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優れた質問とは何か〜具体例の分析〜  2008/02/25

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川崎市議会での「優れた質問」を求めて
                                      07-10-13
【2】会議録の具体例を分析する 〜保育待機児童問題〜
1.問題の所在
2.例題としての「保育待機児童」問題
3.「保育待機児童」問題の経緯 〜行政側の計画〜
4.議会各会派の認識 〜H17/3市議会会議録から〜
5.H19年3月市議会 質疑応答の分析
6.全体的考察

別途掲載

【1】優れた質問とは何か 〜枠組設定〜
1.問題の所在
2.質問と答弁の関係
3.「質問の主旨」区分け〜「優れた質問」へのアプローチ〜
4.行政側から得る最終的アウトプット
5.まとめ

1.問題の所在
 先に、「【1】優れた質問とは何か 〜枠組設定〜」において、市民として政策を検証していく場合の“議会質問”を捉える枠組の例を以下に示すようにまとめた。次にこの枠組を意識して具体的な問題を捉えて分析することが本稿での主題である。
どこまで深く“具体的掘り下げ”をおこない、「認識形成―中心課題提起―具体的掘り下げー提案」まで討論を展開し行政側に行動を促すことが出来るのか。ここに議会の真価が問われるからである。
結論的に言えば、保育待機児童ゼロの市長公約が果たせない状況下、それも市議会選挙直前というなかで、議会の全会派が市長を追及する姿勢をみせ、議会の総意が表現された。その中でもこの問題に先鞭をつけた共産党が代表質問と共に、石田和子議員の一般質問において本質的問題点を具体的に指摘したことが大きな成果であった。
結局、市長は7月に「緊急5カ年計画」を公表した。議会の貢献は大きかったことを我々市民は認識する必要がある。ここでは「優れた質問」の代表例として石田和子議員の質問を分析する。

★“優れた質問”を捉える枠組★
「質問の順序」
 (1)共通認識形成;川崎市全体の政策の中での位置づけ
  …テーマの進捗・施策状況フォロー(テーマの枠組設定、細部具体化等)
  …方針提示要求(今後の進め方を首長他に聞く)
 (2) 中心課題提起―具体的掘り下げ
  …具体的数値の意味は何か、市民の状況及び声、状況変化を含めて認識修正等
 (3)提案;方向性、具体性を議論の結果から導き出す
  …次のアクションについて具体的方策、対策内容(予算、制度改善)等
  (3)―1 調査実施
  (3)―2 具体的計画内での施策明確化スケジュール前倒し
  (3)―3 具体的計画への施策追加・変更
  (3)―4 計画全体の見直し
 

2.例題としての「保育待機児童」問題


 保育待機児童をここで取り上げる理由は、
1)第1に、先の市議会議員選挙でこの問題を掲げる候補者が多かったこと、当然、各会派が揃って関心を持っている政策と考えられること、である。
 しかし、ここで以下のことを考える必要がある。個別の政策を取り上げる場合、会派によって力の入れ方が異なることである。0―5歳児についての政策は幅広く、一つの個別政策を議論しているだけでは、会派の政策を論じたことにはならないからである。
 川崎市では新総合計画において政策が階層化されており、
 第1層で7個の基本政策が掲げられ、更にそれぞれ第2層「政策に基本方向」、続いて第3層「政策に基本施策」、第4層「施策課題」となっている。
「保育待機児童」問題については、
第1層「人を育て心を育てるまちづくり」、
第2層「子育てを地域社会全体で支える」、
第3層「安心して子育てできる環境つくり」となり、
第4層「多様な保育の充実」の中の具体的な事業は推進される。
 ここから判るように、会派の掲げる政策は相当、上位概念にあるから、それぞれの会派によって力点が違ってくるのは当然であろう。
2)しかし、上記の配慮をしたとしても、この問題は新総合計画(05-07年度)での市民への約束(07/3で待機児童ゼロ)を果たすことができず、この7月に「緊急5カ年計画」が行政から打ち出されたほどの問題であり、重要な課題であることは間違いない。それが第2の理由である。
3)緊急と共に、第3の理由として、この問題の根源には、
(1)地方自治体におけるくらしつくり「ライフサイクル」とまちつくり「地域デザイン」とが交錯している。
(2)また、最近の総務省調査の結果として「結婚と仕事についての若い層の意識の変化」が報道されているような「生活意識の変化」と近年の首都圏集中の現象として「巨大高層マンション・ベッドタウン人口増」が交錯する問題でもある。
(3)更に加えて、中央省庁の権限争い、保護する対象としての幼児は「厚生労働省」、教育の対象としての幼児は「文部科学省」が互いに、幼保一体化の掛け声の中で争いを仕事としている問題でもある。このように変動する社会を象徴する問題として自治体総体の“手腕”が問われる課題である。
 まとめると、以下の3点がここで「保育待機児童」問題を取り上げる理由である。
1)市議会議員選挙でこの問題が争点になっていること
2)行政側の約束が守れていない緊急の課題であること
3)自治体総体の“手腕”が問われる課題であること

3.「保育待機児童」問題の経緯 〜行政側の計画〜


 1)H17/3 保育基本計画(H17-19)
  ・H19/3までに「待機児童ゼロ」実現、予測に基づき「所要計画」策定
http://www.city.kawasaki.jp/35/35syosi/home/kihonkeikaku/plan.pdf

