ブラックホーク・ダウン
Black Hawk Down 2001年 アメリカ
スタッフ/キャスト
製作: ジェリー・ブラッカイマー
リドリー・スコット
製作総指揮: ブランコ・ラスティグ
チャド・オマン
マイク・ステンソン
サイモン・ウェスト
監督: リドリー・スコット
脚本: ケン・ノーラン
スティーヴン・ザイリアン
撮影: スラヴォミール・イジャック
音楽: リサ・ジェラード
ハンス・ジマー
原作: マーク・ボウデン
 
出演: ジョシュ・ハートネット
ユアン・マクレガー
トム・サイズモア
サム・シェパード
エリック・バナ
ジェイソン・アイザックス
ジョニー・ストロング
ウィリアム・フィクトナー
ロン・エルダード
ジェレミー・ピヴェン
ヒュー・ダンシー
ユエン・ブレムナー
ガブリエル・カソーズ
キム・コーツ
ジェリコ・イヴァネク
グレン・モーシャワー
145分
ストーリー
 1993年、ソマリアの内戦に軍事介入していたアメリカは、反米強硬派の指導者アイディード将軍の側近を捕らえるため、白昼堂々、都市部への急襲作戦を決行した。ブラックホーク・ヘリコプターに乗り込み、意気揚々と戦地へ向かう兵士たち。しかし、この無謀な作戦は、悲惨な結果を生む。ブラックホークが撃墜され、投入された100名もの兵士が敵地のど真ん中で孤立してしまったのだ!
 1時間ほどで終了するはずだった任務は12時間にも及ぶ泥沼の戦闘状態に突入し、兵士たちの血がとめどなく流されていく・・・
レビュー
 え〜と、今更『ブラックホーク・ダウン』なわけですが、この映画、公開当時は論議を醸しましたよね。全米公開を前に批評家からは総スカン・・・、でも、観客からは支持されて大ヒット。「ずっと戦っているだけの中身空っぽな映画」と聞いて、如何にも批評家受けは悪そうだけど、実は意外な傑作かも知れないと、個人的には期待してたんですよ。戦場の現実を映し出すシビアな映画なんじゃないかと・・・。で、フタを開けてみたところ、リアルなシミュレーションとはよく言ったもの、とんでもないファンタジーなのでありました。

 ソマリア人の兵士は無防備な市民に向けていきなり機銃掃射! 対してアメリカ兵は武器を持ってる人以外は絶対撃たないの。アメリカ兵は優秀だね♪
 悪玉、善玉の描き方がステレオタイプでどっちらけ。「怖い、怖〜い!」って盛り上げたいんだろうけど、物陰に隠れながら進み、命からがらのアメリカ兵に対して、ソマリア人兵士は道の真ん中を徒党を組んで大行進。アホか! あん中に手榴弾でも投げ込まれたら一挙に大量死だろうが。あっちだって一応訓練を受けた兵士なんだから、こんな行動取るわけない! グラサン掛けたチンピラ風の黒人がブイブイ言わせてる様子は、ほとんど90年代初頭に流行った「黒人ギャング映画」のノリでしたよ。ソマリア人は国民総ギャングかっての!
ほとんどゾンビ扱い

 中ボス的に描かれているソマリア人兵士のふてぶしさも際立っていましたね。ブラックホークの飛来を知らされた時ものんきに寝てましたし、これからヘリを落としに行くという段になって、RPG(←ロケット砲ね)を担いだ仲間を連れてズンズン歩いていく場面では、まるでホラー映画に登場するシリアルキラーやモンスターみたいな写し方をされてました。いかにも余裕しゃくしゃくって感じ。
 国土を襲撃されているのはソマリア人の方なんだし、ホントは必死に応戦してたんだと思いますよ。そういう必死さ、つまりは人間味を敵方には付与したくなかったということなんでしょうな。

 それに対してアメリカ兵は、みんな人間味溢れる正義漢。こないだイラクで、爆弾の爆発にパニクったアメリカ兵が周りにいた市民を見境無く撃ちまくって死亡させるという事件がありましたが、そんなヤツは一人もいません。アメリカ兵は立派なんです! 追い詰められた状況下でも、女子供に対しては、きちんと「伏せろ!」って訴えます。
 いやね、実を言うと、アメリカ兵が市民を撃ち殺すシーンも一回だけあるんですよ。子供を殺された母親が銃を拾って撃ってこようとしたので、止むを得ず撃ち殺すの。でも、その時も「よせ! やめろ!」なんて訴えちゃったりして、本当に立派なもんです。全ては正当防衛だったって、つまりはそう言いたいんでしょ。戦場の非情さを映し出すフリして、実は言い訳こいてるんですな。

