恐怖の足跡
Carnival of Souls 1962年 アメリカ
スタッフ/キャスト
製作: ハーク・ハーヴェイ
監督: ハーク・ハーヴェイ
脚本: ジョン・クリフォード
撮影: モーリス・プラザー
音楽: ジーン・ムーア
 
出演: キャンディス・ヒリゴス
シドニー・バーガー
フランセス・フェースト
ハーク・ハーヴェイ


83分
ストーリー
 若者たちを乗せた車が事故に遭い、橋から河へ転落した。捜索隊が動員されたものの状況は絶望的だ。しかし、メアリーという女性だけが、ただ一人岸にたどり着き、無事救出された。
 事故以来他人に心を閉ざしてしまったメアリーは、新しい生活を始めるために新天地へと向かう。しかし、その頃から、彼女は不気味な男の影に付きまとわれるようになる。彼は一体何者なのか!? 海辺に見える巨大な建物<廃墟になった遊園地>にも、何かただならぬものを感じる。突然周りの音が一切聞こえなくなり、自分の声も他人に聞こえなくなるという奇妙な体験もした。精神科医は、事故のショックによる幻覚だと診断したが、彼女にはどうしても納得ができない。不気味な人影に追い立てられたメアリーは、誘われるようにして海辺の廃墟へ向かうのだが・・・
レビュー
 さて、今回ご紹介するのは、激動の60年代に生まれた名作ホラー、『恐怖の足跡』です。「え? 名作? そんな映画知らないよ」というあなた、あなたイケてませんねー。この映画は、あのモダンホラーの代表作、ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』に多大な影響を与えているんですよ(*ロメロ本人談)。その他、近年のメガヒット作『********』の元ネタになったことでも知られています。アメリカでは、コダワリのラインナップとコダワリのクオリティーで知られるクライテリオンから豪華2枚組仕様のDVDが発売されています。これを見てなきゃ映画ファンとは言えないぜ!
 ・・・とか言いつつ私も最近まで見ていませんでした(^^; それと言うのも、日本におけるこの映画の認知度があまりに低く、「幻の名作」とも言われないほど“知られざる映画”だったからなのです。つい最近になるまでビデオもDVDも発売されていませんでした。でも、そこは映画マニアな私。全然予備知識はなかったけど、輸入盤を取り扱っているお店で目に留めた「CLASSIC GHOST MOVEIS」という映画3本入りのDVDを購入して、一足先に見ておりました。英語字幕も付いてないし、画質も最低クラスだったけど、今思えばこの映画を予備知識なしに見れたことは幸運だったかも知れませんね。というのもこの『恐怖の足跡』は、ラストのどんでん返しでも語り草になっている映画なのです。上の方でとある映画のタイトルを『********』と伏字にさせてもらったのも、このタイトルを出すとオチがバレてしまうからなのでありました。次の段落からはネタバレありで書きますので、気になる人はご遠慮下さい。まあ、もう40年以上前の映画だし、最近では色々なところでバラされてるので、今更隠すまでもないとは思いますが・・・

 不幸な自動車事故からただ一人生還したメアリーは、新天地で新しい生活を始めるも、どうしても周囲にとけ込めずにいた。そんな彼女に付きまとう不気味な男の影。彼は一体何者なのか? その真っ白な顔は生気を欠いていて、そう、まるで死人のようだ!!
 不気味な影は次第に数を増し、彼女の生活を侵食し始める。追われるように、いや、誘われるようにして海辺の廃墟へ向かうメアリー。彼女がそこで見たものは、Carnival of Souls・・・、死者たちのカーニバルだった・・・
 音楽に合わせて舞い踊る死者たち。その輪の中には“あの男”の姿もあった。メアリーは彼のダンス・パートナーの顔を凝視する。そこには、生気を欠き、真っ白になった彼女自身の顔があった・・・
 あの不幸な事故から一週間が過ぎた頃、捜索隊は河に沈んだ車を発見した。引き上げられた車の中を見て驚きの表情を浮かべる発見者たち。そこには助かったはずのメアリーの亡骸が横たわっていた・・・。THE END