 2)H19/3 保育基本計画改訂版(H19-23)…次期計画立案
・上記「所要計画」クリアを前提、しかし、実際の申請者は「所要計画」を越える
  ・従って、上記「待機児童ゼロ」は未達を予測(P5 最終行参照)
  ・増加を見込んだ計画を更に策定、例.認可保育所定員 +850名(H23)
http://www.city.kawasaki.jp/pubcomment/info31/file102.pdf


19/3議会におけるこの問題の主要テーマは、
(1)「待機児童ゼロ」が出来ないことを確認のうえ、
(2)「保育基本計画改訂版素案」内容をどこまで追及できるのか、
 そこにしかない。
 それを深く掘り下げることができたのは後で示すように、石田和子議員(共産党・高津区選出)である。
川崎市議会で各会派がそれぞれ質疑を展開したことが先ず大きい。次にそれらの議論をバックグラウンドにして共産党の石田和子議員が鋭い質問 をこなった。これにより、次に示す行政側の「緊急5カ年計画」を導き出すことに成功したと言って良い。ここで改めて、各会派全体のプレッシャとそれを背景にした優れた質問が行政の実行計画を導き出せることを市民として確認し ておきたい。

 では、どのような計画が次の段階として行政から提案されたのであろうか。

 3)H19/7 緊急5カ年計画(H19-23)…上記「改訂版」を更新
  ・上記「待機児童ゼロ」は大幅に未達を確認、「改訂版」の予測の甘さを認識
  ・H23/3に「待機児童ゼロ」を設定 全体16,400名(+2,600名)
  ・例.認可保育所定員 +1,915名(H23)
http://www.city.kawasaki.jp/35/35kikaku/home/fukushi/download/1155adbe58a/kinkyu5nenkeikaku.pdf


 これまでの計画を一言で表せば、計画未達、計画改定である。
 それに対して「予測よりも人口が増加し、申請者も増加」という行政側の説明になる。しかし、如何に予測し、それが何故間違えたのか明確になっていない。当然、「待機児童ゼロ」に合わせて、逆算した予測、計画見直しの形跡も明らかになっていない。況や責任の所在もうやむやになっている。進め方に問題があるであろうことは、少しでもビジネスに携わった人間であれば肌で感じられる処である。
特にH19/3「保育基本計画改訂版」では、未達が予測できるにもかかわらず、同じ姿勢で次期計画を立案している。直後の19/3議会において予測の甘さを指摘され、H19/7「緊急5カ年計画」に追い込まれた。
 しかし、考えてみれば、議会の追及がなければ「保育基本計画改訂版」がそのまま通っていたことは確かで、議会が監察機能を働かせることの意義が大きいことを改めて示したものである。市民生活はこのようにして議会によって守られていることの一例である。
 更に、「緊急5カ年計画」がH19/7に発表されたが、緊急“5ヶ月”計画ならば緊急の名前にあたるであろうが、5カ年では緊急でも何でもない。役所が急いで作ったという意味で緊急と命名したのであれば、その時間感覚に戸惑いを覚える人も多いであろう。

4.議会各会派の認識 〜H17/3市議会会議録から〜

 

 先ず、議会での質問について統計を示そう。

 平成17,18年は代表質問及び一般質問を合わせてこの問題に触れている質問数。

 平成19年度は各回(第2回は実質討議無し)個別に代表質問での有無、一般質問での質問数。

議 会

質問

自民

民主

公明

共産

ネット

猪股

H17 全体

総計

 2

 5 

 5

 6

 3

 0

H18 全体

総計

 1

 7

 3

 6

 2

 3

H19第1回

代表

 有

 有

 有

 有

 有

  ー

 

一般

 1

 4

 0

 1

 0

 1

H19第3回

代表

 無

 有

 有

 有

 ー

 ー

 

一般

 1

 2

 1

 1

 0

 1

H19第4回

代表

 有

 有

 有

 有

 ー

 ー

 

一般

 O

 O

 O

 O

 1

 1

H19第5回

代表

 

 

 

 

 ー

 ー

 

一般

 

 

 

 

 

 

 実はいつ頃からこの問題が議会で取り上げられたのかチェックしてみると、議会ホームページの会議録検索で当たれる平成7年に取り上げられており、要は同じことが同じように質問されている。従って、一つの区切りとして「H17/3 保育基本計画」の処から追跡を試みることで各会派がどの程度この問題について力を入れてきたのか、判るはずである。

 先ず、量的な傾向評価がこれでできる。一貫して民主、共産が取り上げていることが判る。民主党は一般質問の回数が多いが、保育待機児童ゼロそのものを取り上げているのは各回1つずつ程度であり、共産党と比較して多いわけではない。ネットは議員数として3名或いは2名であり4会派と同党に論じられない。一方、猪股議員は平成18年以降集中してこの問題を取り上げており、特筆できる。

 従って、量的な取り上げ方としては 民主=共産=猪股>公明>自民=ネット という感じであろう。

 この表からH19年第1回(3月)が質問数11で最高であり、ここが山場であること示す証拠でもある。

 

