報が入ってきて、これが「走るゾンビ」ときたもんだ! ゾンビは「のろのろ」しているからゾンビなの! それがジョージ・A・ロメロが完成させたゾンビ像。「走るゾンビ」の映画に『Dawn of The Dead』を名乗る資格はありません! それに、「走る」と言ったって、『バタリアン』やイタリアのZ級ゾンビ映画・・・、最近ではイギリスで撮られた秀作『28日後...』まで、枚挙にいとまがありません。全然新しくねーんだよ! 監督はCF撮ってた新人だって言うし、こりゃあ全然期待できないわと、無視を決め込んでおりました。・・・が、しかし、封切られたら、これがホラー映画としては異例の大ヒット!(←アメリカで) もしかしたら傑作なのかも!?・・と、ほのかな期待が膨らみ始め、結局は見てしまったのでありました・・・

 主人公は看護士を務める女性。今日は急患が多くて仕事もハード。噛み傷を負った不審な患者が運び込まれてくるけど、そんなことに気をかけている余裕はない。臨時ニュースも見てられない。家に帰ってダンナとイチャイチャしたら、疲れてるからグッスリ寝ちゃう。目覚めた時、世界が一変しているとも知らずに・・・

 導入部の印象は悪くないですね。一見平穏な日常。だけど、破滅の予兆がところどころに顔を覗かせる・・・。そんでもって夜が明けてからは、一気呵成にパワー全開!

 お隣の女の子が突然襲ってきて、愛するダンナはあっさり死亡・・・と思ったら、すぐに生き返って(?)凶暴化! 目の色変えて襲いかかってくるから、もうとにかく逃げるしかない! でも、外に出たら、辺りはすでに大パニック! 逃げ惑う人やオッカナイ人がいっぱい! 車に乗って逃げるけど、見渡す限りが混乱と狂気に包まれているのであった・・・

 「愛するダンナが死亡してショック! その上ゾンビ化してダブルショック!!」な状況にもかかわらず主人公の女性が妙に的確に行動してるのに違和感があるけど(←平凡な看護士という設定なのに、ヒーロー映画のヒーローみたい)、たたみかけるように展開する破滅のパノラマは、なかなかに見応えがあります。第一印象が大事と思ったのか、ゾンビの暴れっぷりを殊更にハイテンションに描いて、「走るゾンビ」の意義を強調しているところもイトヲカシ。ここでやっとオープニングクレジットとなるのですが、ここまでは、ゾンビ映画ファンの不安を払拭するのに充分な出来と言えるのではないでしょうか? 私も結構煽られました(笑)。
 ネタバレになるのでストーリーの紹介はこの辺で止めときますが、まあ遅かれ早かれ、ショッピングモールへと行き着くわけです(笑)。

 新機軸のゾンビ映画をキドってはいますが、コレって、ゾンビ映画ファンたちがあーだこーだ言いながら出し合った“オレ流ゾンビ映画”のアイディアをちりばめた、オマージュと言うかパロディー的な作品なんですよね。例えば、「ゾンビは犬を襲わないだろ。じゃあ犬を使って荷物の受け渡しをするのはどうだ」とか、「色々な遊びに飽きたら、ゾンビを撃ち殺すぐらいしか楽しみが無くなるだろ。じゃあ、ゾンビの中にいる有名人そっくりさんを探して撃つのはどうだ?」とか、「オレだったら、ゾンビに囲まれたら完全装甲したトラックで脱出だぜ! ついでにチェーンソー用の窓も欲しいな!」とか、徹夜トークに花を咲かせたような、ギークなアイディアがいっぱい(^^;。でも、中には印象的なものもあって、結構面白いんですよね。
 私のお気に入りは、ゾンビの大群に包囲されている中、向かいの建物の屋上にいる生存者と手書きのフリップでコミュニケーションを取るところ。「郵便チェス」みたいに、フリップに指し手を書いてチェスの勝負をしたりとか、ほのぼのしていて良かったです。殺伐とした物語の中の一服の清涼剤。
 希望への船出が一転、絶望の底に叩き込まれるラストも好印象。派手なヘヴィメタ音楽で誤魔化してはいるけど、このくらい希望の無いエンディングは、数あるゾンビ映画の中でも結構異色ですよね。お隣のカワイらしい女の子がゾンビ化してたり、愛するダンナがいきなり死亡しちゃう冒頭の展開からしてそうだけど、後半ではアレがあーなっちゃったり(←自主規制*若者カップルの末路)とか、情け容赦ない展開が多くて、ゾンビ映画としてはなかなか志が高いです。