 そりゃあ、アメリカでね、アメリカ兵が市民を虐殺するような映画を作れるわけないですよ。「どうせ映画なんだから、これはこれでいいでしょ」って言う人もいるけど、そういう風に割り切りたいんだったら、史実に材を求めるなっつーの! 映画の冒頭で、いけしゃあしゃあと「BASED ON AN ACTUAL EVENT」なんて宣言しているんですからね。
 まあ、この「BASED ON(元にしている)」っていう部分がキモで、言い逃れの余地を残しているのですが、普通は、後ろにある「ACTUAL EVENT(現実の事件)」というところにしか目が行かないものです。でも、この映画の中で本当に「ACTUALITY」を感じさせてくれたのは、エンディングに流れる字幕だけでした。

 「1000人以上のソマリア人が死亡」・・・って、1000人ですよ、1000人! 並大抵の数ではありません。でも、全然見えてこないんですよね。本当に「BASED ON AN ACTUAL EVENT」だと言うならば、この数字を実感させてくれなければ!
 しかし、そんなことは不可能でしょう。皆さんは、実戦経験もロクに無い若造どもが武装した兵士を1000人も倒せたと思いますか? 映像では語られない行間の部分に、大勢の民間人の死を読み取ることにしましょ・・・


 アメリカ兵19名の死亡は殊更に強調されています。一々スローモーションやらコマ落としになったりしてクドいのなんの。負傷の果てに治療の甲斐無く衰弱していって、たっぷり時間をかけて死んでいく人までいます。それに引き換えソマリア人の方は、みんなパッと撃たれてパッと退場。同情させたり、罪悪感を抱かせることを避けるために負傷者の姿もほとんど見せません。
 ソマリア人の死に様も、アメリカ兵のと同じくらい手間暇かけて描いてもらわないと。そう、1000人分です! たとえ10時間、20時間の上映時間になろうとも。そうしたら、第二の『ショア』に成り得たかも知れないのに・・・
 いやいや、そんなことは無理だと分かってますよ。でも、それならば敵も味方も分け隔て無く、みんなムシケラのように死なせるべきだったのです。そうした方がよっぽど感慨深い映画になったことでしょう。同監督の『グラディエーター』ほどではありませんが、この映画は感傷的過ぎます。よくよくバカにされているように、これが本当に戦闘シーンしかないおバカ映画だったら、どんなに良かったことか・・・。その前後の部分には、更に酷い展開が用意されているのです。

 まずプロローグ、理想に燃える若い兵士=主人公が「俺たちには二つの選択肢がある。彼らを助けるか、国が滅ぶのをCNNで見てるかだ」って熱く語っているのですが、この理屈ってどうなんですか? 「人を殺すバカ」と「人を殺さないバカ」だったら、私は「人を殺さないバカ」の方がいいよなあ・・・

 一方、戦闘終了後の米軍基地では、負傷者が治療を受けています。すると床の上に大量の血が滴るのですが、それを見ていた司令官は、膝をついて血を拭きながら、感極まって涙ぐむのです。
 はっ! 笑かしてくれます。「拭おうにも拭い切れないほどの血が流れた・・・」って感じに、悲劇を強調する象徴的なカットのつもりなんでしょうけど、それと同時に、無謀な作戦を決行して若い命を散らせた無能な上官の人格に対して弁護を図っているのです。米軍に気を使いまくりだね!(←いや、当然ですけど)

 そしてエピローグ、主人公が戦友の亡骸に向かって語りかけていて、「人は英雄に生まれるんじゃない。英雄になるんだ」とか言って、「お前は英雄だ!」みたい言ってまとめるのですが、市民を巻き添えに1000人以上も殺した挙句に英雄がどうのと言われてもねえ。でも、アメリカ人ならきっと満足するのでしょう。彼らにとって「英雄」という言葉は、全てを正当化する免罪符なのですから・・・
 アメリカ政府のやり口と同じですな。この戦闘の後で、ベトナム戦争以降出ていなかった名誉勲章受勲者が2人も選出されたそうですが、これってつまり、あまりにも不名誉な事態になってしまったから、名誉勲章でも出さないことにはフォローできなかったってことなんでしょ。ホント大したものですよ。歴史の汚点と言われている悲惨な事件まで、なんとなく美談に仕立ててしまうのですから・・・

 やっとの思いで撤退してきたアメリカ兵たちをソマリア人の子供たちが笑顔で出迎えます。なんというスペクタクル! なんというファンタジーでしょう! それまでの黄色い色調の映像に対して、ここでは画面は青色に染まります。そして静寂と、これ見よがしのスローモーション・・・
 これを浄化のイメージだとでも言うつもりですか? こんなもので悲劇が浄化されますか? 憎しみが癒されますか?