 ここで少し戻って更に以前に議会会派がどのような質問をしていたのか一瞥しておこう。認識の歴史こそ、前進への方向づけにできるからである。以下に述べるように共産党の質問が鋭い。結局これがH19/3市議会定例会の石田質問に繋がることになると考える。その意味で共産党の課題意識は高いものを示していたと言えよう。
  待機児童問題について、以下の質問がH17/3市議会定例会及び予算審査特別委員会で行われている。H17/3の保育基本計画(H17-19)の内容が明らかになった段階である。従って、ここでも今回H19/3議会と同じような状況が顕在化ではないが、懸念があったはずである。問題はそこを認識できていたのか、である。主題がH19/3議会なので、ここは簡単に触れる。以下、質問者と目立った内容である。
 雨笠裕治・民主党・代表
 平子瀧夫・公明党・代表
 竹間幸一・共産党・代表
 ・目立った質問…直近の人口動態と今後の人口予測
        →H19/4に「待機児童ゼロ」は解消できないのではないか
 立野千秋・民主党・一般
 岡村テル子・公明党・一般
 佐野仁昭・共産党・一般
 ・目立った質問…川崎区マンション開発直近の事前申請数調査
       「計画戸数及び人口4,000戸、1万人の増加を指摘」
        →既存計画では対応できないのではないか
 共産党以外の方の質問は基本的に「どうですか」と状況及び枠組設定を聞いているだけである。討論には至っていない。
 これに対して共産党の竹間幸一議員と佐野仁昭議員はデータを把握して課題の深さを浮き彫りにしている。即ち、既に今年の4月の実態である“大幅未達”を予測し、対応を迫っている。既に内容が明らかになった「H17/4 保育基本計画(H17-19)」について、その時点から鋭く課題を指摘している点、共産党の質問は行政を監察する立場として質的に高く評価して良いと考える。

5.H19年3月市議会 質疑応答の分析
  川崎市議会は3月、6月、9月、12月を中心に3ヶ月に1回の割合で定例会を開催するのが通常である。加えて、予算審査委員会が及び決算審査委員会がそれぞれ3月及び9月の定例議会に合わせて開催される。 ここで取り上げる3月市議会は、年度終わりにして年の最初の会議として位置づけられる。即ち、境目が明確な季節であり、結果と方向付けが問われやすいのである。
 そこで先ず、市長の「冒頭の挨拶」がある。ここでは、市長が課題をどのように認識しているか表明される。 「保育待機児童」について市長が言及した部分は以下である。

  『これまでの保育環境の整備により、平成19年度において全市的に待機児童が解消される予定でありますが、人口急増地域においては新たな保育需要が見込まれることから、これに迅速に対応し、川崎区、高津区、麻生区において民営の保育所を整備してまいります。』である。

  人口急増との認識は当然であるが、『待機児童が解消される予定』との認識であり、事務局の作文を読み上げているだけで、危機感が何も表現されていない。
  上記の内容は、3−1で述べたように、2月に素案が提案され、このときまでに案として開示された「H19/3 保育基本計画改訂版(H19-23)」の内容を反映している。従って、その改訂版を読み、どのように評価したのか、ここが質疑での最大の問題となる。
  代表質問では会派のスタンスが表現される。代表質問ではできるだけ万遍なく質問項目を整えるため、市政全般にわたるその会派の問題意識と共に、各政策においては会派が考える重要度によって追及の姿勢が示される。これに対して概括的な部分については市長が答弁し、個別的な問題については各担当局長が答弁に立つ。後で述べるように、この「保育待機児童」では、民主党と共産党が熱心に追及している。
  処で、代表質問の後に一般質問が行われる。各議員がそれぞれ数点の項目について代表質問よりも具体的に質問し、主として各担当局長が答弁に立つ。ここでは項目についてそれぞれ独立した質問になる。しかし、代表質問でも触れた問題については、その細目のテーマについて具体的に課題を聞くこと、或いは代表質問に連携させ、より具体的な追及を行い、質的に代表質問を超える内容を含むこと、そのどちらかが考えられる。今回のように緊急な場合、質的に代表質問を超える内容を含むことが成果を引き出し、政策を進展させる道であるだろう。 
 これも先に述べたが、「保育待機児童」で代表質問を超えた一般質問は、共産党・石田和子議員の質問だけである。その意味で、7月の「緊急5カ年計画(H19-23)」を引き出す最大のポイントとして、議会会派全体が代表質問して圧力をかけたことに加えて、「石田質問」の本質的でかつ具体的な質問が功を奏したのであろう。
 なお、以下の「石田質問」以外は参考として簡単に示す。
代表質問:鏑木茂哉(自民党)・玉井信重(民主党)・本間悦雄 (公明党) ・竹間幸一(共産党)・前田絹子(ネット)、
最終討論:井口真美(共産党)
一般質問:粕谷葉子(民主党・猪股美恵(無所属)・吉沢章子(自民党)・石田和子(共産党)・青山圭一(民主党)・東正則(民主党)・織田勝久(民主党)

5−1「石田和子・共産党 高津区」の質問分析


 代表質問の内容と連動し、かつ、唯一その内容を超える質疑を行った。先にも述べたように共産党の代表質問そのものも“優れた質問”であるため、それをベースにして本質的な課題を、具体例を出して質問できたことは非常に大きく、3月議会の一般質問の中では、7月の「緊急5カ年計画(H19-23)」を引き出すうえで大きく貢献したと考えられる。その意味で“優れた質問”を超えて“際立った質問”になっている。
 再度、「“優れた質問”を捉える枠組」を示し、これとの対比で質問を捉えてみる。
「質問の順序」
 (1)共通認識形成;川崎市全体の政策の中での位置づけ
  …テーマの進捗・施策状況フォロー(テーマの枠組設定、細部具体化等)
  …方針提示要求(今後の進め方を首長他に聞く)
 (2) 中心課題提起―具体的掘り下げ
  …具体的数値の意味は何か、市民の状況及び声、状況変化を含めて認識修正等
 (3)提案;方向性、具体性を議論の結果から導き出す
  …次のアクションについて具体的方策、対策内容(予算、制度改善)等
  (3)―1 調査実施
  (3)―2 具体的計画内での施策明確化スケジュール前倒し
  (3)―3 具体的計画への施策追加・変更
  (3)―4 計画全体の見直し