 と、まあ、この映画、見どころはなかなか多いのですが、マズいところも結構多い。まず脚本がダメっぽ。寄せ集めのアイディアで作ったからだと思うけど、展開が強引で説得力の無いところが多い。例えば、ラスト近く、決死の脱出行を繰り広げる時に、半袖Tシャツじゃダメでしょ。「あれじゃゾンビに噛まれるよ」と思っていたら、案の定噛まれるし。「これなら大丈夫!」と思っていたものがダメになるのは予想外で面白いけど、「こりゃあダメでしょ」と思っていたものがダメになっても衝撃が無いし、同情もできない。「噛まれて死んじゃう!」の悲劇的な状況で御涙頂戴をやりたかったんだろうけど、そこまで持ってくやり方が強引。その他大勢はあっけなく死ぬクセして、こういう時だけ感傷的になるのにも違和感があった。あんまり爽快感の無いお話だからサービスしたつもりかも知れないけど、わざとらしく憎まれ役を用意しといて、最後の方でそいつを決めゼリフ言いながら倒したのにもシラけた。大筋の物語から浮いてるし、すっげーステレオタイプ・・・。基本的に、キャラクターの人物造形が薄っぺらいんだよね。頼りになるイイヤツと、ムカツク嫌なヤツの分け方が安直。尻軽ネーチャンやホモのオッサンが活躍しちゃいけないのか(笑)。
 演出力が際立っていれば、脚本の拙さをフォローできる場合もあるけど、肝心の演出も微妙。いかにもCFで馴らしましたという感じの“スタイリッシュ”な映像は、キメキメ過ぎて、物語への導入を妨げている節がありましたし、カッコつけたカメラ割りも、深い感情を描かずに、表面をなぞっているだけのように見えました。観客の不安を煽って、もったいぶって引っ張って見せる場面で、これ見よがしのアップの多用とローアングルって、なんだよソレ。マカロニ・ウエスタンじゃあるまいし。
 割とメジャーなアメリカ映画だから、あんまり深刻にならないように、わざと軽く流している部分もあるんだろうけど、それにしても軽薄・・・、脚本も演出も軽薄ですね。これは、物語が殺伐としているとか、展開が残酷ということとは、また別ですよ。

 というわけで、完成度はあまり高くない『ドーン・オブ・ザ・デッド』ですが、見せ場には事欠かず、それなりに楽しめるのも事実です。初見の時はガッカリしたけど、DVDはついつい何度も見たくなっちゃいます。なんか今日も見てみたい気分(笑)。脚本か演出がもうホンのちょっとでも良く出来ていれば「傑作」になっていたかも知れないと残念には思ってしまいますが、21世紀以降に濫作されたゾンビ映画の中では、高ランクに位置すると思います。IMDbでの評価も高し。エンターテイメント性は高いですし、ゾンビ映画ファンじゃない人もお楽しみ頂けるでしょう。ゾンビ映画ファンの人は、『Dawn of The Dead』というタイトルのことだけ忘れてから見るようにして下さい(笑)。
勝手に総評
1 5 10
私が愛している度
私が評価している度
一般人気度
マニア人気度
オススメ度
ソフト
 DVDは2004年11月に発売されました(発売:東宝東和 販売:ポニーキャニオン)。予告編やメイキングも収録されていて、本編のクオリティーも良好。2006年7月に廃価盤(←あんまり思い切って安くしてないけど)も発売されたので、興味のある方はどぞ。
 ちなみに市販のDVDは、全て本編時間109分の「ディレクターズ・カット版」です。本編時間98分の「劇場公開版」は、レンタル版DVDに収録されています。見比べてみるのも一興ですが、まあ、そんなに変わらなかったりして・・・

(2008/6/10)

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