 本作は2001年の「9.11テロ」の後、アフガニスタン攻撃の最中に公開されて全米でヒットを飛ばしました。アメリカ人はこの映画をモンスター映画を見るようにして楽しんだのでしょう。しかし、本当のモンスターは誰だったのでしょうか?
 ソマリアでは暴徒と化した民衆がアメリカ兵をリンチしました。この憎しみがどこから来たもなのか、アメリカ人は理解しようとしていません。私たちはこれと同じ映像を今度はイラクで目にすることになります。憎しみの連鎖は止まりません・・・

追記
*レビューを読んだ人から内容が偏っているとお叱りを受けてしまいました。今になって読み返してみたら、確かに酷いところがたくさんある。そういう訳で、至らない点は多々あるかと存じますが、一応、自分なりに反省しておきたいと思います。

 まず、一番の問題は、ソマリアとイラクを同一視するような書き方をしていること。これは、本気で混同していたわけじゃなくて、ある程度意図してやっていたんですよね。このレビューを書いていた当時、テレビで毎日報道されるイラク関連のニュースを見ながら、私は本気で怒っていたんです。アメリカと、アメリカ軍の横暴な振る舞いに。だから、その怒りを吐露する目的で筆を取り、その方便として『ブラックホーク・ダウン』のレビューを利用してしまったんです。
 こういう「すり替え」はいただけませんよね。でも、こういう映画をあのタイミングで製作して公開したんだから、映画のスタッフの方にも多少の責任はあると思う。もちろん、あの時点で戦火がイラクにまで飛び火することを予想していたとは思いませんが・・・

 確かにサダム・フセインは悪い。でも、アメリカのやり方も正しいとは言えない。いや、寧ろサダム・フセインより酷い。あの二回の戦争についてだけ言ってるわけじゃありませんよ。
 1991年の湾岸戦争終結後、アメリカは、厳しい経済制裁を課してイラク国民を貧窮させるだけでなく、化学兵器の製造に利用される恐れがあるとして、病院で必要とされるような医薬品まで、イラクへ流入させることを禁じたんです。これによって死亡した人の数は、子供や老人を中心に、10年間で数万とも数十万とも言われています。これはアラブのテレビ局が報道したものじゃなくて、BBCのドキュメンタリーでやってたんですよ。
 更に恐ろしいのは、これが偶然の結果じゃなくて、ハナから意図されたものだったことです。表に出た政府の極秘文書には、きちんと「これを行うことによって、数十万人の死亡が見込まれる」と書いてあったのです。
 アナリスト曰く、「誰も風邪薬を使って化学兵器を製造するなどと本気で危惧したりはしていない。イラク国民の不満を増大させて、政権転覆させることが目的だった」と言うんですね。酷い話でしょ。数十万人の市民の死を目的のための手段とするなんて・・・。赤十字の人は、これは実質的には市民に対する無差別爆撃だと言っていましたが、本当にその通りだと思います。

 もちろん、アメリカ国内でもイラク派兵の賛否を問う議論は盛り上がり、政府に対する批判も高まりました。でも、ホワイトハウスの前にイラクで命を落としたアメリカ兵の数だけ靴を並べるという反戦活動を見た時、どうしてもこう思わずにはいられませんでした。イラク人の死亡者も数に加えれば、あの何倍、何十倍にもなるであろうにと・・・。結局、アメリカ人は、アメリカ人が死ぬことにしか心を動かされないのかな? と皮肉っぽく考えたりもしてしまいました。それで、これはあの映画と同じだなと・・・、アメリカ兵19名の死亡は殊更に強調されているけど、ソマリア国民1000人の死亡は全然見えてこないあの映画と。だからその点を強調するようなレビューを書いてしまったんです。

 でも、イラクとソマリアでは、決定的な違いがあるんですよね。石油の利権だとか、色々とお金の話が取り沙汰されているイラクの場合と違って、ソマリアへの軍事介入は、あくまでも人道的な理由から行われたものだったのです。
 ソマリアの内戦は、本当に酷い泥沼状態に突入していました。市民の犠牲者も多数出ていて、見るに見かねた国連がPKOを投入したんです。アメリカが国連を無視して独断先行で戦争をおっ始めたイラクの場合とは全然事情が違うんですよね。私のレビューでは、まるでアメリカがソマリアに対して侵略を仕掛けているような言いぐさになっているので、その点、大いに反省してます。
 もちろん、この場合も、手段が正しかったかと言われれば疑問は残ります。でも、その目的は、アメリカがよくよく口にする「正義」というものだったのです。逆を言えば、「正義」が目的だったからこそ、非難が高まったら直ぐに撤退したのでしょう。この点でも、いくら非難されても意地でも撤退しないと言い張ってるイラクの場合とは対照的ですね。正義はお金になりませんから・・・

