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Before The Flood

 

Before The Flood

【Released:1974.6.20】

ディラン17枚目のアルバムは、ザ・バンドとの8年振りの全米ツアーのライブ録音。全部で21曲収録されているが、うちディランの演奏が13曲、残りの8曲がザ・バンドという構成だ。ツアーは1974年1月3日のシカゴ・スタジアムを皮切りに、2月24日のロスアンジェルス・フォーラムまで、延べ40回のライブが行われた。このツアーのチケットはすべて郵送による申し込みとなっていたそうだが、チケットの購入希望者は延べ1700万人にも及んだという。いかにディランのライブが待ち望まれていたかを示す逸話である。ディランの演奏部分については、なぜか最新作の《Planet Waves》からの選曲はなく、おなじみといっていい代表曲がずらりと並べられていたが、いずれも原曲のイメージを破壊するかのように大胆なアレンジが施されており、ディランのボーカルも力み過ぎというくらいシャウトしている。このアルバムからディランを聴き出した人にとってはオリジナル・アルバムのディランは想像できないだろう。ライブとはいえ音質は最高で、ディランの乗りに乗ったロックン・ローラーぶりが堪能できるアルバムである。

1.Most Likely You Go Your Way(And I'll Go Mine)

観客のざわめきから始まるこの曲の出だしは妙な緊張感がある。ディランのリズム・ギターを合図に、バンドが一気に加わると堰を切ったようなロックン・ロールが演奏される。ディランはシャウトしている。リヴォン・ヘルムのドラムが機関銃のようにリズムをたたき、ロビー・ロバートソンのリード・ギターが見事に絡み合っている。オリジナルは1966年の《Blonde On Blonde》に収録。

2.Lay,Lady,Lay

オリジナルの甘い声で歌うディランにも驚いたが、このライブでのアレンジはかなりハードなロックに変わっている。かなり強引に吐き捨てるように歌っているが、これはこれでなかなかいい。オリジナルは1969年の《Nashville Skyline》に収録。

3.Rainy Day Woman#12&35

完璧なロックン・ロール。オリジナルのクレイジーな感じはないが、ディランを知らない人でもカッコイイと思える曲に仕上がっている。ロビー・ロバートソンのリード・ギターもきまっている。オリジナルは《Blonde On Blonde》に収録。

4.Knockin' On Heaven's Door

オリジナルにはなかった歌詩が付け加えられているが、曲そのものはそれほどオリジナルを崩していない。ガース・ハドソンのシンセサイザーが効果的に使われている。オリジナルは1972年の《Pat Garrett&Billy The Kid》に収録。

5.It Ain't Me,Babe

かなり大胆なアレンジが施されている。オリジナルはギターとハーモニカだけの伴奏だったが、ザ・バンドのサポートを受けて見事によみがえった曲のひとつであろう。弾むようなディランのボーカルがすばらしい。オリジナルは1964年の《Another side of Bob Dylan》に収録。

6.Ballad Of A Thin Man

このアルバムで唯一ディランのピアノが聴ける曲。オリジナルは暗く重苦しいアレンジであったが、ここでは見事なロック・バージョンに変貌している。オリジナルは1965年の《Highway 61 Revisited》に収録。

7.Up On Cripple Creek

ザ・バンドの演奏。オリジナルは1969年のバンド2作目《The Band》に収録。

8.I Shall Be Releaset

ザ・バンドの演奏だが、いわずと知れたディランの名作。オリジナルは1968年のデビュー作《Music From Big Pink》に収録。

9.Endless Highway

ザ・バンドの演奏。未発表曲。

10.The Night They Drove Old Dixie Down

ザ・バンドの演奏。オリジナルは《The Band》に収録。

11.Stage Fright

ザ・バンドの演奏。オリジナルは1970年の3作目《Stage Fright》に収録。

12.Don't Think Twice,It's Alright

再びディランが登場して、今度はアコースティック・ギター1本で歌われている。といってもかなり激しくギターをかき鳴らしているし、ボーカルもシャウトしている。うれしいことにハーモニカが入っているが、これまた激しい吹きっぷりである。オリジナルは1963年の《The Freewheelin' Bob Dylan》に収録。

13.Just Like A Woman

これもアコースティック・ギター1本で歌われている。がらりとアレンジが変わっている。やや無理やりのような気がしないでもないが、ここまで変えられるとまったく別の曲のような気さえしてしまう。それにしてもこの曲でのディランはボーカルもハーモニカも最高である。オリジナルは《Blonde On Blonde》に収録。

14.It's Alright,Ma(I'm Only Bleeding)

最後のアコースティック・セット。オリジナルとは違い、まくしたてるようにかなり早口で歌っている。この曲はときあたかもニクソン大統領のウォーターゲイト疑惑で揺れていたアメリカにとって刺激的なフレーズ(時には合衆国の大統領も裸で立たなければならない)が含まれており、その箇所では聴衆がひときわざわめいている。オリジナルは1965年の《Bringing It All Back Home》に収録。

15.The Shape I'm In

ザ・バンドの演奏。オリジナルは《Stage Fright》に収録。

16.When You Awake

ザ・バンドの演奏。オリジナルは《The Band》に収録。

17.The Weight

ザ・バンドの演奏。オリジナルは《Music From Big Pink》に収録。

18.All Along The Watchtower

激しいロック・バージョン。ここにはオリジナルの魅力のひとつでもあった哲学的な気難しさがなくなっていて、個人的には魅力半減だが、ロックン・ロールとしてはよいできであろう。ジミ・ヘンドリックスのカバーとも違うディラン流のディラン解釈。オリジナルは1967年の《John Wesley Harding》に収録。

19.Highway 61 Revisited

かなり挑戦的なイントロである。重厚なロックにアレンジされ、ボーカルも思い切りシャウトしている。オリジナルは《Highway 61 Revisited》に収録。

20.Like A Rolling Stone

このアルバムのハイライト。ゆったりとしたウォーミング・アップからだんだんとテンポが速くなっていくイントロはなんともいえない緊張感がみなぎっている。このイントロを聴くだけでも価値がある。個人的にはなんといってもオリジナルのボーカルが最高だと思っているが、ここでは1969年のワイト島での失敗を挽回して有り余る好演奏ということにしておこう。聴衆の盛り上がりも最高潮にきている感じがする。オリジナルは《Highway 61 Revisited》に収録。

21.Blowin' In The Wind

アンコール曲。クラッカーのはじける音が聞こえる。おそらくはじめてのロック・バージョンだと思うが、ボーカルは相変わらずシャウトしているものの比較的オリジナルに近い一般的なフレーズ(?)で歌っている。ザ・バンドとの競演ライブの最後を代表曲で締めてくれたことに感謝しよう。オリジナルは1963年の《The Freewheelin' Bob Dylan》に収録。

執筆:1999.3.14

Planet Waves Blood on The Tracks