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Compilations&Others  Column


#15 僕のディラン遍歴(3

 僕とディランの衝撃的な出会いは、TVスペシャル「激しい雨」であった。日本でこの番組が放映されたのは、おそらく1976年の秋頃だったと思うのだが、はっきりとは覚えていない。ひょっとしたら1977年に入ってからかもしれない。関東地区以外でも放映されたかは知らないが、当時の東京12チャンネルが放映した。新聞のテレビ欄には、ジョーン・バエズとデュエットするアップの写真が掲げられ、フォークの神様とフォークの女王の再会などと書かれていた記憶があるが、当時の日本ではディランはフォークの神様と言われていた。
 前に書いたとおり、僕は拓郎を通じてディランの名前だけは知っていたがまだレコードも持っていなかったし、顔すら知らなかった。ただ、拓郎が影響を受けた人であること、それからガロが歌ったヒット曲「学生街の喫茶店」の中で名前が出てくることくらいしかディランに関する知識はなかった。

 TVスペシャル「激しい雨」は、1975年の秋から1976年の春まで行われたローリング・サンダー・レヴュー・ツアーの終わり間際、1976年5月23日、コロラド州フォーと・コリンズのコロラド州立大学フューズ・スタジアムで収録されたライヴである。
 番組は日本語字幕に続いて「激しい雨が降る」で幕を開ける。後から知ったことだが、実際のコンサートではこの曲はアンコールだったらしい。とにかく、何の前知識もなくTVを見た僕は、この1曲目でまず衝撃を受けた。曲は前奏もなく、いきなりディランが歌い出し、それにバックバンドが続いていくと言うものだった。とにかくフォークの神様と言うイメージが強かったため、当然フォーク・ギターでも抱えて出てくるのかと思っていたので正直面食らったが、無精ひげを生やし頭にターバンのようなものを巻いてエレキ・ギターを弾いているディランの姿にまず驚き、さらにはラフな曲の始まり方や雑然としたステージの模様が、当時の僕にとってはあまりにも衝撃的であった。
 ディランはTVカメラとほとんど目を合わさず、一言もしゃべらずに、黙々と演奏を続けていく。そんな媚びないところが神様たる所以かなどと思ってしまうほど、ディランは凄かった。息を呑みながら観ていたが、1時間のスペシャル番組はあっという間に終わってしまった。

 この番組、今では海賊版ビデオとして広く出回っているので、多くの人が手にしていると思うが、日本で放映されたものは、字幕による歌詞や曲の解説(かなり間違いが多い)、ディラン語録などが挿入されていた。また、CFの関係もあって若干ショートカットされている。収録された曲は、@激しい雨が降る(最後のヴァースはカット)、A風に吹かれて、Bディポーティーズ、C哀れな移民、D嵐からの隠れ場所、Eマギーズ・ファーム、Fいつもの朝、Gモザンビーク、H愚かな風、I天国の扉(最後はフェードアウト)、の10曲。

 この日のコンサートは、かなり長時間(5時間半という話も聞くが)にわたり演奏が繰り広げられたと言うが、TVと同時にライヴ・アルバム用におそらくすべての演奏が記録されているので、いつの日かこのコンサートの全貌を知りたいと思う。いまのところは公式にはアルバム「激しい雨」(若干収録曲が入り繰っている)でしか聞くことができない。

 ローリング・サンダー・レヴューは1975年の秋のツアーが高く評価されているようで、その模様は「ブートレグ・シリーズVol.5−ライヴ1975」で聞くことができるが、僕は断然1976年のバージョンのほうが好きだ。だから、なんとしてもこの日の演奏を完全収録したアルバムを公式に発表してほしいと願っている。

 (続く)


【執筆:2004年3月14日】