  (1)共通認識形成として高津区の問題を取り上げているが、川崎市全体が係わる問題としての質問である。(2)課題提起による認識修正―具体的掘り下げ、(3)―4 計画全体の見直しまで、質問そのものの組立は要約するよりも本文を読む方が面白く、参考にもなる。『 』が会議録に記された発言内容である。

 『高津区内の保育園待機児解消について、健康福祉局長に伺います。先日の代表質問でも2007年4月の待機児童がゼロになるのは大変困難だということを局長は言われました。新規の入所申請数は高津区は1,134人で、そのうち入所不承諾は453人、申請者の約4割が第3希望まで出しても入所できなかったわけです。ことし4月開所の保育園が2カ所、150人の定員増があったのにもかかわらず、7行政区の中でも一番不承諾が多く出ました。統計情報で見ると、2000年から2004年までの5年間、連続して高津区の人口増加が一番多く、2005年は中原区でしたが、また2006年は高津区が1位でした。そのような中で数人の入所枠に入所要件が最も高いAランク6以上が何人もいて、その中で入所できない人が出ているとのことです。こうした実態について見解を伺います。代表質問では4月時点で待機児童が出る場合は関係局と協議して対応を図るとのことでしたが、どのような対応を図るのか伺います。』
 先ず、代表質問答弁、新規入所申請数1,134人、入所不承諾453人を引用して、高津区の保育待機児童解消が困難であり、かつ、入所要件が最も高いAランク6以上で入所できない人が存在することを指摘している。これは共産党代表質問でも触れられているが、改めて質的な実態の(1)共通認識形成をする質問であり、他の議員の質問に含まれていないものである。
 『そのような中で数人の入所枠に入所要件が最も高いAランク6以上が何人もいて、その中で入所できない人が出ているとのことです。こうした実態について見解を伺います。』
 早くも「(2)中心課題提起」として“具体的数値の意味”する処を明らかにして、基本的な見解を質している。答弁もまた、基本に戻らざるを得ない。そこで以下が示される。
 *昨年8月から保育所の入所選考において指数制を導入
  ・同一ランク内で指数が高い世帯を優先的に選考
  ・入所順位が一番高いAランク
  ・Aランクの6点である世帯の申請が多い
   両親2人とも就労実績が1年以上ある場合 4点
   申請時において認可外保育施設等を利用している場合 2点
 *認可保育所不承諾者のAランク人数は253人、大変厳しい状況。
 そんなに厳しい状況であったのか、と聞く方も緊張する場面である。続いて更に追及は続く。
  『再質問いたします。入所不承諾453人中、入所順位が一番高いAランクであっても、253人が入所不承諾とのことです。実に半数以上を占めています。Aランクの中でも就労実績が1年以上が2点で、1年未満が1点で振り分けられるなど、本来、すべて入所対象になるべきなのに、さらに振り分けられるというわけです。非常に要件が高くても認可保育園に入れないこの状況は、異常と言わざるを得ません。これでは、経済的理由で一刻も早く働かざるを得ない人は到底入所不可能です。一刻も早くこのような状況は解消するべきですが、こうした実態への取り組みをどうするのか伺います。』
Aランクが更に振り分けられているという状況を、『非常に要件が高くても認可保育園に入れない』と明確に指摘し、『この状況は、異常』であると言い切る。自らに課した立場がなければ言うことの出来ない強い科白である。そしてまた、この立場は『経済的理由で一刻も早く働かざるを得ない人』も含めた市民の立場になっている。
  続いて、『保育基本計画の改訂版素案が示されています。このような状況からも、さらなる増設計画が必要になると考えますが、伺います。いただいた資料では、入所申請が一番多かった年齢は1歳児が313人、2歳児が241人、ゼロ歳児は230人と低年齢が多くなっています。緊急対応として、おなかま保育室も定員超えを可能な限り行うとのことですが、おなかま保育室を卒室するときは、また初めから厳しい入所選考のスタートに立たざるを得ないわけです。』と本題である「保育基本計画改訂版」に入る。『異常な状況』との認識が薄い以上、それを『一刻も早く解消する』案にはなっていないとの議論は論理が通っている。
 更に、『ことし4月の入所申請でも3年連続で不承諾通知が届いたあるAランク6の方は、「おなかま保育室を卒室する来年に、認可に入れる保証は全くなく、とても不安」と語っていました。その方は、「我が家では2人目を望んでいますが、産休、育児休業中は認可への申請資格すらなくなってしまうので、産みたくてもチャレンジもできない状況です。毎年毎年認可保育園に入れたら、2人目にチャレンジしようと思っているが、それがかなわず、もう3年目になる」とのことでした。ことしのおなかま保育室からの入所申請者に対して、不承諾者が出たとしたら何人なのか伺います。答弁では、4月時点の対応について、年度途中のさらなる受け入れなどで対応するとのことですが、その場合の人的保障はきちんとすべきですが、伺います。』、と“市民の状況及び声”を象徴する具体例を示し、聞くものに対し、自らの生活実感に照らし合わせ気持のうえで理解を求めている。それと共に低年齢児受入のおなかま保育室を卒室する場合について、不承諾者の実態の(1)共通認識形成を行う。これもまた、他の議員の質問に含まれていないものである。実態を“市民の状況及び声”として明らかにすることによって、状況に対する認識修正を迫っている。
 答弁は、以下である。
 *人口急増地域 認可保育所整備計画
  ・高津区 武蔵溝ノ口駅周辺地域も対象
  ・平成20―平成21年度開設民設民営保育所 155人定員増
 *卒室児童の認可保育所での選考結果
  ・高津区 卒室児童43人 入所申請39人 不承諾5人
  ・ランク内訳 Bランク3名、Cランク1名、Dランク1名
 しかし、この答弁に対しても厳しい反論と意見が述べられる。
  『入所不承諾となった入所要件の高い児童に対する対応について、民間保育所を中心とした年度途中でのさらなる定員増による受け入れ、新たな認定保育園の認定やおなかま保育室の定員増により対応していきたいとのことです。しかし、いずれも年度途中の対応ですから、4月には間に合いません。それでも、そうした緊急対応を早急にしていただかなければ困る方が出てしまうわけです。一方で、民間保育所やおなかま保育室の定員増について、面積基準は遵守されなければなりません。
ことしはAランクであっても不承諾は253人にも上りました。保育基本計画改訂版の素案では、2008年4月の溝口周辺への120名の新設園に高津保育園の園児85人が移行するのが前提ですので、高津区内の認可保育園の定員増は35人ということになります。来年のこの時期に再びことしのようにAランクであっても不承諾者がこんなに大勢出るようなことがないように、対応策を2007年度中にしっかり講じていただきたいと思います。
  改訂版素案の段階で推計の甘さがあったのも明らかです。推計を的確に行い、改訂版の事業推進計画に認可保育園の増設をさらに盛り込むべきことを強く要望しておきます。
 おなかま保育室を卒室する児童の不承諾通知は、昨年よりは少なかったものの、5人あったとのことです。ちなみにBランクは、居宅外労働ですと、月20日以上、1日実働5時間以上7時間未満、あるいは月16日以上20日未満、1日実働7時間以上です。Dランクは就労先確定です。やはり本来、保育に欠けるという入所要件は満たしているのです。
 かつてはこうした方でも入園できておりました。ぜひこうした実態からも緊急増設をお願いしたいと思います。』
 行政側の苦し紛れの答弁にも惑わされず、『2008年4月の溝口周辺への120名の新設園に高津保育園の園児85人が移行するのが前提ですので、高津区内の認可保育園の定員増は35人』と指摘し初歩的な数字のマジックを打ち砕き、改訂版素案の推計の甘さを完膚なきまでに明らかにしている。例をあげて明確に厳しく改訂版素案を批判した議員は他にいない。
  最後に、『Bランク、居宅外労働で月20日以上、1日実働5時間以上7時間未満、あるいは月16日以上20日未満、1日実働7時間以上。Dランクは就労先確定。』として『保育に欠けるという入所要件は満たしている』と述べ、これまでのAランクへの視野集中から保育待機児童問題の全体像に戻り、『緊急増設』を提案している。
  これは利用する市民の立場からの指摘になっており、見事と言う他はない。 

