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Compilations&Others  Column


                    

Desire

Desire

【Released:1976.1.16】

ディラン20枚目のアルバムは、サウンド的には前作と同様にアコースティックの色合いが強い。しかし前作とまったく趣を異にするのが、ほとんど全編に流れるスカーレット・リベラのバイオリンのせいだろうか。ディランはこれまでのどのアルバムより力強いボーカルを聴かせ、これに呼応するかのようにハワード・ワイエスのドラムが炸裂する。アルバム発表に先立ってスタートしたローリング・サンダー・レビュー・ツアーのように自由奔放な雰囲気が漂っているが、サウンドそのものはかなりしっかりとまとまっている。ディランは本作でこれまでにない共同作業を試みており、特に詩の面ではジャック・レヴィに負うところが多い。前作に引き続き全米第1位のヒットとなり、その座を5週連続で守った。

1.Hurricane

ディランの力強いアコースティック・ギターで始まる1曲目。久々にディランの怒りが感じられる。この曲は、殺人容疑で投獄されていた元プロ・ボクサーのルービン・カーター・ハリケーンについて歌ったものだ。物語はピストルの音が鳴り響くところから始まる。8分を超える大作で、シングルではA、B両面に分けて収録されていたが、ディランのものすごい早口と物語の展開でそれほど長くは感じない。ディランのギターとハーモニカが最高。

2.Isis

ディランのピアノで始まる曲。サウンド的にはごたごたした感じがするが、よく聴くとピアノ、バイオリン、ドラム、ベース、タンバリンとハーモニカしか入っていない。ディランの声の質と柔軟な歌い振りが最高である。単純なメロディーなのにまったく飽きないのが不思議な曲だ。

3.Mozambique

ディランのアコースティック・ギターで始まる。ディランにしてはしゃれた曲で、エミルー・ハリストとのデュエットもすばらしい。スカーレット・リベラのバイオリンも効果的である。

4.One More Cup Of Coffee

ディランの乾いたアコースティック・ギターで始まる。なんとなくアラブの香りがする。ディランのボーカルも印象的。かなりうまい。これまでのディランにない雰囲気。ドラムが重く響きわたる。

5.Oh,Sister

ディランのハーモニカとリベラのバイオリンが絶妙な絡みをみせる曲。良い曲だが、このアルバムの中ではなんとなく目立たない感じがする。

6.Joey

ずっしりと響き渡るドラムがいい。この曲は、ニューヨークのリトル・イタリーの路上で撃たれて死んだ実在の人物、ジョーイ・ガロについて歌ったものだ。ディランは乾いたボーカルで淡々と物語を語っていく。エミルー・ハリスのコーラスとアコーディオンが効果を上げている。なんと11分にも及ぶアルバム最長の曲だが、まったく長く感じない。とても感動的な物語だ。

7.Romance In Durango

かつて映画の撮影で行ったニュー・メキシコの町を回想した曲。ディランにしてはかなりメロディアス。サウンド的にはかなりにぎやかな曲である。

8.Black Diamond Bay

前曲のフェード・アウトから軽快に始まる曲。ドラムがかなりはりきっている。ディランは、ブラック・ダイアモンド湾をめぐるいくつかの寓話をもてあそぶように語っている。

9.Sara

ディランのメランコリーなハーモニカで始まる曲。当時の妻であったサラにささげる曲。あまりにも赤裸々なディランの告白が始まる。ディランがこれほどストレートに自分の心境を吐露した曲はめずらしい。個人的にはディランの女々しさが気になるが、この曲をアルバムに収録したのは、ディランの心の混乱を示しているのだろう。

執筆:1999.8.9

The Basement Tapes Hard Rain