 確かに、イラクでアメリカ兵の亡骸が陵辱されているのを見て、ソマリアでのリンチの話を引き合いに出したニュースキャスターもいました。あの二つの映像は、奇妙なデジャヴを起こさせましたし、確かに、第三世界の人間のアメリカに対する憎しみを象徴していました。しかし、厳密には、やはり区別して話をするべきだったと思います。「正義」があるかないかでは、事は大違いですから。
 その上でもう一つ、私のレビューの問題点を挙げるとすれば、それは兵士たちに対して侮蔑的な記述が目立つことでしょう。兵士に罪はありませんよね。彼らは純粋に正義を志向していたのだと思います。
 あと、これは映画の中でそう語られていたから、敢えてそう書いたのですが、アメリカ兵のことを“ひよっこ”扱いしている。台詞では「人を撃ったことがない」って言ってるけど、本当のところは分からない。「レンジャー」と言えば、こういう特殊な任務を任されるだけあって、それなりにエリートの部隊ですから、たぶん映画に描かれているほどにはオタオタとした様子は見せなかったと思う。エリート中のエリートである「デルタフォース」の人が凄いのは当たり前で、映画の中でもカッコ良く描かれていたので、私は敢えて言及しませんでした。カッコのいいところを書いても悪口になりませんからね。(←だから、そういうところが偏ってるんだって)

 いや、私は兵士たちの悪口を書こうとしたわけじゃなかったんです。市民を大勢撃ち殺したのかも知れないけど、それはああいう状況では仕方のないこと・・・。誰も責めることはできません。私は、兵士そのものじゃなくて、兵士たちの描かれ方について文句を言いたかったのです。
 帰還した兵士の話によれば、ソマリアの民兵は、市民を盾にしてアメリカ軍を包囲しようとしたそうです。それ故に市民を射殺したということは、帰還した兵士たち自身が認めていることです。それに対して、この映画の姿勢はどうでしょう。そういう凄惨な現実を映し出そうとしていない。いや、確かに凄惨ではあるけど、なんだか都合のいい凄惨さ。リドリー・スコット監督は、「この映画は事実を提示するだけで、判断は観客に委ねている」と言っていたけど、既にだいぶ操作されている印象を受ける。
 話はちょっと変わりますが、ローマ法王だって、アンデス山脈の航空機墜落事故から生還した人たちのことを責めようとはしなかったんですよ。事実は事実として受け止めた上で判断しなければいけないと思います。これじゃあまるで、「アンデスの聖餐」の映画を見に行ったのに、みんなフライドチキンを食べて帰ってきましたとやられるようなもの・・・

 たぶん私は、この映画のことを、言うほど嫌いじゃないんです。寧ろ好きなシーンの方が多いくらい。でも、いくつかの決定的な要素のせいで、突き放されてしまったんです。「可愛さ余って憎さ百倍」という言葉がありますが、まさにそれで、ほとんど好きになりかけていただけに、突き放されたときの失望が大きかったのです。本当にどうしようもない映画だと思っていたら、こんなにクドクドとレビューを書いたりはしません。
 なんだか支離滅裂で済みません。反省と言っておきながら、言い訳ばかりになってしまいましたし・・・。これじゃあほとんど自己弁護ですよね。私の悪いクセです。でも、一応、感じたままを綴ってみた次第です。
映画の印象
/
降水確率80%
「大雨、土砂降り。
血の雨も降ります。」
勝手に総評
1 5 10
私が愛している度
私が評価している度
一般人気度
マニア人気度
オススメ度
ソフト
 DVDはポニーキャニオンより発売されました。初版のディスクには左右の音声が逆に記録されているというエラーがありましたが、直ぐに回収が行われたので、今では店頭には並んでいないはずです。安心してご購入下さい。特典は以下の通り。
・予告編
・メイキング
・スタッフ&キャスト・インタビュー
・フォトギャラリー


 2003年の7月には2枚の特典ディスクを封入した「ブラックホーク・ダウン COLLECTOR'S BOX」も発売されました。

(2005/07/16)
(追記:2005/12/7)

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