5−2 代表質問


 これは慣例なのだろうが、代表質問は議員数の順に行われるようである。冒頭の「“優れた質問”を捉える枠組」を認識の基準にとして考え、質問の主旨と内容について筆者のコメントを含めて以下に簡単に記す。やや詳しい内容を展開する必要がある場合だけ、個別に書くことにする。なお、更に詳細に質問自体を知りたい場合は、会議録を参照して頂きたい。

鏑木茂哉・自民党
  質問は保育基本計画改訂版素案における「中長期プランとの数値目標の整合性」及び「見直しの基本的視点」である。典型的な(1)共通認識形成、方針提示要求の質問 、即ち代表質問である。従って、実質的な政策の進展を促すことに対しては力強さが欠ける。データは共通資料化をすれば見やすくなるように思われる。

玉井信重・民主党
 基本的なデータを提示させ、(1)共通認識形成を形成後、数値を議論して計画達成が無理なことを(2)課題提起、認識修正を求める。何度も再質問をしており、そのしつこさは 高く評価できる。

 また(3)―4 計画全体の見直しを要求している。但し、答弁側の問題が大きいのであるが、数の押し問答になっている点は否めない。
 更に、本質問について、(1)から(3)―4へ向けて、やや詳しく展開する。
  質問は先ず、保育基本計画、既集計申請者数と4月1日現在の受入枠を質す、(1)共通認識形成である。 
答弁として以下のデータが開示される(これも一覧表を資料集へ、の類である)。
 *平成19年4月1日 認可保育所
 ・入所申請数    入所受入枠
 全 市 5,340人  3,430人
 川崎区  788人   486人
 幸 区  567人   428人
 中原区  926人   530人
 高津区 1,134人   633人
 宮前区  599人   386人
 多摩区  915人   731人
 麻生区  411人   236人
 続いて、質問は保育基本計画に入り、保育待機児童解消は困難であり、保育基本計画を見直した方が良いとする。(2)課題提起であり、状況変化を含めて認識の修正を迫り、(3)―4 計画全体の見直しを求める質問である。
 *平成19年4月1日 状況
 ・入所希望新規申請者数 5,340人 在籍希望在籍者数 9,497人
 ・申請者数総数  1万4,837人 申請予測数  1万3,874人
・予測数と申請者数の差 900以上 待機児童解消できるか?
 答弁として、
 保育基本計画の想定をはるかに上回った保育所入所申請があり、厳しい状況である、とここで始めて認めている。先にのべたように、市長の挨拶では全くこのような認識が示されていなかった。その理由は、人口急増地域において予想を上回った申請があったこと、新たに保育所を整備することによって、新たに就労を前提とした申請があったことを挙げている。
  そして、平成19年4月に向け、可能な限り対応をし、保育基本計画改訂版素案はそのままで、4月時点で待機児童が出たときに新たな対応を考える、と答弁し、更に質問に対し、予定をオーバーした対応で一定に解消が図れるとして、例えば、認定保育園で500人との数字を提示した。
  これに対して玉井議員は認定保育園既存計画187人と上記数値500人とを対比、これは無理と一蹴、これでは基本計画にならないと断言した。しかし、局長、市長共に実質無の回答であり、無意味な答弁を続けるだけであった。
  それにしても局長、市長共、余りに官僚的な答弁である。この答弁を読んで、この3月時点で必死になって預け先を探している父母たちは怒り心頭に発するのではないかと想像せざるを得ない。