 「主人公は実は既に死んでいた」。そう、もうお分かりですよね。この『恐怖の足跡』は、ナイト・シャマラン監督の『シックス・センス』(1999年米)の元ネタになったと言われているんです。『シックス・センス』の元ネタは『ザ・サバイバー / ジャンボ・墜落』(1981年豪)だとする意見もありますが、その『ザ・サバイバー』自体がこの『恐怖の足跡』のパクリなので、どちらにしても本作の多大な影響下にあると言えます。
 まあ今となってはそれほど斬新なネタとは言えませんが、いかにも「怪談」という感じで趣があるでしょ。バリバリのホラー映画というのとは違うかも知れないけど、「怪奇映画」としてのムードは満点です。でも・・・、でも、このオチの場面には致命的な欠陥が・・・! 死体役の女性の一人が、露骨に“まばたき”をしているんです。うわっ、酷いよ、目立ち過ぎだよ。初見の時から気になって気になって仕方ありませんでした。死んで直ぐなら痙攣もあるだろうけど、これは死後一週間は経過してる設定ですよ。どうやっても言い訳できません。全然死人に見えないので、「実は彼女は生きていた」というオチなのかと思ってしまったくらい。いや、話の脈絡から言ってそんなオチになるはずはないので、一応了解はしてるのですが・・・。これが人がどんどん死ぬようなおバカなスプラッター映画とかだったらそんなに気にならなかったと思いますが、雰囲気で見せてる映画なだけにイタいです。最後の最後で台無しって感じ・・・・・

 そんなわけで初見の時の印象はあまり芳しくなかったのですが、比較的画質が良好な国内盤(*レビュー下、ソフトの欄を参照)が発売されたのを機に再見してみたら、意外なほどに引き込まれた。なんなんだ、この詩情は!?
 たぶんオチを了解して見ていたからこそ感じられた詩情なのだと思います。「彼女は既に死んでいる」。しかし彼女はその事実に気付かずに、必死に生きようとしている。生きようとする意志があるからこそ彼女は現世に留まったのでしょう。でも、彼女は拒絶されていく! 生者に、そして“生”そのもの拒絶されていく・・・
 無意識の内に、恐らく彼女は“死”に誘惑されてもいるのだと思う。海辺に見える廃墟は、彼女の心を捕らえて放さない。生者の世界で落ち着かない彼女は、そこに安らぎを見出しているようだ。まるで“死”に包まるようにして・・・
 これは孤独な魂の遍歴を綴った詩です。哀しい哀しい詩です。自分では生きることを望んでいるのに、心は徐々に死んでいく・・・。「私たちも既に幽霊になっているのかも知れない」、そんなことを考えさせられました。

 なんか大袈裟なことを言ってるけど所詮ドライブンインシアター向けの低予算映画じゃないかと思われる人もいるでしょうが、いやホント、映像センスもなかなか卓越しているんですって。ショック描写は大人し目で、観客をキャッと飛び上がらせるようなことはないかも知れませんが、背筋をゾッと寒くさせます。河の流れに突き出た木の枝、まるで浜辺に立ちつくす人影のように見える木杭・・・。丹念に積み重ねられた映像が、不吉な連想を誘います。河も海も、本当に黄泉の世界とつながっているかのよう・・・。不吉だが、どこか美しい・・・
 ロケーションも素晴らしいです。物語の中で重要な役割を果たす海辺の建物なんて、点景として完璧です。「廃墟になった遊園地」というだけで、“廃墟マニア”の人ならよだれものでしょう(笑)。ドキュメンタリーを中心に活動していたハーク・ハーヴェイ監督には、人間を、そして風景を捉える独自の視点が備わっていたのだと思います。

