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今思うこと

 

 高齢者離婚による、心を癒したい思いから、成田空港から東南アジアへ旅立つ初老の男性がいた。「なぜ離婚なのか」、機内でも、現地に着いても、そのことで心が詰まる。どうしても心の整理がつかない。
 現地二日目、どうしたことか、体から猛烈な寒気が襲い、冷や汗が出る。もしや、「現地の熱病では、いや、そのほうがいい」と路上に倒れた。幸か不幸か、通りかかりの医学生に助けられ、数日のうちに体は回復した。
 これを機に、医学生との交流が始まった。ある時、医学生は「映画に行こう」と誘ってきた。「今さら……」と思ったが、厚意でもあり、車で十分くらいのひなびた映画館に入った。オードリーヘップバーン・ケーリーグラントの「シャレード」がかかっていた。
 アメの降ったスクリーンに涙が流れ出した。日本でこの映画を見た学生時代に妻と会った。そのころの自分に戻っていた。その頃どれだけ将来の妻のことを考えていたか。それが、いつしか豊かさだけに変わっていた。
 ヘンリー・マンシーニの「シャレード」の音楽を聞きながら、再び妻のもとへ帰る決心をした。いつまで断られても……。
 現代人に必要なのは。過去に戻る時間をもつことか。


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