本間悦雄・公明党
  保育基本計画と保育需要の算出根拠を質している。これも(1)共通認識形成の質問である。従って、答弁も通り一遍のものとなっている。ここでも共通データの資料化が必要なことが良く判る。

竹間幸一・共産党
 基本的に玉井議員と同じ立脚点である。しかし、玉井議員と比較すると、質問は序論で(1)共通認識形成をするが、直ちに、ゼロ歳―2歳の数、父母の実態、横浜市との比較を示し、待機児解消に届かずと(2)課題提起し、認識修正を迫る。その後、思い切った緊急増設が必要であると、(3)―4 計画全体の見直しを提案する。その議論の内容は鋭く、単に数値追求だけではない説得力を持つ。
 更に、本質問について、(1)から(3)―4へ向けて、やや詳しく展開する。
先ず、玉井議員と同じデータ(平成19年4月1日 認可保育所・入所申請数5,340人と入所受入枠3,430人)を比較し、かつ、入所申請者のうちゼロ歳から2歳児までの低年齢が72%から、4月の待機児童ゼロは無理であると一気に、(2)状況変化を含めて認識の修正、(3)―4計画全体の見直しへと進める。
 答弁は以下のように、「対応は可能である」としている。
*平成18年4月 認可保育所定員1万1,590人を1万2,950人にする
 (保育所整備420人増 保育施設認可化240人増 弾力的受入700人)
 *在園児進級 約9,500人 新受入枠 3,450人増
 これに対して竹間議員は以下の議論を展開、弾力的受入は困難であるとする。
 即ち、新規申請数5,340人の中でゼロ歳―2歳は3,819人(72%)。昨年10月の弾力的受け入れ実績は466人、との議論である。
 更に申請者5,340人のうち、入所不承諾通知は何人かと迫りつつ(答弁入所不承諾決定件数 全市1,893件)、待機児童の父母の実態を次のように明らかにする。
  入所要件が高いAランク(1年以上の就労実績)の中でもさらに得点化し、Aランクの中で入所できない方が多数生じており、仕事と子育て両立応援ができていない。保育基本計画改訂版(認可保育所定員 平成20年度―23年度 850人拡大)の計画では待機児解消に届かず、思い切った緊急増設が必要であると、(3)―4計画全体の見直しを提案している。
 例えば、横浜市は2003―2005年で認可保育園定員増加、新設保育園83カ所、増設を含め8,011人、5年間で2,000人定員増とする計画である。
 ここでは、保育基本計画改訂版の問題点を明確にし、横浜市をベンチマークにしてその修正を提案している。実質無答弁であることは玉井議員質問と同じである。しかし、玉井質問とは異なり、数の押し問答には陥らず、その主張が明確な根拠を持つことを示している点において更に“優れた質問”となっている。

前田絹子・ネット
 保育基本計画素案について、総合的な子育て支援体制を確立する視点からの質問で、地域で子育てを支えるための計画についても早急に検討するべきとしている。これも(1)共通認識形成、方針提示要求の質問である。答弁として、地域子育てネットワークの構築等があった。

5−3 一般質問


 一般質問は予算審査委員会の質疑応答も含めている。内容は特に変わるところはない。ここでのリストアップは会議録からワード検索(保育待機児童)によって該当したものである。従って、「保育待機児童」という文言が入っている質問をすべて取り上げた。しかし、内容によっては、「保育待機児童」問題そのものではないこともありこれについては割愛したことをお断りしておく。
 代表質問と同様に、質問の主旨と内容について筆者のコメントを含めて以下に簡単に記す。更に詳細な質問を知りたい場合は、会議録を参照して頂きたい。

粕谷葉子・民主党 高津区 保育待機児童
 代表質問で開示されたデータ(総申請者数1,189人 不承諾者636人…資料集にして欲しい)に基づき、高津区の保育園の受入と待機児童について、(1)共通認識形成である。
 答弁は以下で一般質問の答弁と変わらない。即ち、申請予想数を大きく上回り、大変厳しい状況、高津区においては390人程度の受入枠を確保、一定の待機児解消が図れる。
 更に、高津区の問題として、1)認定保育園の認可化、2)新城・千年地域の保育受入枠の充足状況、3)保護者の方への対応、4)認定保育園の選定基準と細部にわたって質問が続く。答弁は状況説明と考え方を示すことで終わっている。「本当に待機児解消されるのか」という言葉 があり、追及の気構えは十分で更に細かい点を質問していることは評価できるが、やはり代表質問の内容を超えるものはない。