 怪奇小説風の気の利いたストーリーと丁寧な演出。『恐怖の足跡』は、ほとんど完璧な映画です。“ほとんど”と言うのは、あのオチの場面でのNGがあるからなんですが(←考えれば考えるほど、あの安い女優のこらえ性の無さが許せない!)、それ以外は本当に完璧に見えます。こういう優れた作品が、人知れず、無名のスタッフ、キャストによって生み出されているのですから、映画というものは本当に面白い! これぞ本物のカルト映画です。ホラー映画ファンはもちろん、それ以外の人も是非楽しんで下さいね。
映画の印象
/
降水確率10%
勝手に総評
1 5 10
私が愛している度
私が評価している度
一般人気度
マニア人気度
オススメ度
ソフト
 長年日本ではソフト化されていなかったのですが、2005年5月にエプコットからDVDが発売されました。「恐怖の足跡/ナイト・タイド(2 in 1)」という商品で、デニス・ホッパー初主演作『ナイト・タイド』がカップリングされています。マニア心をくすぐる魅力的なラインナップですよね。・・・でもご注意下さい。このDVDには重大な問題があるのです。『恐怖の足跡』を見ようとすると、再生時間が20分を過ぎた辺りから映像がブレ始め、そのあと最後まで、動きがカクカクの上、残像の生じた劣悪な状態になってしまうのです。
 酷いです・・・、とても見れたものではありません。マスターに起因するノイズとは思えません。デジタル系のノイズですので、圧縮時に生じた問題のように思います。完全なエラーディスクではないでしょうか? 「幻の映画」が遂に発売されたのに、これじゃあ最悪ですよね。
 そんなわけでひどくガッカリとさせられた商品なのですが、『ナイト・タイド』の方は普通に見れるので、そちらが目当ての人なら購入しても良いでしょう。『恐怖の足跡』が目当ての方は、残念ながら別の商品の購入を検討された方がいいと思います。

 2006年7月になって、デックスエンタテインメントからもDVDが発売されました。『恐怖の足跡』に加え、『地獄へつづく部屋』、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の3本を収録した「マスターピース・オブ・ホラー BOX」というBOX形態の商品もあります。全作ともデジタル・リマスター仕様。上記したエプコット盤のような問題もなく、『恐怖の足跡』の画質も良好でした。でも、実はこの商品にも問題が・・・
 なんとコレ、オリジナルのモノクロ映像にコンピューターで着色を施したバージョンなのです。マトモな映画ファンが見るようなものではないですね。モノクロ映像特有の陰影の魅力が台無しです。・・・でも、国内で発売されている『恐怖の足跡』のDVDが、上記したエプコット盤とこのデックス盤しかない以上、選択の余地はそれほどありません。とりあえず、現在国内で発売されている商品では、このデックス盤が最良のものだと言えるでしょう。私が使っているDVDプレイヤーには、割と珍しい機能だと思いますが、「モノクロ再生機能」が付いていたので、それを使って見たら、結構それっぽく見れましたです。そういう機能がない場合は、テレビの色を落として見るのがいいかも知れません。

 レビュー冒頭にも書きましたが、アメリカでは、名盤揃いで知られるクライテリオンから豪華2枚組仕様の商品「Carnival Of Souls: Special Edition」が発売されているので、日本語字幕にこだわらない人にはそちらの購入をオススメします。ドキュメンタリーやインタビューなどの特典満載の他、劇場公開版の72分バージョンと、全長版の83分バージョンの両方が収録されているのが特徴です。ちなみに国内盤は、エプコット盤、デックス盤とも83分のバージョンです。(デックス盤のジャケットには収録時間が72分と表記されていますが、これは誤りです。)

 2007年に有限会社フォワードから500円のDVDが発売されました。着色版じゃなくて、もちろんモノクロ。なんと言っても価格が安いですし、今からならコレを買うのが一番いいかも?

関連作をチェック!

関連作品


トップページを表示