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1.問題の所在
幾つかの地方自治体での「事業仕分け」を見学し、次から次へと『不要、民間、国(県)、市・民間委託、市・要改善、市・現行通り』の中から一つが決定されていくのをみて、本来、議会のやることなのに何故できずにいるのか、議会に関心をもつものとして疑問を持った。
「事業仕分け」は具体的目標に沿った実施内容と成果に対する「検証」とそれをベースにした「評価」である。議会での決算審査に該当する。
しかし、議会の決算委員会で事業を「検証」しているわけでもなく、一括で賛否を決めるだけである。何故、こうも違うのか。アウトプットも含めて、疑問は重なる。
そんな疑問のなか、国の「事業仕分け」で「スパコン」騒動が起きた。「スパコン」が仕分けられたことに対し、これを厳しく批判するノーベル賞科学者あるいは国立大学長による記者会見が新聞を賑わしていた。では、科学技術は誰がどのような方法で事業を選定、検証、評価するのか、という疑問もまた明快な答が得られない状態である。「スパコン」の素材である半導体の研究開発に携わっていた技術屋としては気になる処である。
「事業仕分け」と「議会審議」の違い、科学技術事業に対する判断主体、事業仕分けに関連するこの二つの疑問に関係をもつような説を今年になって読んだので紹介する。
2.江崎玲於奈氏の説
ノーベル賞科学者・江崎玲於奈氏の説である。
「日本は「科学のリーダー」育てよ」(「日経ビジネス」2010/1/4)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20091228/211927/
江崎氏は言う。
「事業仕分けそのものは決して悪いことではないと思います。科学技術予算にも当然、無駄はある。「科学技術」は錦の御旗ではない。効率を良くしようというのは間違っていません。公開の場で評価するようなことは今までなかったわけですから、それを初めてやった行政刷新会議には意味があったと思います。」
更に、「日本の課題は科学や技術を評価する質です。そもそも大学や研究機関などで、きちんと鑑識眼のある人が評価しているかどうか。100%客観的な評価などあり得ませんが、米国は評価の質が高い。研究内容を評価し、評価されることで発展してきたのが米国です。」極めて鋭い指摘である。
インタビュアーの「日本のお金の使い方に対する実績をどう評価するか。」との質問に、
「科学技術白書によると日本は18兆円科学の技術研究費を投じています。米国44兆円、ドイツ8兆円、フランス5兆円、英国4兆円だから、日本は米国に次いで使っているわけですね。問題はそれだけの成果が出ているのか。…新しいものを生む研究では成果が上がっていないという見方もできます。」
民間企業、米国社会で研究をしてきた江崎氏の、日本の大学の官僚的風土に対する批判が含まれた発言と考える。
評価の質を高くするためには「科学のリーダー」を育てよ」と言う。
「…評価し、評価されるという環境を欠く今までのようなやり方だと、リーダー格の人間はなかなか育ちません。…何事もどういうプロセスを経て予算が出たのかを調べる必要がある。どんなプロジェクトも誰かが何らかの評価をして決まったに違いない。きちんと検証することで評価する目が磨かれていく。」
3.検証の意味 政治文化の変革
質の高い「評価」をするには厳しい「検証」をしなければならない。「きちんと検証することで評価する目が磨かれていく」わけである。
しかし、ここで「検証」という言葉の意味を考えておく必要がある。
現場検証が警察事件の用語であり、特別な場合、閉ざされた場で専門家が黙々と行う作業との印象がある。日本では日常的な仕事を改まって検証し、評価するスタイルは乏しいように思う。行政評価PDCAの「Check」も確認する、調査する、照合する、そのような意味であって「検証する」ところまではいきつかない。
従って、「評価」に対する指摘は科学技術に止まらず、“水に流す”ことを得意とする日本文化に内在する問題であろう。江崎氏もそのことを意識して「公開の場で評価するようなことは今までなかった」と日本での評価の特質を抉っているものと推察する。
以上の議論から「仕分け」には「検証」ができるような仕掛けが内在され、決算委員会には先ず「検証」の意識が含まれていないとの理解になる。外部の眼、公開、そもそも、具体的内容という仕分けのルール、フォーマットが定まった事業シート等が仕掛けに相当するのであろう。
「仕分け」では「不要」も珍しくない、「要改善」が多くなり、「現行通り」は比較的少ない、厳しい評価になる。「検証」と「評価」を強く意識し、「きちんと検証することで評価する目が磨かれていく」との江崎説を実行している。であるから「仕分け」が軌道に乗っていけば日本の「政治文化」も変革されていくことになる。
川崎市議会の9月定例会決算委員会の議事録を読みながら、決算委での多くの質問は「検証」と「評価」を含まない「形式監査」か、さもなければ「確認」の域にしか達していないのかと考えざるを得なかった。しかし、一部の質問には「仕分けもどき」のスタイルも感じられたことは収穫である。
今後の議会改革に期待したい。
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