猪股美恵・無所属 高津区 保育待機児童
 猪俣議員は無所属であるため、会派のように質問の分担などはできない。従って、出来るだけスピーディに具体的答弁を引き出す必要があり、これに沿った質問である。
 高津区の4月待機児童解消困難状況(不承諾者453人)を指摘、ここでは、12月議会での自らの質問を引用している。
 『昨年は人口急増地域である高津区の保育待機児童解消に向けた質問を3回行いました。12月議会では年齢別受け入れ体制を熟考するということの質問に対して、高津地区では2歳児が30人、3歳児が30人、橘地区でも2歳児が30人あふれる予測があるので、しっかり対応していくとの答弁でした。』として、(1)共通認識形成を図り、その認識のもとで、前回の議会で答弁した数には今回未達の状況との答弁に対し、
 『4月待機児童解消困難状況は、申請者が予測を超えたからだけではなくて、昨年から2歳児、3歳児において90人あふれることが予測されていたにもかかわらず、申請が締め切られるまでに24人分しか手当てされていなかったことにも原因があるのではありませんか』と言っている。
 不承諾者453人が不測の事態ではなく、手当不足によるものであることを明らかにしようとしている。良く考えた論理によって(2)課題提起による認識修正を求めている。
 答弁は数値として出されたが、それもまた、猪俣議員に詰めが甘いと指摘され、答えられない状況であることが行政側の混乱を象徴している。更に、産休、育休を取ったがために不利益になることを指摘し、誠心誠意の努力を要求している。
 具体的指摘と要求とがややマッチングに欠けている面があるが、おそらく、この差し迫った状況においては、何よりも(3)―3 具体的計画への施策追加が緊急必要との意識であろう。ともすれば責任追及になりがちな議論を施策督励の方向へ向け、これがベテランの味かもしれない。本質的な問題に対する具体的な掘り下げを行っている点において、共産党と並んで迫力がある“優れた質問”である。

吉沢章子・自民党 多摩区 保育待機児童
 多摩区の状況を質問しつつ、兄弟姉妹で同一施設に入れず、保育園入所基準の見直しを要望している。(1)共通認識形成と要望を合わせたものであるが、計画全体に係わることではなく、制度の内容を一部の手直しをするか否かの問題である。
  見直し項目の一つとするとの答弁を得ているが、入所できない児童が多い状況で、兄弟姉妹が同一施設に入所する措置を稀少資源の公平な配分の観点からどのように評価するのか、悩ましい処である。

青山圭一・民主党 多摩区 保育料未納
 詳細内容については割愛するが、収入未済額、不納欠損額、長期未納期間別の人数、金額未納者に対する措置について公平性の観点から(1)共通認識形成し、追及している。将に正論である。

東 正則・民主党 中原区 保育待機児童
 中原区内の待機児童解消策について@状況把握する、ための質問である。細かく調査できる調査方法を採用、推計と現実の誤差を最小限にすべき、との主張だが、具体性に乏しいためか、答弁をもらえず、再質問もしていない。全体として代表質問以上の答弁を得ていない。
 先ず、代表質問の内容から中原区内の待機児童解消策を(1)共通認識形成するための質問である。答弁として、申請予想数オーバーに対して新認定2園等300人程度の受入枠確保を得たが、これで納得したのか。
 また、保育基本計画改訂版において、マンション建設に対し、人口動態を細かく調査し、推計と現実の誤差を最小限にすべきであるといっているが、そこで躓いているのであるから、調査方法を提案するのであれば具体的にし ないと答弁は一般論になってしまう。結局、状況把握は出来たが、民主党代表質問を超えた内容になっていない。

織田勝久・民主党 宮前区 保育ママ
 待機児童問題の一環として保育ママの待遇改善に関する質疑である。以前の指摘点改善状況を質問しており、 (1)共通認識形成における進捗フォローである。これをベースに、(2)課題提起、(3)―3 提案として、具体的計画への施策追加・変更に進む手堅いアプローチを示している。保育ママさんにとっては差し迫った問題であり、矛盾を感じさせる制度を指摘して言質をとっており、“優れた質問”である。今後、更にフォローが必要であろう。質疑応答を以下に示す。
1)受託児童5人までの拡大平成 
  →19年度から5人まで受託できるように改正する予定
2)時間外保育、保護者負担額月額2万円の限度額の撤廃
  →時間外保育の制度化、早期の制度化に向け協議
3)保育ママさんのサポーター、支援体制の充実
  →家庭保育福祉員の保育を支援する連携保育所指定、休暇をとる場合は連携保育実施
4)次年度優先的に希望者は認可保育園に受け入れられるか
  →2歳児までを預かる制度、認可保育所を希望する他の世帯との兼ね合い
5)川崎市のロゴなどの入った表札、表示などの作成
  →市民周知に努めている

井口真美・共産党 多摩区 保育待機児童
  最終討論時での要望である。共産党としてここでも保育待機児童に触れていることは、その政策の重要性をアピールする意味でも有効であろう。

