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Hard Rain

Hard Rain

【Released:1976.9.10】

ディラン21枚目のアルバム。1975年10月30日、マサチューセッツ州プリマスからスタートした歴史的なローリング・サンダー・レビュー・ツアーの公式なライブ録音である。ローリング・サンダー・レビュー・ツアーそのものは1975年秋のバージョンと1976年春のバージョンとがあるが、演奏スタイル(特に各曲のアレンジ)はかなり異なっている。1974年のザ・バンドとのツアーはかなりプロフェッショナルなものであったが、このローリング・サンダーはディランならではの自由で柔軟性のあるスタイルを貫き通したツアーといえよう。ディランは現在までに数多くのライブ・ツアーを行ってきたが、筆者はこのツアーこそディランの最高のツアーではなかったかと思う。筆者がディランに深くのめり込んでいったのもこのツアーのテレビ放映を見たからであり、何より動くディランの姿もこのツアーのビデオが初めてであった。
話をアルバムのことに戻そう。このアルバムが録音されたのは、1976年5月23日(一部の曲は5月16日)。場所は、コロラド州フォート・コリンズのコロラド州立大学ヒューズ・スタジアムである。収録された曲は9曲で、いずれもディランのソロ・ボーカルだが、テレビ・バージョンではジョーン・バエズとのデュエットが3曲(日本での放映バージョン)収められていた。この日のコンサートそのものは5時間近くの長いコンサートだったようだが、アルバムにはそのうちのほんの一コマが収録されたわけだ。せめてダブル・アルバムにしてほしかったと思う。

1.Maggie's Farm

オープニングは1965年の《Bringing It All Back Home》からおなじみの曲。初めて聴いたときにはまるで違う曲なのに驚いた。ディランのリサーハル風のリード・ギターからいきなりイントロに入る。ものすごい始まり方だ。ディランの自由気ままな演奏スタイルが心地いい。

2.One Too Many Mornings

オリジナルは1964年の《The Times They Are A-Changin'》に収録。自分のギターで出だしの音程を確かめたあと、いきなりボーカルから始まり、バック・バンドがついていく。これまたすごい始まり方だ。この曲もオリジナルとはまったく違うメロディーで歌われるが、最高の書き直しとなっている。この曲でのディランのボーカルは逸品。何度聴いてもいい曲だ。前作《Desire》でおなじみのスカーレット・リベラのバイオリンが切ない。間奏でのディランのリード・ギターはかなりめちゃくちゃだが、それはそれでいい味を出している。

3.Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again

オリジナルは1966年の《Blonde on Blonde》に収録。この曲は5月16日のタラント・カウンティ・コンベンション・センター・アリーナでの演奏。録音場所が屋内のためか、若干他の曲とは雰囲気が違う。比較的オリジナルに近いメロディーで歌っているが、かなりシャウトしている。あまりにも長い歌詞のせいか一部省略して歌われている。

4.Oh,Sister

オリジナルは前作《Desire》に収録。この曲も5月16日の演奏。ディランのギターによるドレミファソラシドが聴けるのが唯一の楽しみで、演奏そのものはかなりラフだし面白くない。この演奏を収録するのなら、もっとほかにいい曲があるのだが。

5.Lay,Lady,Lay

オリジナルは1969年の《Nashville Skyline》に収録。この曲も5月16日の演奏。かなり崩した歌い方だ。2番の歌詞はそっくり書き替えられている。演奏そのものは悪くないと思うが、特筆すべき点はない。

6.Shelter From The Storm

オリジナルは1975年の《Blood On The Tracks》に収録。アナログ盤ではCDに比べてディランのボトル・ネック・ギターによるイントロが少し長めに収録されている。オリジナルはアコースティック・ギターとベースのみの伴奏だったが、こちらはかなり激しいロック・バージョンになっている。かなり単調な曲であるにもかかわらず、ディランの見事なボーカルと個性的なボトル・ネック奏法のギターに引き立てられて、いい感じに仕上がっている。

7.You're A Big Girl Now

この曲も1975年の《Blood On The Tracks》に収録。アコースティック・ギターが前面にフューチャーされているが、ディランがどの部分を演奏しているのかはわからない。ボーカルはオリジナルの情感をややドライに再現した感じだ。ゆったりとした演奏、特に間奏に入るときの絶妙の間合いが最高である。

8.I Threw It All Away

オリジナルは1969年の《Nashville Skyline》に収録。この曲も5月16日の演奏。決して悪い演奏ではないのだが、どうしても23日の演奏からの曲に比べると見劣りしてしまう。

9.Idiot Wind

オリジナルは1975年の《Blood On The Tracks》に収録。約10分に及ぶ長い演奏だが、緊張感が持続している。オリジナルでは努めてライトに歌っていたような気がするが、こちらはシビアな歌い方。理屈抜きで心に響くディランの叫び声が聞こえてくる。

執筆:1999.9.24

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