6.全体的考察


1)議会総体としての意思表示

 本3月議会終了後、4月になり目標未達が確認されようやく市役所の関係部門で検討が始まり、7月25日に「保育緊急5カ年計画(H19-23)」が発表された。その内容を一言で言えば、「改訂版」の予測の甘さを認めたことである。
 議会での継続的な追及と3月議会での会派全体での追及が行政側に認識を改めさせ、計画見直しに結びついたとして良い。即ち、阿部市長は3月議会の冒頭で4月の予測を、 『これまでの保育環境の整備により、平成19年度において全市的に待機児童が解消される予定であります』と宣言していたからである。その認識が途中の質疑応答において担当局長の「大変厳しい状況」に変わり、4月の目標未達を受けて、今後の施策そのものを大幅見直しすることになったのである。
  議会の活動がなければここまで到達出来なかった可能性が大きいのである。我々市民は改めて議会活動の重要性を認識させられた点、その意義は住民自治をどのように推進していくのか、と言う点まで含めて示唆するものである。
 但し、「保育待機児童ゼロ」の目標はこの計画で達成される保証はなく、今後も議会として厳しくフォローすべき問題である。その意味において次の提案をしたい。
★提案…議会によるチェック体制を構築★
 今回のように目標未達で、かつ、その課題の所在が人口移動、住民の意識の変化などに四つ物である場合、議会総体としてフォロー体制を敷く必要があるのではないかと考える。例えば、各会派1名の小委員会を設置し、そこが中心となって行政の状況をチェックしていき、議会及び市民へ内容を公開することが効果的と考える。

2)「課題を掘り下げること」〜本質的、かつ、具体的に〜
 今回は代表質問と一般質問との関連についても注目した。そこで、一般質問として民主党の「粕谷議員質問」と「東議員質問」について、民主党代表質問を超えた内容ではないとコメントした。簡単に言うと、代表質問は川崎市全体の問題を議論し、一般質問は各区の問題を議論している。その地区特有の個別問題を質疑することは必要だが、川崎市議会としては、それを具体例として全体に共通した問題として「課題を掘り下げる」議論をすることが肝要であろう。これが本質的で、かつ、具体的であれば、優れた提案に結びつくし、その政策を進展させることができる。即ち、地域のことを「細かく聞く」ことと「課題を掘り下げる」とは別であり、「細かく聞く」ことだけであるならば、区の中で議論して克服を図ることもできる。更にこれと関連して、一般質問は自身の選出区中心が不文律なのか?との疑問をもった。例示(具体例、市民の声)の意味はあるのだが、それは自らの選出区に限られることでもない。
 これに対して、共産党の「石田質問」は高津区の問題を議論しながらも、高津区に先鋭に表れている実態、Aランクでも入所できない、おなかま保育室を卒室すると振り出しに戻る、など父母の深刻な悩みを示している。また、質問のバックグラウンドとして人口増加の様子も2年前から捉えており、本質的、かつ、具体的に「課題を掘り下げること」に成功している。これが“優れた質問”を超えた“際立った質問”の例示である。
 以上に述べたことは、重要な問題について、今後も代表質問と一般質問とを連携させることが大切なことを示している。各会派の研究を期待したい。
 一方、無所属の猪俣議員は一般質問で同じようなアプローチを示し、かつ、これまで継続して質問することにより、“優れた質問”が可能なことを示している。更に民主党・織田議員はしっかりとした研究をベースに保育ママ問題を進展さす、“優れた質問”をしている。

3)共通基本データの必要性
 会議録を議論している際にも触れたが、共通基本データを抽出して常に最新データを行政側に資料集として用意させることはできないであろうか。確かにデータは問題意識がもたらすものであるから、会派或いは議員個人によって原則的に異なる。
しかし、大きな問題であって、今回の例えば、「申請者数と受入枠」などは基本的なデータとして会派共通に知っておくべきことである。これに若干のコメントを行政側が提出することによって、各議員はそれ以上の資料を準備し、質問を考えることになる。今回もそれで片づけられる質問も随所に見受けられた。
 議会としての事前請求資料集として開示され、HPに掲載されれば、市民にとっても非常に都合が良くなる。
 共通基本データが整備されれば、議員は更に「課題を掘り下げる」ための調査等に時間を使えるようになる。例えば、今回横浜市との比較が会ったが、虚心に他の都市とのベンチマーク等を行うことも考えられる。

4)行政側の形式的答弁、何故?
 今回特に目立ったことは行政側の形式的答弁である。先にも述べたように、市長の「冒頭の挨拶」における認識は『待機児童が解消される予定』であった。
 これに対し、質問が行われることによって、担当局長の答弁が、
『可能な限り対応してまいりたいと存じます。』
『一定の解消が図れるものと考えております。』
『大変厳しい状況であると認識しているところでございます。』
と変わっていく。
 市長の認識が崩されて行くわけだが、これでは、市長は“忠直卿”であると言わざるを得ない。「忠直卿行状記」において菊池寛は情報が閉ざされ、かつ、操作された中でのトップリーダーの姿を描いている。
 それにしても組織の惰性・官僚政治の一端を示しており、計画が変更されなければ、現実の変化は認識したものとされず、過去の計画での実態を現在とする形式的答弁が繰り返されている。民間企業では具体的計画は変更するのが常態であろう。何故なら、社会そのものが大きく揺れ動いているからである。この態度を改めない限り、実りある討論は行われない。これを直すためにも、「議会によるチェック体制」は不可欠のように考える。
 行政と議会とが政策の進捗について不断のコミュニケーションを行い、議論の「ピストン運動」を行うことが重要である。例えて言えば、「PDCAサイクル」の中で「D−C」を行政と議会とで不断に行い、基本計画を見直す必要があれば、「P―A」の過程に戻すことである。

 

5)予算に対する認識

 7月25日に発表された「保育緊急5カ年計画(H19-23)」は予算約100億円の計画である。逆に言えば約100億円の「他の施策」が出来なくなったことに相当する。今回の場合は『待機保育児童解消』が当初の予算では達成されないことから生じたことでおそらく市民の合意は得られることと推測する。しかし、要望すれば良い、というわけではないことは改めて認識する必要がある。優先順位として何を施策とするのか、全体像とそれに基づく議論が重要である。
 

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